ミルは せんたく を おぼえた
「お、嬢ちゃん達また今日も訓練かい? 頑張れよ」
「訓練も大事だがあんまり頑張り過ぎて護衛に支障をきたすなよぉ」
「お嬢ちゃん可愛いからおっちゃん応援してるぞ!」
「おっちゃん達ありがと! 今日こそ一本取ってみせるわよ!」
訓練も今日で三日目。
最初こそ、何やってんだあいつ等、と遠巻きに見ていた他の旅隊の冒険者たちの中にも、次第に声を掛けたり朝食のついでに見物したりする者たちが出てきていた。
今日最初に声を掛けてきたのは、ミル達やエリーナ達とは反対側を護るCランク冒険者のパーティメンバーだった。
「ガハハハ。お前さん昨日も同じこと言ってたぞ」
「……エリーナはきっと今日もダメ。私の矢は当てて見せる」
「いやお前さんの矢まともに当たったらヤバくね? 剣は寸止め出来るけど矢は無理だろ」
「ミリアの矢は全力で打ってもミルちゃんに掠りもしないから大丈夫よ」
「……言うじゃない」
「そっちこそ」
「お、おう。……お前ら仲間同士のじゃれ合いに殺気込めるのおっちゃんどうかと思うな」
最近めっきりとミルの姉の座を争うライバルと化して火花を散らすエリーナとミリアに、ちょっと引き気味になるCランクのおっちゃん。
助けを求めて周りを見れば、いつもとは違う面子が居ることに気が付いた。
「お? 今日は金髪の小僧じゃなくて黒髪の嬢ちゃんか。いつもは眼鏡のあんちゃんと訓練してるのは知ってたが、今日はこっちなのかい?」
「はい。と言っても私は後衛なので、アルトみたいに模擬戦をするんじゃなくて武器の使い方からですが」
「あぁ、確かに後衛も接近戦出来るに越したこたぁねぇからな」
「そうそう。うちの後衛も見習ってくれよ。後ろに流れた敵にあたふたすんのめんどくせぇんだよ」
「前衛が敵を通すのが悪いんでしょう。後衛は火力と支援なんですから前衛がしっかりしていれば問題無いんですよ」
「とまぁこういう後衛もいるが、やっぱ後衛も護身くらいは出来たほうが前衛としても安心だ。何なら俺が基礎を教えてやろうか?」
前衛職と後衛職の二人が言い争いを始めたのを横目に、見るからにベテラン戦士と言った風体のおっちゃんが言う。
だが、それを聞いた後ろにいたミルが、フランシスカの腕を取るとグイグイと引っ張った。
「わわっ。すみません、今日はミルさんに教えてもらう予定なので、ごめんなさい」
「ああ、いいっていいて。その白い嬢ちゃんが見た目に似合わず、すげぇ強ぇのは訓練見てたからよく分かるぜ。ギースのヤツが贔屓にするのも納得ってもんだ」
うんうんと頷くおっちゃん。
それにペコリとお辞儀を返し、フランシスカは引っ張られていった。
「ホント、あの可愛い嬢ちゃんがすでにCランクで、Dランクの小僧とCランク二人を手玉に取るんだもんな。流石に三対一で手加減もあるんだろうが、それにしたって末恐ろしい嬢ちゃんだぜ」
年齢に見合わない強さを見せるミルに、俺も負けてられねぇと気合を入れるおっちゃん。
彼は幸か不幸か知らなかった。ミルが通常なら数年かかるFランクからCランクへの昇格を、二日で成したことを。
そして彼は思いもしなかった。
ミルに挑みかかる三人がこれ以上ないほど本気な事を。そしてミルの方こそ、手加減に手加減を重ねて相手していることも。
「おい誓いの剣の嬢ちゃん達。若いの二人は先に行っちまったぞ。追わなくていいのか?」
「あらら、ちょっと待ってよミルちゃーん!」
「……エリーナがくだらない事ばっかり言うから置いて行かれた」
「それはこっちのセリフよ!」
「ほれほれ、さっさと行かねぇと始まっちまうぞ。いつもみたいにそのデケェ乳がベシベシ揺らされるの楽しみにしてるからな!」
「「死ね!」」
豪快に笑うおっちゃんに息の合った罵倒を残し、エリーナとミリアはミル達を追いかけた。
■◇■◇■◇■
「フランはまず武器の選択からですね。何か今までで使った事のある武器はありますか?」
「ええっと、害獣を仕留めるのには主に魔法を使っていたので、武器はあんまり……トドメ用の短剣を括りつけた棒……短槍?を辛うじて使えるくらいです。あとは解体用の短剣とか、武器なのか微妙な鉈とかですね」
「短槍と短剣ですか……ああ丁度いいのがあるじゃないですか、はいこれ」
そう言うとミルは、インベントリから白く美しい短剣を取り出すと柄をフランシスカに差し出した。
「あ、肉焼き棒」
柄側を向けて差し出された短剣に、思わずそう呟くフランシスカ。
見る目のある武器商が見れば、全財産を投げうってでも手に入れるであろう美しき短剣だが、フランシスカの中ではすでに肉焼き棒で固定されているようだ。
「ある時は包丁、ある時は肉焼き棒、またある時は物干し竿、しかしその実態は! ……あれ正式名称なんでしたっけ? 確か作成者が付ける銘の他に、システム用のアイテム名があるはずなんですが……インベントリに入れたら分かりますかね」
ジュウサンキロは一旦ミルのインベントリに消えると再び現れた。無機物ながら正式名称を忘れられた槍が不憫である。いや”ジュウサンキロ”もれっきとした銘ではあるのだが、それがまた哀愁を誘う。
「【天槍シロカガチ】だって。そう言えば、白蛇的なモンスターの素材使ってるってクリスが言ってましたね。……何か呼び難いからやっぱりジュウサンキロでいいかな。んじゃこれ使って訓練しましょうか」
「ありがとうございます。では訓練の間お借りします。……なんかちょっと汚れていますね」
ミルからジュウサンキロを恐る恐る受け取るフランシスカ。
何か高そうな武器だな、壊さないように気を付けよう、と思う。
実際はそれこそ市場に出てても値が付かないほど最高級や特異級、伝説級を通り越して、神話級に片足突っ込んだようなとんでもないレベルの武器なのだ。
だが、よくよく見ればその美しい装飾の所々にバーサークターキーの乾いた肉片や野菜のカスがこびり付いているのであんまりそんな感じがしない。
本来の価値を知れば手を触れる事も憚られるであろうが、知らないというのは幸せである。
「ちょっと洗ってしまいますね。『水の精霊よ。満たし揺らめき穢れを流せ―――【洗浄】』」
フランシスカが詠唱すると、何処からともなく湧き出した水がジュウサンキロを包み込むと渦を巻き、十秒ほどの時間で湧き出した時と同じように空気に溶けるように消えた。
その後に残ったのは端々の汚れを洗い流され、輝きを増した白く美しい諸刃の短剣。
残る水滴に朝日がきらきらと反射し、ジュウサンキロも心なしか嬉しそうである。
「おぉー。クリスが言っていた生活魔法というやつですね。洗濯に便利そうです」
「実際に洗濯や食器を洗うのに使いますね。上手な人だとシャワー代わりに使ったりもしますが、制御が甘いと鼻と口が水で塞がれて窒息します」
「わお、まさに突然の死!」
「いえ流石に気絶したらキャンセルされるので死にはしませんが……全裸で気絶はある意味死ねますね」
自宅ならまだしも野営などでは致命的だ。モンスターに見つかれば間違いなく死ぬし、女性でオークやゴブリンなら尊厳の死、パーティメンバーに見つかっても矜持が死ぬ。
そもそも自宅ならお風呂に入る。一家に一つ風呂があるというほどアルレッシオ聖王国も風呂事情に明るくないが、それでもアリアの努力のたまもので公衆浴場はあちらこちらに点在しているのでお風呂には事欠かないのだ。
よってシャワー代わりに洗浄を使うのはよほど腕に自信のある者だけだった。
「ふむふむ。ちょっと私も試してみようかな」
もしここにクリスが居れば慌てて止めたであろう。昨日の自分の様に何が起こるか分からないからだ。
だがこのときクリスは恋破れて落ち込むアルトを慰めるのに忙しく、この場にいなかった。
そしてフランシスカもタマモが召喚された詳しい経緯は聞いてなかったので、この場に止める者はいない。
ミルは経緯を聞いていたが、そもそもそこに考えが至っていない。
インベントリから薄く小さな白い布地を数枚取り出したミルは、それを掌に載せ呪文を唱えた。
「『水の精霊よ。満たし揺らめき汚れを落とせ―――【洗浄】』」
微妙に呪文が違う。
戦闘の事とクリスへの悪戯以外であまり働かないミルの灰色の脳細胞には少々呪文が長かったらしい。
だがそれが幸いしたのか、それともミルのINTが生まれたての幼児レベルな為か、職業構成がクリスとは異なるためか、いかなる理由によってかは分からないが、クリスと違い普通に魔法は発動し、白い布地を包み込むとフランシスカの時と同じように渦を巻き、その後何事もなく消えうせた。
後に残るのは綺麗になった白い布地のみ。
「やった、できた! ふふん、クリスは出来ないようですが私には出来るじゃないですか! 後で自慢してやりましょう」
ミル、満面の笑み。こと魔法でクリスに出来ないことが出来たのが相当に嬉しいらしい。
これにはフランシスカも思わずにっこり。周りに居る見物の冒険者も釣られてにっこり。
微笑み一つでこの場を優しい空気にした美少女は、よほど嬉しかったのか布を掲げてくるくる回る。その仕草がまた可愛らしかった。
「良かったですねミルさん。……ところで、その布に何故か見覚えがあるんですが、何の布ですか?」
「ん? 使用済みパンツ」
「やっぱり!? しまって! しまって下さい!!」
■◇■◇■◇■
そんなミル達を、少し離れた場所から見つめる者がいた。
この旅隊の代表であり、Aランクパーティ【巨人の一撃】のリーダー、ゴンザレスだ。
遊んでるようにしか見えないミルたちを、彼は睨みつけるように観察していた。
「ゴンザ。あれが昨日お前が言ってた訓練か?」
「ザッシュさんが一緒にって言うんで来たんですが俺達も見てていいですかね?」
「リーダーが一度見てみろって言ってたから来てやったわよ」
そんな彼の後ろから声を掛けたのは彼のパーティの副リーダー、【大剣士】のザッシュと、追跡者の男、そして魔導士の女であった。
「来たか」
「来たわよ。ていうか何? アナタが見ろって言うから来たけど、生活魔法一つで大喜びしてるただの子供じゃない」
「訓練というより子供が遊んでいるようにしか見えんな。アレのどこに見る価値があるんだ?」
「だなぁ。超可愛くはあるけど、俺的には今朝見かけた子狐が気になって仕方ないんだけど。あれ頼んだらモフらせてくれるんすかね」
「お前の獣好きは相変わらずだな。こないだアダムヘルで獣人にちょっかい出して痛い目にあったんじゃなかったのか?」
「いやぁ。アレを思い出すと未だに首が痛くなるんで言わないで下さいよ」
不服そうな魔導士の女と怪訝そうな副リーダーの男、そして首をさする追跡者の男。
ミル達は気付いていないが何を隠そう彼は、ミツミの父親にぶん投げられた彼だった。
「うむ……。どうやら今日は昨日までの訓練と違うようだな。あの模擬戦を見てお前たちの意見を聞きたかったのだが」
フランシスカにジュウサンキロの使い方を教えるミルに視線を向けたまま、そう残念そうに漏らすゴンザレス。
傍から見れば、キャッキャしながら短剣で遊んでいるようにしか見えない。
「昨日リーダーが青い顔して帰ってきた時のヤツですね。そんなにヤバかったんですか?」
「あぁ、なんつーか俺もちょっと自分で自分の目が信じられなかったというか、お前たちの見解も聞きたくてな」
ミルはフランシスカに手本を見せようというのか、ジュウサンキロを構えるとにょっきり伸ばした。
「……リーダー俺も自分の目が信じられねぇんだが、何か今、短剣が伸びて槍にならなかったか?」
「う、うむ。仕込み槍かな? 変わった武器だが無いわけでも―――」
目を丸くした副リーダーが言い、ゴンザレスが答える間に、ミルが手本に槍を振るう。
ズパンッ! ズバシュ! シュパパパパパパパパァン! ズパシュバーン!
「……リーダー、俺やっぱちょっと目がおかしいみたいだわ。何か霞んで槍が良く見えなかった」
「……奇遇だな。俺もだ。と言うかなんか耳に違和感が」
「あ、リーダーもっすか? 実は俺もキーンってするっす」
ミルの槍撃の直線上に居たためか、空気を切り裂いた壮絶な衝撃でかなり距離があるのに気圧が変化したらしい。
「何かよく分かんないけど、すごいの?」
「「「俺もよく分からん」」」
ぽかんとする魔導士の女と違い、前衛職の三人の汗が止まらない。何がヤバいかよく分からないがとにかくヤバイ、脇にシミが出来るほどだ。
ミルがフランシスカに一度縮めたジュウサンキロを手渡した。
再び伸びて槍になる短剣。
「ど、どうやらアレはああいう武器のようだな。槍なのか短剣なのか分からんが」
「武器も珍しいが、あのミルノワールとかいうCランクの少女、いったい何者だ? もう一人の黒髪の少女も同じような使い手なのか?」
ザッシュが困惑の中に微かに畏怖を込めた目でフランシスカを見る。
そんな事とは知らないフランシスカが槍を振るう。何故か目の前のミルに向けて。
ヘロォ~
ペシッ、ペンペンペン!
超へっぴり腰で放たれた槍は、ミルの持つ小枝ではたき落されフトモモ、腰、肩、頭の順でペシペシ叩かれた。
「……どうやらもう一人の方は素人のようだな」
悪い所を矯正するようにペシペシ叩かれるフランシスカに、なぜかほっと息を吐く男三人。
普段ならイライラしかねないそのへっぴり腰に、今はとても癒された。
「というか、あの子って確かクリスとかいうあのパーティの回復職に魔法を習ってる子よね。そりゃ後衛ならそんなもんでしょ」
そんな男共を呆れたように見る魔導士の女。
フランシスカが槍を振るう。
ヘタ~ヒョンヒョン
ペシペシペシ!
「あぁそうなのか。じゃぁ今日はあの子に接近戦を教えるから金髪の少年との模擬戦をしてないのか。あっちの子の訓練は見たことあるのか?」
フランシスカが槍を振るう。
ヒュル~パッパッ
ペシペシペシ!
「ええ、初日の彼の回復魔法を見てウチの回復職がショックを受けてたから、気になってずっとクリスって子を見ていたけど、なかなか声を掛けるタイミングが無いのよね。初日に誰かさんが彼のパーティメンバーにちょっかい掛けたせいで、話しかけづらいったらありゃしない」
不満そうに言う女に、ゴンザレスはバツが悪そうに光を反射する頭を掻いた。やっと汗が引き始めて春の早朝の風が頭皮に染みる。
フランシスカが槍を振るう。
シュパァ、シュンシュン
ペシペシペシ!
「そりゃすまんかったな。ちと噂が信じられなかったから、実力を見たかったんだ。噂だけじゃ胡散臭くて背中を任せられん。依頼人の命も掛かってるんだしな。で、あの黒髪の子の訓練はどうだったんだ?」
シュパッ シュッシュッシュッ
ペシペシペシ!
「器用な子、って感じね。初級魔法だけだけど全色使えてたし、短縮詠唱も出来るみたい、連射力が半端なかったわ。初期魔法とはいえそれを連射し続けられる魔力量も圧巻といったところね。Cランクとしてはまぁまぁ使える方なのではないかしら」
「なるほど、そこそこ使えるのか」
「そうなんだけど、中級魔法を全く撃たなかったのが気になるわね。もし中級魔法をあの速度で連射できるなら、上級魔法と【詠唱破棄】を使える私でも危ないけど、初級魔法しか使えないなら敵じゃないわ」
胸を張ってそういう魔導士の女。
彼女は知らなかった、その少女がまだ冒険者登録もしていない駆出し以下のただの同行者と言う事を。
そして、つい一昨日まで辛うじて三色の初級魔法を数発連続で撃てる程度の実力だった事も。
シュパン! シュピッ! シュシュシュシュ!
ペシペシペシ!
「……リーダー」
「なるどな。つーことはあの子はまだ未知数だが、優秀ってくらいなのか」
「そうね。私が教えてあげれば伸びるかもね。気が向いたら教えてあげてもいいわよ」
「リーダー」
「そこまでする必要はない。あのパーティ全体の実力が知りたいってのとお前たちの意見が聞きたかっただけだからな」
「なぁリーダー。なぁ」
「出来れば金髪の男と少年の方の実力も見てほしかったんだが―――」
「 リーダー!!!! 」
「うお!? 何だよ! びっくりするじゃねぇか! ……ってどうした?」
魔導士の女と会話をしていたゴンザレスは、彼を激しく呼ぶ副リーダーの方を向き、その顔が真っ青になっていることにやっと気づいた。
「何だ、どうした?」
「音が……」
「音?」
そこでやっとゴンザレスもそれに気付く、ついさっきまで欠伸が出るような低く鈍い音だったのが、風すらも切り裂く様な鋭い高音になっていることに。
彼が恐る恐る後ろを振り返れば、そこには熟練の槍撃手もかくやという動きで槍を鋭く振るうフランシスカと、それを軽々と避けながら小枝を振るうミルの姿が!
「……やばいわリーダー。俺なんか時間に置いて行かれてるかもしれん」
「訳が分からん何があった!? ずっと見ていたんだろう!?」
「何かさ、黒い子がへっぴり腰で槍を振るう度に、白い子の方が悪い所を小枝で打って矯正してるみたいでな。……それを一回繰り返すごとに、段々と槍の速度が速く、踏み込みが鋭く、体捌きがしなやかになっていくんだ。
はは、まるで天賦の才を持つ素人が、槍の達人に成長するのを早回しで見てるみたいだ。大丈夫かリーダー? 俺って実はもうよぼよぼの爺さんになってないか? 何か目がかすれて二人の動きが良く見えなくなってきたんだが」
「だ、ダイジョブだ、お前はまだ俺の知ってるザッシュだよ。爺さんなんかになっていない。あと、俺にもあの二人の動きは霞んでみえる。特に手元」
口をあんぐりと開けていることにすら気付かず、呆然とその光景を見る三人の前衛を、魔導士の女もまた呆然と見た。
さっきまで確かに素人だったのにほんの数分かそこいらで、見違えるように強くなっているのが接近戦が本職で無い彼女にも一目で分かるのだ。素人の成長は早いがそんなレベルでは断じてない。
そして次の瞬間、魔導士の彼女も目を剥く光景が生まれた。
フランシスカの周囲に色とりどりの玉が生れたかと思うと、それが展開し四方八方からミルに襲い掛かったのだ。
「なっ!?!? 初級魔法の全色同時詠唱!? 【詠唱短縮】に【複合詠唱】、【発動時間操作】に【魔法起動状態維持】の同時試行! 更に全部の魔法に【自動行動】と【追尾】まで付いてる!? 全部高等技術じゃない! しかもそれを接近戦しながら!? どういう脳味噌してんの!?!? 私夢でも見てるのかしら!? ねぇ!?」
一時間ほどの彼女らの訓練が終わった時、精根尽き果てたAランクパーティの面々は一様に思った。
結局意味不明って事しか分らなかったな、と。




