冬前期〜クリスマスマーケット〜
街は木枯らしが吹き付け、人々は寒さに自然と身を寄せ合う。どこかもの寂しいこの季節の中でも、誰もが期待に身を膨らませるイベントが訪れる。そう、クリスマスである。
数日前に迫ったある日、苧環邸の使用人たちは主人の興味に付き合う形で、クリスマスマーケットに訪れていた。
さんご「寒い ねー…」
蛍「そうだな、今日は初雪の予報もあるしな。本格的に冬って感じだな!」
さんご「そっか。寒いのやだなー…。ねえ、しかく眼鏡の人、あっためて〜…?」
蛍「えー?そうだな…。おしくらまんじゅうでもしてみるか?」
さんご「おしくらまんじゅう?」
蛍「歌いながらくっついて暖まるんだよ、おしくらまんじゅう押されて泣くな〜ってな!」
さんご「……なるほど。やってみる?」
エマ「ここは屋敷の中じゃねェんだぞ」
蛍「はは、やっぱりダメか〜」
姫「そんなに寒いなら、手袋でも使う?貸してあげてもいいけど…」
さんご「んー…」
穹斗「確かに暖かい飲み物とか飲みたいですね。色々あるみたいですし…。日南さんも一緒に行きませんか?」
姫「うん、いいと思う。行こ。使塚も一緒に行くでしょ?」
エマ「あンまハメ外すンじゃねーぞ、この人ゴミだしはぐれないようにな」
穹斗「もちろん分かってますよ〜」
慈「それにしても、私服で皆と集まる機会はそこまでなかったから、少し新鮮だね」
鈴莉「そうですね……。メイド服ももちろんですけど、その……ギャップ萌えというか…皆さんとってもお綺麗ですし……見ているだけで楽しいです……!」
穹斗「えー…そういうものなんすか?」
慈「そうそう。マフラーでもこっとしてる穹斗さんも、俺は見れて嬉しいかな」
穹斗「そう、ですかね…?ただ寒いからってだけなんですけど」
慈「ふふ、似合ってると思うよ」
穹斗「ありがとうございます」
珠紀「あはは、そうだね。今日は僕に付き合ってもらっているわけだけど、せっかくのクリスマスマーケットだ、自由に羽を伸ばして遊んでおいで」
玲央「私は屋敷のお掃除をさせて頂きたかったのですが…ここにはお仕事がなくて…」
丹恋「それはだめだよ〜!今日はみんなであそぶ日なんだもん!れおくんもいっしょに遊ぼ!」
珠紀「そうそう、玲央は今日はこれが仕事だと思って十分に励むといいよ。例えばそうだな…。僕の身辺警護という名目なら問題ないだろ?」
玲央「身辺警護…!それなら確かにお仕事でございますね!是非、目一杯励ませていただきます!」
丹恋「よかったね〜!」
マハロ「にしても、色々出店があるんだなァ…。食べ物や雑貨に体験ブースなんてのもあるんだな」
蛍「ああ、これは色々思い出が作れそうだな!なあマハロ、律、せっかくだから体験ブースで何か作ってこないか?」
マハロ「ああ、勿論だ!」
律「私もですか?是非、ご一緒させてください…!」
慈「体験ブースか。新しい趣味とか見つかるといいね、律さん」
律「ふふ、そうですね…」
丹恋「いいないいな!にこもはろちゃん達といっしょにいきたーい!」
珠紀「はは、早速話がまとまりそうだね。確かにこれだけの人数だとはぐれてしまいそうだし…。二手に分かれて楽しもうか」
楽しい出店の数々に期待に胸を踊らせる使用人たちは、二手に分かれてクリスマスマーケットを散策することになったのであった。
*****
玲央「屋台からいい香りがいたしますね…」
鈴莉「可愛いスイーツもいっぱいあって思わず目移りしちゃいそう……」
エマ「………」
穹斗「エマーソンさん、こういうの好きなんすか?」
エマ「あー、まァな。食べたことねェから興味はあンだよな」
珠紀「そっかぁ。それならひとまず、ここからあそこまで、全部買ってみる?」
鈴莉「ひぇ、全部ですか…!?あの、その……カロリーが……」
姫「食べた分動けば大丈夫じゃない?そもそも食べ切れるか怪しいけど」
エマ「オイ珠紀、食いモンを無駄にすンな」
珠紀「ダメ?残念」
穹斗「相変わらず豪快ですねー…。まあ、欲しいの買っていきましょ」
玲央「そうでございますね。煉城さまはどちらになさいますか?」
穹斗「そうですねー…このホットココアとか美味しそうですけど…結構並んでますね」
玲央「それであれば私が買ってまいりますよ、お任せ下さい!」
穹斗「え、それは流石に悪いですよー…」
玲央「気になさらないでください、煉城さまのお役に立てるだけで光栄ですから!」
姫「じゃあ全員で並ぶ?あたしも食べたいのあるし…」
穹斗「あ、それならいいですね。せっかくですし、色々買ってきましょ」
鈴莉「私は何にしようかな…あ、これ、可愛い………」
さんご「あ。雪だるまだ ねー。かわいい、ね」
鈴莉「はい…。可愛いですよね…!使塚さんも食べますか…?」
さんご「んー…チュロスも気になる、し…。食べきれない、かも?」
鈴莉「それなら…ひと口おすそ分け、とか……どうでしょうか?」
さんご「いいの?やったー」
姫「…もしかして、チュロスってこれかしら?」
さんご「そう。チュロス。ひなも買ったの?いいなー」
姫「そう。……よければこっちも味見してみる?」
珠紀「味見かぁ。楽しそうだねぇ。エマも僕のを1口食べてみる?」
エマ「お前はいつも通りだろ。…まあ、くれンなら貰う」
珠紀「もちろん!はいどうぞ、あーん♪」
玲央「ふふ、仲が良くて微笑ましいですね」
エマ「そうかァ?別に普通だろ」
穹斗「前からですけど距離感がバグってるんですって」
姫「普段からご主人達のやり取り見てると感覚が麻痺するのよね…」
鈴莉「た…確かにそうですね…」
珠紀「あはは、エマはその辺恥じらいとかないからねえ。からかいがいはないけどサクッと食べてくれるところは助かるかな」
姫「あ、ご主人は自覚あったんだ…よくやるわね…」
珠紀「まあねー。エマ、僕以外からあーんされちゃダメだよ?」
エマ「あ?なンでだよ」
珠紀「………ほら。こういうところなんだよ。どう思う?」
穹斗「あー。感覚が元から違う感じなんですね。なるほど」
エマ「どうでもういいけどよ、あっちの店も行こうぜ、美味そうな匂いするし」
玲央「ふふ、そうでございますね。あちらは…クリスマスチキンですか。定番でございますね」
エマ「ふーん、定番なンだな。通りで美味そうだと思った」
玲央「ええ。クリスマスにはチキンとケーキ。そしてサンタさんが良い子の元にやってくるのですよ」
穹斗「はは、王道ですね。幼少期、サンタの正体に気づいた時は結構ショックだった気がします」
玲央「ふふ、幼い頃の煉城さまを想像すると可愛らしいですね。それであれば、私がサンタさんの代わりを努めたいところです」
珠紀「サンタか…」
鈴莉「どうしたのですか?」
珠紀「ああいや、僕の父はそういったものには無関心だったからさ。馴染みがないんだ。…少し憧れるかな」
姫「ふーん。ちょっと意外。お金持ちのクリスマスとか、豪華なプレゼントに囲まれて豪勢なクリスマスをしてそうなのに」
珠紀「はは、結構ズバッと言うねえ。残念ながら欲しいものはいつでもいくらでも手に入るけど、だからこそ僕にとってはクリスマスは日常と何ら変わらない1日でしかなかったよ」
さんご「……それは、分かる。わたしもサンタさん来たことない、から」
鈴莉「はわ、そうなんですね……。それなら今年のクリスマスは、目一杯楽しみましょうね…!あの、クリスマスマーケットだけじゃなくて、パーティとかも…!」
さんご「クリスマスパーティ……。楽しそう、かも」
姫「ん。サンタじゃなくても、プレゼント交換するのもアリじゃない?」
穹斗「あー、いいですね。12人でプレゼント渡しあったら盛り上がりそうですし。…ただ、値段制限は決めた方が良さそうですけど。1人2000円までとか」
珠紀「2000円?そんな値段のプレゼントあるの?」
姫「当たり前でしょ。10万とか100万とかの買い物を庶民はホイホイしないわよ」
クリスマスパーティの計画を楽しそうに話し合う様子を眺めながら、ふ、とエマーソンの口角が上がる。この1年で彼らの距離はぐっと縮まった。その事実にどこか安堵を覚える。
玲央「ディックさまは、ご主人様に個人的な贈り物はなさらないのですか?」
エマ「贈り物?考えたことねェな。なンでだ?」
玲央「そうでしたか…。きっとディックさまの贈り物であればご主人様も喜ばれるのではないかと思ったのですが…」
エマ「そうかァ?アイツなんか欲しいもンあれば勝手に買ってンだろ」
鈴莉「一般論になっちゃうのですけど…こういうのは気持ちが大切…といいますか…。その、…心のこもったものを貰えば、それだけで嬉しいんだと…えと、思います…!」
エマ「心の籠ったプレゼント…な…」
そんな会話を交わしながら歩くうち、雑貨コーナーにたどり着く。雑貨コーナーにはサンタをモチーフにした雑貨や置物などが並べられていた。
鈴莉「わ、可愛いものがいっぱいですね…!」
さんご「うん、かわいい。このペンダント、あなたに似合いそう、ね」
鈴莉「本当ですか…?えへへ、買ってみようかな……」
姫「ガラスツリーなんてものもあるんだ…。繊細すぎて、壊れないか心配になるけど」
穹斗「はは、心配しなくても大事に使えば大丈夫だと思いますよ。…ん」
玲央「……あ、小さいサンタさんですか。とても可愛らしいオーナメントですね」
穹斗「……あー、まあ、そうですね」
玲央「気に入られたのですか?よろしければ私にプレゼントさせて下さいませ」
穹斗「あ、いえ…。なんとなく手に取っただけなんで、大丈夫です。こういうの柄じゃないですし」
姫「そう?別にいいと思うけどね。可愛いのはあたしも可愛いって思うし」
玲央「ええ。色々種類もあるようですし…お土産にして、皆さんで持つのもいいかもしれませんね」
穹斗「あー…まあ、皆さんで持つってなら、断る理由もないですけど」
珠紀「みんなで持つ、ということなら僕が買おう。僕の無茶ぶりに付き合ってくれたことには結構感謝してるしね」
姫「無茶ぶりな自覚あったんだ…」
サンタやトナカイ、雪だるまなど、多様なオーナメントをお土産として選んでいく。
一方その頃エマーソンはと言うと、先程の言葉が頭に残っている中一体のテディベアに目を留める。サンタの衣装を着用したクマはつぶらな瞳でエマーソンを見上げていた。人形やぬいぐるみを多く所持する主人が、このぬいぐるみを持って喜ぶ姿が自然と脳裏に浮かんだ気がした。
エマ「…値段は……、高ェなオイ!こんなにすンのかよ…!」
珠紀「エマ?なんかあった?」
エマ「…なんでもねェよ。それより置物買うンだろ、行ってこい」
珠紀「えー?主人の僕に隠し事なんて酷いじゃないか、エマ」
エマ「隠し事じゃねェよ、いいから散れ散れ」
珠紀「ちぇー」
可愛らしいオーナメントを買い揃え、クリスマスマーケットを満喫する。時が進んでも変わらない、温もりを感じる一時を楽しんだのであった。
******
丹恋「わぁ〜!いっぱいワークショップがあるね!ねえねえ、はろちゃんは何したい?」
マハロ「んー、そうだな。リースとか可愛いのが多いなァ…迷いどころだが、スノードームとかどうだ?」
丹恋「スノードームかあ…かわいい〜!オルゴールもついてるんだね〜」
蛍「へぇ、オルゴールもついてるんだな…!スノードーム、いいな。思い出に残りそうだ!」
慈「世界に一つしかないスノードームか…大切な宝物になりそうだね。楽しみだな、ふふ」
律「宝物…そうですね。私らしいものを作ってみたいです」
慈「うん、その意気だね。1個1個選べばきっと素敵な宝物が完成するはずだよ」
丹恋「うんうん…!りっちゃんのスノードーム、たのしみ!」
受付を済ませると、パーツ選びへと案内される。土台の色やオルゴールの音色、中のミニチュアなど、自分なりに自由に選択できるようだった。
蛍「これと…これと…あ、これもいいな」
律「早速決められているのですね。敷枝さんは何を選んだのですか?」
蛍「俺はログハウスのパーツを選んだんだ。クリスマスツリーと合わせるといい感じだろ?」
律「確かに素敵ですね…。雪が降る情景が目に浮かびます。流石敷枝さんですね」
蛍「はは、ありがとな!律はどうするんだ?」
律「私は選び切れなくて、二の足を踏んでしまって…。でも、ゆっくり自分で決めようと思います」
蛍「ああ、それがいいな!出来たら俺にも見せてくれよ」
律「はい、喜んで。その時には1番にお見せしますね」
マハロ「二人で何話してたんだ?」
蛍「ああ、なんのパーツ選ぶか話してたんだ。マハロは…トナカイか、可愛いな!」
マハロ「ああ!動物のパーツの中でもやっぱりクリスマスらしいのがいいと思ったんだ」
丹恋「トナカイ、かわいいよねー!にこもおそろいにしようかなー?」
慈「ふふ、選ぶだけでも時間がかかりそうだ。時は金なり、というけど…。こういうのも醍醐味だよね」
蛍「ゆっくり選ぶのも楽しいからな。今日は珠紀さんも自由にしていい、と言ってたんだ。納得いくまで楽しむとしよう!」
パーツを選んだメンバーたちは、早速制作に取りかかる。土台にパーツを一つ一つ貼り付ける工程を丁寧に行っていた。
マハロ「…よし、こんな感じかァ?こういうのは久しぶりだが、案外できるもんだな」
丹恋「はろちゃん、こういうの作ったことあるの?」
マハロ「いや、ないぞ。子供の頃は図工で工作とかしてただろ。なんとなくそういうのを思い出すなァ」
丹恋「そっかあ。おべんきょうはやだけど、ずこう…こういうのならいっぱい出来そう!子供の頃のはろちゃん、見てみたかったなあ!」
蛍「図工か、懐かしいなあ。俺たちは大人になってから出会ったけどさ、もし子どもの頃に会ってたらどうしてたんだろうな?」
マハロ「小学校でか?そうだなァ…。きっと仲良くしてたと思うぞ。幼馴染って呼ぶのも楽しそうだな!」
慈「幼馴染か…。喧嘩して、仲直りして。その中で強固な縁が結ばれるんだろうな。いいね、そういうの」
律「ふふ、仮定とはいえ、夢が膨らみますね。それでもいい友人になれていたなら嬉しいです」
スタッフの指示に従い、スノードームが完成する。小さな箱庭には可愛らしい雪が降り積っていた。
慈「光に当てると更に輝いて見えるね…うん、綺麗だな」
マハロ「せっかく作ったんだ、落とさないよう気をつけろよ」
慈「ふふ、そうだね。大切な宝物だ。気をつけるよ」
蛍「こうやって流すとオルゴールも聞こえるんだよな…みんなはなんの曲を選んだんだ?」
律「私は…、この曲ですね。クリスマスらしくはないですが、なんとなく馴染みがあって」
丹恋「あ!にこそれ知ってるよー!"ねこふんじゃった"でしょ?」
律「ふふ、そうですね。どこか懐かしい音色が素敵だな、と思ったんです」
蛍「ああ、俺も小さい頃弾いたことがあったなな。連弾しやすくて面白いんだよな」
マハロ「連弾か。友達と遊んでいたのか?」
慈「……あ、気づいたら連絡が来ていたみたいだ。ご主人様がそろそろ合流しようだって」
丹恋「そっかあ。そういえば、結構いい時間かも?」
律「作り終わったところですし、ちょうど良かったかもしれませんね。もうすぐ雪も降りそうですし…」
慈「そうだね。律さん、寒くない?」
律「大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」
蛍「風邪を引かないように気をつけないとな!まだクリスマス当日も終わってないし、イベントづくしだろうからな」
マハロ「ご主人様のことだ、面白いこと考えているかもしれないなァ。敷枝がイキイキするのが目に浮かぶよ」
蛍「俺だけか!?俺はみんなでやりたいぞ、その方が面白いからな」
マハロ「はは、そうだな!その時は全力で楽しませてもらうさァ」
丹恋「えへへ、ちょっとさびしいけど、これからもいーっぱい楽しいことがあるもんね!」
クリスマスの楽しい計画に使用人たちは心を踊らせる。きっと明日もいい1日になる、そんな確信を感じながら。
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合流して少し経った頃。使塚さんごはぼんやりと空を見上げていた。理由は明白。はぐれたのだ。気づけば周囲にいたはずのメンバーがどこにもおらず、途方に暮れる。
さんご「……さむい。…雪が降るのかな…」
はあ、と白い息を吐いていると、「おーい」という聞き馴染みのある声が聞こえた。振り返れば、眼鏡の彼の姿が見える。
蛍「探したんだぞー?珠紀さんたちも心配してたし、早く戻ろう」
さんご「あ、うん」
蛍「何してたんだ?」
さんご「空、見てたの。雪が降るなーって」
蛍「はは、朝からその予報だったしな」
さんご「そっか。……」
蛍「さんご?」
さんご「……これからどんな未来が待っているのでしょう」
蛍「どんな未来か。まず、初雪が降るだろ。その後はきっとご主人様が雪遊びとか計画するかもしれないな」
さんご「…雪あそび。それは寒そう、ねー…」
蛍「はは、体を動かせば心臓も動いて、温まるだろ!で、クリスマスパーティもありそうだな」
さんご「ん。ごしゅじん様がお揃いの飾り、買ってたね」
蛍「その後は…そうだな、色々楽しいことやって、雇用期間が終わるまで目一杯人生を謳歌したいな」
さんご「……」
ふと、頬に冷たい感触が当たる。空を見上げると白い綿がちらちらと降り始めていた。そっと見上げるうちにどちらかともなく静寂が訪れる。数刻、ほんの数秒だったかもしれない。続いた静寂を破るように振り返る。
さんご「わたし、ほたの味方だよ。幸せを願う…それだけ」
蛍「急にどうしたんだ?」
さんご「ふふふ、言いたくなっただけ、よー」
蛍「そうか?…ありがとな、まる」
マハロ「あ、ここにいたのか!探したぞー?」
玲央「ご無事で何よりでした…!ご主人様も心配していらっしゃいましたよ」
姫「本当よ、急にいなくなるんだから、びっくりしたじゃない…!」
鈴莉「…安心しました…よかったです…」
慈「まだイベントは続いているみたいだからね、会場に戻ろう」
丹恋「これからダンスパーティがあるんだって!きれいな歌が聞こえたんだよ!」
玲央「それは楽しみでございますね!煉城さまも一曲いかがですか?」
穹斗「えー、ダンスパーティーとか初めてなんすけど…踊れないし見てますよ」
珠紀「そこまで形式ばったものでもないみたいだからね。気にせず踊ってみてもいいんじゃない?」
姫「そういうことならまあ…踊るのも悪くないかも。見様見真似だけど」
エマ「そんな簡単な話じゃないと思うけどな…」
珠紀「大丈夫。超初心者でも僕がついてるよ?エマのことは僕が完璧にエスコートしてあげる」
エマ「誰がお前と踊るって言ったンだよ、付き合ってられるかよ」
珠紀「嫌だった…?」
エマ「……別に嫌とも言ってねェ。踏んづけても怒ンなよ」
鈴莉「ダンスパーティー…ドレスを着たらもう、物語の中のお姫様のようですね。いいなあ……」
慈「ダンスか。正直やったことないんだよな、上手くできるかな」
律「ダンスであれば少々覚えがありますし…よろしければ踊ってみませんか?」
慈「いいの?君の足を誤って踏んだりしてしまわないか少し心配なんだけど」
律「初心者に失敗はつきものですから、勿論構いませんよ。それに、こういうのは楽しむのが大事ですから」
慈「ふふ、そういうことならお願いしようかな。喜んで」
マハロ「ダンスか…そういえば前にそんな話をしたよな、敷枝と」
蛍「ああ、いつか一緒に踊れればって話してたよな!実はあれから少し練習したんだ、まさか本当に実践できるとは思ってなかったけどな、人生何があるかわからないなあ!」
マハロ「それは奇遇だなァ、私も練習していたところだ。愛嘉さんだけ踊れなかったら世話がないからなァ」
蛍「それならそれでエスコートするさ」
マハロ「ははは、エスコートしてくれるのか?」
蛍「いやー…正直なところかじった程度だから自信はないな」
マハロ「それはまた正直だな!まァ、エスコートされるのも魅力的だが、引っ張るのも嫌いじゃないぞ」
蛍「はは、どっちがエスコートするのかされるのか、勝負になりそうだな!」
マハロ「なら早速試してみようか」
蛍「お、早速やってみるのか?」
マハロ「ああ、どうせ踊るなら私は君と一緒に踊る方がいいからな、なんてな!」
軽快な音楽に身を委ね、身体へリズムを刻み込むように、代わる代わるダンスを楽しんでいく。
こうして十二人で過ごす夜は、絶えない笑い声に包まれながら、ゆっくりと更けていった。
降り積もる雪の寒ささえ忘れてしまうほど、その時間は暖かかった。
――どうか、この楽しいひとときがいつまでも続きますように。
けれど、その穏やかな時間が終わりを迎える日がすぐそこまで迫っていることを、まだ誰も知らなかった。
雪は、しんしんと振り続けている。




