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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十八章 友好の花編
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第五百七十一話 来ちゃった

友好の花を封じ込める結界は、その翌日に張ることができた。シディーの話は難しすぎて要領を得られなかったが、そこは、メイが優しく説明してくれたおかげで、何とか完了させることができた。要は、結界を出るときに「クリーン」魔法が二十回連続でかけられる効果を付与すればよかったのだ。こんなことで、あの花の拡散が防げるのかという疑問も残るが、シディーが納得しているので、これでいいと思うことにする。


メイ、シディー、そして、セルロイトの三人は、次の日から花の研究にとりかかった。


研究と言っても、その花の生命力を確認するために、最初は花を繁殖することから始めた。その作業は実に簡単で、花の枝を折って、鉢植えに挿すだけなのだ。これで本当に繁殖するのかと思ったが、ハーツ公爵はこれで繁殖するのだと言う。


ちなみに、この公爵夫婦にも、後でクリーンの魔法をかけておいたのは言うまでもない。友好の花は、フォーアル大公国から持ち出される際に、布で厳重に巻かれていて、繁殖の対応は十分になされていたが、取り敢えず、ということで魔法をかけておいた。シディーは特に何も言わなかった。


そして、その三日後に確認して見ると、確かに、花は鉢植えに根付いていた。数日もすれば、花は立派に育ち、友好の花を咲かせるのだという。そして、それは現実のものとなった。


あまりの見事さに俺は言葉を失ったが、メイとシディー、セルロイトは、別の意味で言葉を失っていた。実験のために、鉢植えを増やし、一旦挿し木をして、それを抜いた鉢植えにも、友好の花が咲いていたからだ。


「話には聞いていたけれど、実際に目の当たりにすると、背筋が寒くなるわね……」


シディーはそう言って、両手で自分の体を抱きしめていた。


ちなみに、花が咲くまでの間、保管している部屋は改造されて、使い勝手のよい部屋に改められていた。特に、何をしたというわけではない。隣の部屋も実験室にするために、壁をぶち抜いただけだ。あとは、必要な実験道具を運び込むくらいで、それは、俺の転移結界を使ったので、作業自体は短時間で済んだ。


ただ、この部屋はもともと、ローニが休憩室として使っていたところで、休む場所がなくなってしまったのには、少し悪いことをした。基本的にこの部屋には私物を持ち込むことは禁止されていたため、彼女のもの自体は少なかったのだが、それでも、突然自分の部屋を奪われたと聞いたときは、彼女は明らかに落ち込んだ姿を見せた。


だが、チワンの計らいで、彼女は宿直を免除されて、日勤となった。いつも家事万般を任せっきりにしている夫のドーキを少しでも手伝えと言われて、彼女はさらに落ち込んでいた。仕方がないので、しばらくは屋敷に夫婦で夕食を食べに来いと言って、ようやく機嫌を直したのだった。


花の危険性がわかった三人は、早速研究に入った。しかし、研究を始めたその翌日、フォーアル大公国から、思ってもみない人物がアガルタにやってきた。何と、テイスト大公自らが、アガルタにやってきたのだ。これにはさすがの俺も驚いた。


さらに驚くことに、この大公は、船でガルビーの港に着くと、自ら馬に乗ってこの都までやってきたのだ。通常、こうした国王クラスが訪問するとなれば、一旦、ガルビーで休息してから一日かけて都までやって来るものなのだが、この大公は、ガルビーに到着しても、自分の身分を明かさず、単にフォーアル大公国の使者であると名乗り、馬を飛ばしに飛ばして、半日もかけずに都に到着したのだ。そのため、彼が本人であることを確認するのに、少し手間取ってしまった。


この本人確認で役に立ったのが、大公の実弟であるハーツ公爵だ。彼は、大公が到着したと聞いて、即座にそれは偽報であると断じた。ただ、それでもと、兵士の懇願に渋々応じる形で席を立った公爵は、大公を目の前にして腰を抜かしてしまった。そんな彼を見て大公は、周囲が驚く呵々大笑をして、大喜びだったらしい。


本来ならば、色々な面倒臭い手順を踏んで対面となるところだが、大公はお忍びで来ていると言って、そうした格式ばった対面を断ってきた。それよりも、早く俺に会いたいということで、メイとシディー、そして、セルロイトを迎賓館に呼び、さらには帝都の屋敷からリコにも来てもらい、迎賓館の会議室で対面と相成った。


「突然、罷り越して申し訳なかった。フォーアル大公国の大公・フォーアル・ルイーズ・テイストである。お目にかかれて光栄でありますぞ」


俺を見るなり大公は、大股で俺の許に近づき、力強く手を握ってきた。何となく、リボーン大上王と同じ匂いのするオジサマだ。


彼はメイに丁寧にあいさつをし、大賢者・メイリアスに会えたことを心から喜んだ。そして、シディーの姿を見て、彼は驚きの一言を放った。


「アガルタ王におかれては、このような姫がおいでになったのか。もう、将来は決めておいでか?」


「え? どういうことです?」


「可能ならば、こちらの姫を、我が息子、トリファに貰い受けたいが、どうであろうか?」


「いや、あのですね……」


大公にシディーが俺の妻であることを伝えると、彼は目を丸くして驚いていた。


「こっ……このような若い女子を妻に……か。アガルタ王も、隅に置けぬな」


「いや、彼女はドワーフでして……。ドワーフ族は、外見上はほとんど年齢を取りませんから……」


そう言って説明してみたが、大公はそれでも信じられないという表情を崩さなかった。実際、シディーの年齢は、大公とそう変わりはないのだが……。一方のシディーは、大テレにテレていたが、やはり嬉しそうで、顔を真っ赤にして喜んでいた。


「遅くなりましたわ」


遅れてリコが部屋に入ってきた。そのとき、大公の表情が一変した。口をあんぐりと開けて、呆然とリコを眺めている。いつもとは違って、少し小ぎれいな衣装に身を包んでいたのだが、それでも、彼女の美しさは、饒舌な大公を黙らせるのに十分だった。


リコのお蔭で、その場が落ち着いた。俺は皆に席に着くように促す。


「いや、突然、押しかけて申し訳がなかった。先日、貴国に我が弟ハーツが、友好の花を持ち込んだと思うが、状況はいかがであろうか」


「はい。メイリアスとコンシディー、そして、セルロイトさんの三人で、この花の繁殖を止める手立てを試しているところです。まだ実験を始めたばかりで……」


そのとき、大公が両手を上げて、俺の言葉を遮る。彼は何度も頷きながら、口を開く。


「その花の繁殖を止める手立ては、聞いてきたのだ」


「え? 聞いてきた、とは?」


「クリミアーナから使者が参ってな。LV5の火魔法で焼き切れば、花は消滅するとぬかしおったのだ」


「LV5の火魔法、ですか?」


「そうじゃ。LV5と言えば、世界中を探しても片手で数えるくらいの人数しか扱える者はおらんじゃろう。クリミアーナは、その魔術師を抱えておるそうな。それで、花を消す代わりに、我が国との交易を求めてきおったのだ。じゃが、儂は、あの国を信用しておらん。おそらく、あの国の狙いは、我が国を属国とすることじゃ。儂は、そうはさせたくはない。そのために、儂自ら貴国に参り、協力を願いに上がった次第なのじゃ」


大公はそこまで言うと、スッと立ち上がり、ペコリと腰を折った。


「頼む。貴国であれば、LV5の火魔法を扱える魔術師の心当りがあるのではないか。で、あれば、その者にあの花を消してもらうように頼んではもらえまいか。無理な願いであること、食糧支援を受けておきながら、このような願いをするのは不躾であることは重々承知している。じゃが、儂は、フォーアル大公国を守りたいのじゃ。民を救いたいのじゃ。それに……あの、クリミアーナの連中に、一泡吹かせたいのじゃ。頼む……。あの花を消してくれれば、我が国は、貴国の属国となってもよいと思っておる」


「いや、お手をお上げください。別に、俺はフォーアル大公国を属国にしようとは考えていません。今まで通り、対等に付き合っていただければ十分です。お話はわかりました。一度、検討してみます。まずは、旅のお疲れもあるでしょうから、こちらでお休みください」


俺はセルロイトに視線を向けて、大公を連れて行くように促した。


彼らが退出するのを見届けて、俺はメイたちを連れて、友好の花が保管されている部屋に転移した。そして、栽培されている花を一つ選ぶと、それに結界を張り、その中で、火魔法LV5を発動させた。


花は一瞬で土と共に消え去った。だが、その直後、シディーが重々しく口を開いた。


「……まだ、残っている気がします。しばらく、結界を解除しないで待ちましょう」


……やっぱり、そんなに簡単に、コトは進まないよね。そんなことを考えながら、俺は大きなため息をついた。

『結界師への転生』コミック三巻の発売が、10/24に決定しました! Amazon等でただ今絶賛予約受付中!!

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[良い点] やっぱ嘘やん、ろくでもないな [一言] 最近はまりかけた漫画を調べたらなろう作家だったので作品を読もうと思ったら、更新が3年前で止まっていました。よくよく調べると最後の活動報告をした日に事…
[一言] 更新有り難う御座います。 ……まぁ、あの娘が係わっていればねぇ?
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