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忘れられた神様  作者: ニスコー
第二章
108/266

役立たずじゃないやい

 自分は間違っている。罪がある。だからこの存在に喰われる。


 チウネはそのことを本能的に理解して、身体が全く動かなかった。


 嘘だ、と思った。自分は何も間違ったところなどない。罪などない。なのになぜこんな……


 チウネは必死に自分の罪を探そうとした。

 心当たりは2つ。

 妹を生き返らせようとしていることと、プレセぺの変貌についてなんの罪も指摘しないこと。


 妹のことが罪に当たるわけはない。悪魔に奪われた魂を取り戻そうと考えていることがどうして罪なのか。

 だとしたら……


 自分はひよっていたのかもしれない。

 プレセぺと仲良くなったことで特別扱いした。それが自分の罪なのだ。だとしたら、自分はその罪を指摘しなくてはならない。

 正しくあるために。自分が自分であるために。


「お待ちください! そのものには、プレセぺには悪魔が取り付いております!」


 チウネが叫んだ。

 ヒラキンが殺気を含んだ視線をチウネに向ける。

 しかしチウネは止まらない。


「プレセぺには悪魔が憑りついている! 私がそれを証明して見せる! 」


 ……


 サトミはとぼとぼと一人、オアシスに帰っているところだった。

 なんつーかあれだね。結局俺は何もやってないね。

 戦ってたのはカルラ、ハチ、なんだかよくわからない存在もでてきて事態はうやむやになったみたいだ。


 ていうかさぁ、事態は何も進展してないんだよね。

 結局ジェイドは生き返らせてないじゃん?

 こんな騒動があったのにまたジェイドを生き返らせて同じ騒動を繰り返すの?

 さすがに面倒くさい。ジェイドの魂はロレンスの体で納得してるみたいだし。

 もういいんじゃないかな?

 でも盗賊たちに生き返らせるって言っちゃったっしなぁ……


 憂鬱だぜ。と思いつつみんなの元に戻ると何やらみんなが真剣な顔で話し込んでるところだった。


 ……


「私に悪魔が……」


 プレセぺがぎゅっと胸を締め付けられる


「そんなものはたわごとだ。耳を貸すな」


 すかさずヒラキンが言うが


「いや事実だ」


 すべての罪を喰らう者を警戒しつつ天使が言う。


「安心するがいい。その存在が罪がないと言うのなら私はそれ以上追及することはすまい。だが、その娘の中に悪魔がいるのは紛れもない事実。取り除いたほうがいいのは本当だろう」


 ヒラキンは焦る。

 プレセぺに取り付いている悪魔というのはもちろんエキドナのことだ。取り除けるものなら取り除きたいが、エキドナが憑りついているという事実自体プレセぺに気付かせるわけにはいかない。

 それが原因で記憶を取り戻すかもしれない。

 記憶を封じる条件がエキドナの存在なら、そもそも取り除いてはいけないということにもなる。

 なんとか誤魔化さなくてはならない。

 しかし


「聞かせてください」


 プレセぺははっきりと主張した。

 チウネは自分が彼女に怪我をさせたと言っていた。リューネも何者かに乗っ取られた自分がアミュレットを砕いたと言っていた。

 ヒラキンは何か知っているようだが教えてはくれない。

 いや、本当は薄々感づいている。

 ヒラキンが自分に隠したがるような存在はあの人しかいない。


「……」


 ヒラキンは悔しそうにうつむく。


「その娘に取り付いているのは堕天使だ。たぶん蛇も憑りついている」


 代わりに天使が告げた。


「やっぱり……お姉様が」


 でも、なぜお姉様が? そんなことをせずに一緒についてくればよかったのに。

 いいえ、それはできないこと。

 だってお姉様はあの嵐の日に……私はなんで? 私が帰ったらお姉様は首をつって死んでいて、そして私は……

 プレセぺの思考が混濁していく。


「プレセぺ! 」


 ヒラキンがプレセぺの肩を揺らして我に返らせる。


「私……私が、お姉様を殺して……」


「違う! プレセぺはあいつを殺してなんかいない! あいつは最初からプレセぺに憑りつくつもりで! そのつもりで自殺したんだ! 」


 言ってからヒラキンはしまったと思った。


「やっぱり、お姉様はなくなっているんですね? 」


 プレセぺの望みはヒラキンとエキドナと夫が仲睦ましく生きることだ。

 最初からそんなことは不可能だった。でも生きていれば可能性はあると錯覚することはできた。

 死んでしまったらもうそれは叶わない。絶対に叶わない。


 プレセぺは泣いた。


 ……


 はぁ、なるほどね。


「じゃあ俺がそのお姉さんを生き返らせればいいのか? 」


 俺が軽い気持ちで提案した。

 途中からしか話聞いてなかったからよくわかんないけど。プレセぺの姉っていうからきっと心優しい娘なんだろうなぁ。生き返らせて損がない娘に違いない。


「!? 」


 ヒラキンがものすごい勢いでこっちを振り返った。


「生き返らせるだと? 」


 天使まで詰め寄ってくる。

 ていうか天使? なんでこいつみんなの中に交じってなじんでんだ? 

 空に帰ったんじゃなかったのか?


 まずった。龍の娘のほうにばかり気が向いていて、天使がまだこの場にいることに気が付かなかった。

 生き返らせる力があると知って天界に狙われたりしないよな?

 俺はどぎまぎして思った。

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