[履行遅滞]法理編 栞とお勉強
翌日の夕方。
私は昨日の決済書類を横に置いて、ノートを開いていました。
履行遅滞。
文字だけ見ると、ものすごく難しそうです。
履行。
遅滞。
漢字四文字で、すでに人を遠ざける気が満々です。
「……要するに、約束したのに遅れる、ですよね」
「ずいぶん雑にしたな」
後ろから真壁さんの声がしました。
「でも、間違ってはいません」
「じゃあ俺でも覚えられるな」
「そこを基準に難易度を決めないでください」
私は鉛筆を持ち直しました。
昨日の三宅さんの事件。
土地の売買代金四千八百万円。
決済日は九月十日。
三宅さんは、権利証も印鑑証明も準備して、司法書士まで待機させていた。
なのに買主は、代金を持ってこなかった。
典型的な履行遅滞です。
私はノートの一番上に書きました。
――履行遅滞とは。
履行期になっている。
履行することもできる。
それなのに、債務者が履行しない。
「昨日の東栄ですね」
「そうだな」
「払える。払う期限も来てる。でも払わない」
「融資がどうとか言ってたぞ」
「それは向こうの事情です」
「厳しいな」
「契約って、そういうものでしょう」
私は少し考えて、ノートに書き足しました。
履行遅滞
=履行できるのに、履行期を過ぎても履行しないこと。
「これならどうです?」
「だいぶ分かりやすい」
「でしょう?」
「ただし」
「はい?」
「昨日みたいな売買では、それだけじゃ足りないだろ」
私は真壁さんを見ました。
「……覚えてるじゃないですか」
「俺を何だと思ってる」
「顔の怖い実務担当」
「半分しか褒めてないな」
でも、その通りです。
売買契約では、売主の引渡しや登記と、買主の代金支払いは、普通は同時に行う。
だから買主が、
「お金はまだ払いません」
と言ったとしても、売主側も、
「土地も渡しません。登記もしません」
という状態なら、すぐに買主だけを履行遅滞とは言えません。
相手にも、
「そっちが履行するまで、こっちも履行しない」
という同時履行の抗弁権があるからです。
私は昨日の三宅さんの状況を書きました。
売主 三宅さん
→権利証、印鑑証明、司法書士まで準備
→登記を移せる状態
買主 東栄住宅開発
→代金を用意しない
「だから三宅さんは、“こちらは履行できます”という履行の提供をしていた」
「それで向こうの逃げ道がなくなる」
「そうです」
私は大きく丸をつけました。
同時履行の関係にある債務では、
自分が履行の提供をして、相手方の同時履行の抗弁権を失わせることが重要。
「これ、宅建ではかなり大事ですね」
「昨日の事件そのままだな」
「はい」
問題文で、
売主Aが所有権移転登記手続の履行を提供した。
でも買主Bが代金を支払わなかった。
と書いてあったら、買主Bは履行遅滞に陥る。
「つまり、“こっちは準備できてるぞ”をちゃんと示すわけか」
「そうです」
「じゃあ、準備して家で待ってるだけじゃ?」
「弱いです」
「銀行まで行く」
「強いです」
「司法書士もいる」
「かなり強いです」
「栞もいる」
「それは法的効果ないです」
「ないのか」
「ないです」
私は線を引きました。
そして次。
一番面倒なところ。
履行遅滞は、
いつから始まるのか。
「昨日は九月十日が決済日だったな」
「はい」
「だから九月十日に払わなければ遅滞」
「基本的にはそうです」
私はノートに書きました。
①確定期限のある債務
たとえば、
九月十日に代金を支払う。
十月二十日に土地を引き渡す。
十二月三十一日までに返済する。
こういうもの。
「日にちが決まってる」
「そうです」
「分かりやすいな」
「法律が全部このくらい親切ならよかったんですけどね」
私は矢印を書きました。
確定期限のある債務
→期限が到来した時から履行遅滞。
「相手から『払ってください』って言われなくても?」
「はい」
「何も言われなくても?」
「はい」
「忘れてました、は?」
「知りません」
「厳しい」
「九月十日って自分で約束してますから」
確定期限は、本人が期限を知っています。
だから、わざわざ債権者が、
「今日は九月十日ですよ」
と教えてあげる必要はない。
「学校の提出期限と同じですね」
「宿題と四千八百万円を一緒にするな」
「原理は似てます」
私は次の項目を書きました。
②不確定期限のある債務
「来たな」
「来ました」
「名前からして嫌だ」
「分かります」
不確定期限。
いつ来るかは分からない。
でも、必ず来る。
たとえば、
「父が死亡した時に、土地を引き渡す」
死亡する日は分からない。
でも、人間である以上、その時は必ず来ます。
「縁起でもない例だな」
「法律のテキストって、こういうの好きなんです」
「もっとこう、桜が咲いたらとかじゃ駄目なのか」
「桜は咲かない年があるかもしれません」
「法律、情緒がないな」
「だから試験には強いんです」
私は続けました。
不確定期限のある債務では、期限が到来しただけでは、必ずしも債務者がそれを知っているとは限らない。
たとえば、父が遠方で亡くなった。
でも息子はまだ知らない。
それなのに、死亡した瞬間から、
「はい、あなた履行遅滞です」
では少し酷です。
そこで。
不確定期限のある債務
→債務者が期限の到来を知った時
または
→期限到来後、債権者から履行の請求を受けた時
「二つあるのか」
「あります」
「面倒だな」
「宅建は、こういう“または”が大好きです」
私は赤鉛筆で囲いました。
確定期限
→期限到来で遅滞。
不確定期限
→期限到来+債務者が知る。
「ここですね」
「何が?」
「試験でひっかけてくるところです」
私は真壁さんを見ました。
「『父が死亡した瞬間に履行遅滞になる』」
「違う」
「正解」
「知ってる必要があるんだろ」
「はい」
「……俺、宅建受かるんじゃないか」
「一問で自信を持たないでください」
次。
③期限の定めのない債務。
「これは簡単そうだ」
「見た目は」
「嫌な言い方するな」
たとえば、土地を売った。
でも、
「いつ代金を払うか」
を決めていない。
あるいは、
「いつ引き渡すか」
を決めていない。
この場合。
債務者は、いつから遅滞になるのか。
「約束した瞬間?」
「違います」
「じゃあ翌日?」
「何基準ですか」
「なんとなく」
「法律で一番危険な根拠ですね」
私は書きました。
期限の定めのない債務
→債権者から履行の請求を受けた時から履行遅滞。
「請求された時?」
「そうです」
「『払ってください』って言われたら?」
「そこからです」
「じゃあ言われなければ?」
「履行遅滞には入りません」
「ずっと?」
「少なくとも“遅滞になる時期”という意味では、請求が必要です」
つまり。
確定期限なら、
「今日が期限」
と最初から分かっている。
でも期限を決めていないなら、
「そろそろ払ってください」
と債権者が請求して、初めて履行すべき時が現実化する。
「なるほどな」
「整理すると、すごく単純なんです」
私は三行並べました。
確定期限
→期限が来たら
不確定期限
→期限が来て、それを知ったら
または期限到来後に請求されたら
期限なし
→請求されたら
「これだけ?」
「まずはここだけ覚えればかなり強いです」
「じゃあもう帰っていいか」
「まだあります」
「あるのかよ」
あります。
法律というのは、
「三つ覚えれば大丈夫」
と言った直後に、だいたい例外を出してきます。
私は新しい見出しを書きました。
④停止条件付の債務
「また似たようなのが来たな」
「不確定期限と間違えやすいです」
「同じじゃないのか?」
「違います」
ここは大事です。
不確定期限は、
いつか必ず来る。
停止条件は、
起きるかどうか自体が分からない。
「例えば?」
「宅建試験に合格したら百万円あげる」
「俺が?」
「誰でもいいです」
「それ、来ないかもしれないな」
「真壁さんの場合は特に」
「おい」
合格するかどうかは分からない。
だから条件。
もし合格したら、そこで債務が発生する。
ただし。
条件が成就した瞬間に、すぐ履行遅滞になるわけではありません。
停止条件付の債務
→条件成就後、債権者が履行を請求した時から履行遅滞。
「条件が成立して、そのあと請求」
「そうです」
「不確定期限と違う?」
「はい」
私は並べました。
不確定期限
→必ず来る。
停止条件
→来るとは限らない。
「ここを区別してください」
「父が死亡したら、は期限」
「はい」
「宅建に受かったら、は条件」
「はい」
「所長が笑ったら?」
「……条件ですね」
「失礼だぞ」
いつの間にか所長が後ろに立っていました。
「うわっ」
「何を教えてる」
「履行遅滞です」
「俺を例にする必要はあるのか」
「覚えやすさ優先です」
「そうか」
所長は少しだけ口元を動かしました。
真壁さんが私を指さした。
「条件成就したぞ」
「笑ってません」
「今ちょっと笑っただろ」
「争いがあります」
「裁判にするな」
私は咳払いして続けました。
⑤返還時期の定めのない金銭消費貸借。
「また期限なしじゃないのか?」
「似ています。でも扱いが少し違います」
「もう嫌になってきた」
「ここからが宅建です」
お金を貸した。
でも、
「いつ返すか」
を決めなかった。
この場合。
貸主が、
「返してください」
と言った瞬間に履行遅滞になるわけではありません。
「なんで?」
「借りた側にも、お金を準備する時間が必要だからです」
だから。
貸主が催告する。
そして。
相当の期間が経過する。
そこで初めて履行遅滞になります。
返還時期を定めない金銭消費貸借
→催告
→相当期間経過
→履行遅滞
「普通の期限なし債務とは違うんだな」
「はい」
普通の期限なし債務なら、
請求された時。
返還時期を定めない金銭消費貸借なら、
催告して、相当期間が経過した時。
「また試験に出そうだな」
「出ます」
「嫌だな」
「その嫌なところを覚えるのが受験勉強です」
「夢がないな」
「私、前世で散々やりましたから」
危ない。
さらっと転生前の話をしそうになりました。
真壁さんが怪訝そうな顔をしましたが、私はノートに顔を落としました。
そして最後。
⑥不法行為に基づく損害賠償債務。
「不動産じゃなくなったぞ」
「民法ですから」
たとえば、人の物を壊した。
事故で損害を与えた。
その損害賠償債務。
これについては。
不法行為をした時から履行遅滞。
「請求されなくても?」
「はい」
「その瞬間から?」
「そうです」
不法行為をした人が、
「請求されるまでは払わなくていいと思ってました」
では困ります。
だから、不法行為による損害賠償債務は、原則として不法行為の時から遅滞に入る。
私は全部まとめました。
――履行遅滞の起算点。
①確定期限のある債務
→期限到来時
②不確定期限のある債務
→期限到来を債務者が知った時
または
→期限到来後、履行請求を受けた時
③期限の定めのない債務
→履行請求を受けた時
④停止条件付の債務
→条件成就後、履行請求を受けた時
⑤返還時期の定めのない金銭消費貸借
→催告後、相当期間が経過した時
⑥不法行為に基づく損害賠償債務
→不法行為の時
「……多いな」
真壁さんが呟きました。
「多いですね」
「覚え方ないのか?」
「あります」
「おお」
私は紙を一枚引き寄せました。
「まず、日にちが決まっているなら――」
「期限到来」
「日にちは決まってないけど、必ず来るなら――」
「知った時」
「何も期限を決めてないなら――」
「請求された時」
「起きるかどうか分からない条件なら――」
「条件成立後に請求」
「返済日を決めずに金を貸したなら――」
「催告して、少し待つ」
「人に損害を与えたら――」
「やった瞬間」
「完璧です」
「俺、宅建受かるな」
「だから一章で合格を確信しないでください」
そこへ所長が口を挟みました。
「栞」
「はい」
「もう一つ書いておけ」
「何ですか?」
所長は、昨日の三宅さんの契約書を指しました。
「履行遅滞になったら、何が起きる」
私は少し考えました。
「損害賠償請求です」
「そうだ」
履行遅滞は、単に、
「遅れています」
という状態を確認するだけではない。
債務者に帰責事由があるなら、債権者は、その遅延によって生じた損害の賠償を請求できる。
昨日なら。
三宅さんは、買主の支払いが遅れたせいで、次の土地の決済まで危うくなった。
そういう損害が現実に生じれば、損害賠償の問題になります。
そして契約で、
「履行遅滞があった場合の賠償額」
をあらかじめ決めていることもある。
損害賠償額の予定です。
「先に金額を決めておくやつか」
「はい」
私は書きました。
損害賠償額の予定がある場合。
債権者は、債務不履行があったことを主張・立証すればよい。
原則として、
「実際にいくら損害が出たか」
を一から証明する必要はない。
「便利だな」
「そうなんです」
損害額の証明というのは、意外に難しい。
だから契約時に、
「もし債務不履行になったら百万円」
などと決めておく。
そうすれば、後で争いになった時の負担が軽くなる。
「じゃあ一億円って書いとけばいいのか?」
「駄目です」
「即答か」
「三千万円の土地で違約金一億円とか、普通におかしいでしょう」
損害賠償額の予定も、何でも自由というわけではない。
極端に暴利的で、公序良俗に反するような内容なら、その限度で無効になることがあります。
「法律って、自由に決めていいって言いながら、やりすぎると怒るよな」
「人間社会もだいたいそうですよ」
「確かに」
さらに。
損害賠償額を予定していても、債権者側にも過失があったなら、その過失を考慮する余地があります。
つまり、
「百万円と決めたから、何があっても百万円」
とは限らない。
「債権者も悪かったら?」
「その分を考慮できます」
「なるほどな」
そして、もう一つ重要。
損害賠償を請求された債務者は、原則として、
「自分には責められる理由がなかった」
つまり帰責事由がないことを主張・立証できれば、責任を免れることがあります。
「例えば?」
「大災害で建物の引渡しができなくなったとか、本人に責任がない場合ですね」
「昨日の買主の融資遅れは?」
「普通は自分側の資金調達の問題ですから、それだけで簡単に免責とはならないでしょうね」
ただし。
ここで大事な例外があります。
金銭債務。
お金を払う債務です。
「また昨日のやつだな」
「はい」
金銭債務の履行遅滞では、
「不可抗力で払えませんでした」
という抗弁で、原則として責任を免れることはできません。
「台風でも?」
「原則として駄目です」
「地震でも?」
「金銭債務では、不可抗力を理由に免責されないのが重要です」
「金は厳しいな」
「お金は代替性がありますからね」
土地そのものを引き渡す債務と違って、
「この一万円札でなければ履行できない」
という話ではない。
金銭は代わりが利く。
だから、
「このお金がなくなったので払えません」
では原則として免れない。
私は赤鉛筆で大きく書きました。
超重要。
普通の債務
→帰責事由がなければ、損害賠償責任を負わないことがある。
金銭債務
→不可抗力を理由として責任を免れることはできない。
「昨日の東栄が『銀行の手続が遅れたから仕方ない』って言ってたけど」
「はい」
「金銭債務って時点で、かなり弱い言い訳なんだな」
「そういうことです」
私は昨日の部長の顔を思い出しました。
融資が遅れた。
社内手続が。
銀行が。
いろいろ言っていた。
でも三宅さんから見れば、そんな事情は知らない。
約束した日。
約束した金額。
それが入ると思って、次の契約まで組んでいた。
法律は、そこをかなり厳しく見る。
「栞」
所長が言いました。
「最後に整理してみろ」
「はい」
私は新しいページを開きました。
履行遅滞。
まず見ること。
一。
履行期が来ているか。
二。
履行することが可能か。
三。
債務者が履行していないか。
四。
同時履行なら、債権者側が履行の提供をしているか。
五。
いつから遅滞になるか。
「いいな」
所長が頷きます。
「試験問題でいきなり『履行遅滞になるか』と考えるな」
「先に時系列ですね」
「そうだ」
私は余白に書きました。
――履行遅滞は、「いつから」を整理する。
「これが一番大事かもしれません」
「だな」
「期限の種類を見れば、かなり解けます」
「確定か、不確定か、期限なしか」
「はい」
真壁さんが腕を組みました。
「じゃあ昨日の三宅さんの事件なら?」
「九月十日という確定期限があります」
「だから?」
「期限が到来すれば、原則としてそこから遅滞」
「ただし?」
「売買では同時履行だから、三宅さん側も履行の提供をする必要がある」
「してた」
「権利証も印鑑証明も司法書士も全部用意してた」
「だから?」
「買主は代金を払わなかった時点で履行遅滞に入る」
「遅延損害金は?」
「発生する可能性がある」
「完璧だな」
「昨日、現場で見ましたから」
そうなんです。
昨日までなら。
確定期限。
不確定期限。
期限の定めなし。
全部似たように見えていました。
でも今は違う。
確定期限には、九月十日の銀行がある。
不確定期限には、
「いつか必ず来る。でもいつか分からない」
という時間がある。
期限なしには、
「まだ請求されていない」
という状態がある。
停止条件には、
「そもそも起きるか分からない」
という不確実さがある。
同じ「まだ履行していない」でも。
法律上は、全部意味が違う。
私はノートの最後にまとめました。
履行遅滞とは、単なる遅刻ではない。
約束を果たすべき時が来ている。
果たすこともできる。
それなのに、履行しない。
そして。
いつ「果たすべき時」が来るかは、契約の決め方によって違う。
「……なるほど」
私は鉛筆を置きました。
「何が?」
真壁さんが聞く。
「昨日の三宅さん、怒ってましたよね」
「そりゃ四千八百万円が来なかったからな」
「でも、法律って、“怒っていい日”を決めてるみたいですね」
「怒っていい日?」
「はい」
私はノートを指さしました。
「期限が来た」
「うん」
「こちらは準備した」
「うん」
「それでも相手がやらない」
「うん」
「そこで初めて、“あなたが遅れてます”ってはっきり言える」
真壁さんは少し黙ってから言いました。
「なるほどな」
所長が帳簿を閉じました。
「法律は感情に日付をつけるんだ」
私は所長を見ました。
「……それ、格好いいですね」
「そうか」
「ノートに書いていいですか?」
「好きにしろ」
私はすぐ書きました。
法律は、感情に日付をつける。
怒っている。
困っている。
約束を破られた。
それだけでは、まだ曖昧です。
でも。
九月十日。
午後一時。
銀行。
履行の提供あり。
代金支払いなし。
そこまで並べれば、曖昧だった怒りが、法律上の「履行遅滞」に変わる。
私はノートを閉じました。
「栞」
「はい」
「明日は八時半だからな」
「……」
「確定期限だぞ」
「根に持ってますね」
「昨日一分遅れたからな」
「一分で遅延損害金取ります?」
「缶コーヒー一本」
「暴利行為です」
「百三十円だぞ」
「公序良俗違反を主張します」
「どこがだ」
所長が小さく笑いました。
夕方の事務所。
古い蛍光灯。
机の上には、契約書と、宅建の問題集と、飲みかけの缶コーヒー。
昭和六十三年。
私はまだ十八歳で、事務見習いで、知らないことだらけです。
でも。
昨日ひとつ事件が起きて。
今日ひとつ整理した。
履行遅滞。
教科書では数行。
現場では、四千八百万円。
そして、その差を埋めるのが、たぶん勉強なんだと思う。
私はノートの表紙を閉じました。
明日は八時半。
確定期限。
……今度こそ遅刻しない。
履行遅滞を勉強した翌日に履行遅滞になる主人公なんて。
さすがに格好がつきませんから。
以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。




