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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十七章 横恋慕編
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第五百三十八話 回数こそ大事

クノゲンが言っていた通り、アガルタ王リノスは翌日、ラッカーの許を訪れた。


勝者が敗軍の将の許にやって来る、という行為は、ラッカーにとっては予想もしない出来事だった。通常であれば、自分を召し出せばいいのだ。わざわざ、軟禁されている部屋にやって来る必要はない。一瞬、アガルタ王は自分に死を与えるために来るのではないか、そんなことを疑ってみたが、それなら尚更、部下にやらせればいいことであって、わざわざ王自ら出向くことなどない。それに彼は、ラッカーの家来たちの前で、お前たちの王の命は保証すると約束しているのだ。単なる口約束で、気が変わって……ということも、考えられないではないが、世情では、この王は約束したことは必ず守ると言われている。おいそれと、自分の命を奪うことはないだろう。


そう考えると、ますますアガルタ王がこの部屋にやって来る意図がわからない。


「いや、すみませんね。お寛ぎのところ」


クノゲンに案内されて入室してきたリノスは、ラッカーの顔を見るなり、そんな挨拶を交わした。勝者が敗者を引見しているのにもかかわらず、なぜ、アガルタ王がこんなへり下ったものの言い方をするのか、ラッカーの頭は混乱していく。


さらに、彼の頭を混乱させたのは、アガルタ王が二人の女性を伴っていたことだ。一見して、二人は女性であるということはわかったが、そのうちの一人は、ローブのような衣装を着て、フードを目深くかぶって顔を隠していた。ローブを着込んでいるとはいえ、小柄で、華奢な体つきであることが見て取れたことから、この者は女性であると判断していた。


一方のもう一人の女性……。これは、目が覚めるほどに美しかった。何とも色気のある眼。そして、豊満な肉体……。まるで、体のラインを強調するかのような薄手の衣装を纏ったその姿に、ラッカーは少なからず欲望を覚えた。


「あ、紹介しますね。こちらは、妻のソレイユです」


「アガルタ王リノスの妻、ソレイユでございます。以後、お見知りおきを」


女性はそう言って、恭しく一礼する。アガルタ王の妃と聞いて、ラッカーは冷静さを取り戻した。サブクリナー王国の王として、威厳ある対応をせねばならない、そう考えて背筋を伸ばしてみたものの、頭を下げたソレイユの、胸の谷間がモロに目に入ってくる。ラッカーは必至で自制しようとしたが、くぎ付けになったその視線を外すことはできなかった。


シドロモドロになりながら、やっとのことで、紋切り型の挨拶を交わす。ラッカーは、アガルタ王が何を言い出すのか、少し緊張した面持ちでその言葉を待っていた。だが、リノスは、この部屋の居心地はどうだ、とか、食事は口に合うか、などと、至極どうでもいいことばかりを聞いてくる。業を煮やしたラッカーは、思い切って、彼の真意を聞こうと口を開いた。


「ところで、本日お見えになられたのは、どのようなご用件であろうか?」


リノスは一瞬、オホンと咳払いをしたが、やがて、隣に控えているソレイユと視線を合わせると、ゆっくりとラッカーに向かって口を開いた。


「実はですね、一つ、相談したいことがあるのです」


リノスは横を向いてスッと頷く。すると、ローブを着込んでいた小柄な女性が、ゆっくりとフードを取り、その顔を見せた。その瞬間、ラッカーは言葉を失った。


……目の前には何と、ヴィエイユが座っていたのだ。


◆ ◆ ◆


ソレイユが、お任せ下さいと言った次の日、彼女は一人のサイリュースを屋敷に連れてきた。


「この者は、リジアと申します。イリサルほどではありませんが、この子も火の精霊と契約していまして、炎を操ることができます」


リジアと呼ばれたサイリュースは、少し照れたような表情を浮かべながら、頭を下げた。


「この子も、そろそろ、子供を授かりたいのです」


「あの……そんなことを、俺に頼まれてもだな……」


「ウフフ、リノス様にお願いしているのではありません。そこはご安心ください」


「そ、そうか。すまない、色々とややこしくなる状況を想像してしまった」


俺は咳払いをして、居住まいを正す。ソレイユはそんな俺を楽しそうに眺めている。からかうんじゃないよ、全く。


「この子も、何人かの殿方と交わって、色々と努力をしているのですが、なかなか思ったような結果がでておりません。そこで、昨日お話しいただいたラッカー様の許に、この子をお仕えさせてはと思ったのです」


「え? 待て。いや、それは止めた方がいいんじゃないかな。ヤツは、変態だぞ?」


「変態……。ウフフ、別に、加虐的な嗜好がある御方ではないのでしょう? 単に性欲が旺盛なだけでございましょう?」


「まあ、それはそうだが、旺盛といっても、俺たちの想像をはるかに超える化け物だぞ? 言ってみれば、マシーンだぞ、あれ?」


「ましーん?」


「いや、その、何だ。まあ、実際のヤツのプレイを見たわけではないから、絶対とは言い切れないが、それでも、考えていることは、かなりのアレだぞ?」


「考えているだけで、実際のところはわからないでしょう? ですが、お話を聞いたところ、ラッカー様はかなりお強くていらっしゃるご様子。で、あれば、そちらの方が、我々としては理想的なのです」


「え? そうなの?」


「回数……」


「え? 何だって?」


リジアと呼ばれた少女が、小さな声で呟く。これも予想していなかった言葉だったので、思わず聞き返してしまった。


「回数を重ねないと結果は出ない。持続力はないに越したことはないけれど、大事なのは回数。一日に十回以上できるのが理想」


「じゅ……十回って……まさしくマシーンじゃないか。そんなことできるヤツ、いるの?」


「まあ、リノス様の口からそんな言葉が出るなんて、意外ですわ」


「待て、ソレイユ。俺はそんな獣じゃないはずだ」


「セイサムを授かったときなど、それは、もう……」


「あーあのときね」


そうだ、呪いがかかっていたのだ。確かに、あのときは性欲にハイパーブーストがかかっていたが、そこまでではなかったはずだ。いや、一晩中だったから、回数としちゃ……。


「う、オホン」


「つまり、我々サイリュースは、それ程、子供を授かる可能性が低い種族なのです」


いつしか、ソレイユの表情が真面目なものになっていた。その話は以前、聞いたことがある。


「そのために我々は、男性を虜にする術を磨いてまいりました。このリジアも、相応の能力を身に付けています。我々サイリュースには、火の精霊と契約できる者はわずかしかおりません。この子の子供には、その能力が受け継がれる可能性が高いのです。それゆえ、一族にとっても、この子の将来は、とても大切なのです」


ソレイユの言葉に、リジアは大きく頷く。単にエロだけではないようだ。


「それに、お相手となる御方の能力も重要です。聞けばラッカー様は、王としては優秀な御方とか。リノス様がそう言われるのであれば、まことなのでしょう。であれば、このリジアのお相手として、問題ございませんわ」


「そうか……。ただ、問題は、ヤツがリジアを気に入るかだが……。サイリュースには優れた術があるが、ヤツも今は、かなり重い恋の病を患っているからな……おいそれと、他の女性に気移りするかな? 拒否された場合は、どうするんだ?」


「その心配はございません」


ソレイユは自信満々に答える。彼女はスッとリジアに視線を向けると、ニコリと微笑んだ。


「よくご覧ください、リノス様。このリジア、誰かに似ていると思いませんか? 髪型と……髪の色を金色に変えれば、あの方に似ていると思いませんか?」


「うん? 髪の色を金色に……?」


俺は目を細めて、じっとリジアを眺める。


「あ、もしかして、意外と、ヴィエイユに似ている?」


俺の言葉に、ソレイユは大きく頷いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] そうきましたかーw 肉欲方面にこじらせてるなら、満たせてやれって確かにサイリュースとしてもWin-Winだけど、これはラッカーの恋心が試されますなw
[一言] 色に狂って戦争しかけてきた馬鹿王を無傷で捕らえて罰すら与えず、 代わりの女の子まであてがってやるリノス ちょっと甘やかし過ぎじゃないですかねw
[一言] 更新有り難う御座います。 ……似た人物をあてがい、本物から意識を逸らす?
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