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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十六章 黒龍編 激闘編
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第五百五話   やらかした

結局、ターチャの躯は森の中に埋葬された。兄であるツネは終始無言でその光景を見守っていた。まあ、それはそうだろう。俺だって自分の兄弟があんな埋葬のされ方をされたら、こんな感じになる。


埋葬自体は、実にあっさりとしたもので、すぐに終わってしまったのだ。これをやらかしたのは、龍王だ。


彼は無造作にターチャの躯を川の中から片手で拾い上げたかと思うと、それをズルズルと森の中に引っ張っていき、もう片方の手を地面に向けたかと思うと、一瞬のうちにそこに大穴をあけた。そのとき、かなり大きい音が鳴り響いてしまい、森の中の鳥や獣たちが脱兎のごとく周囲から逃げ出していった。


そんなことは全く気にも留めず、龍王はターチャの躯をぽいっと穴の中に投げ捨て、残っている躯を淵から拾い上げ、それも穴の中に投げ入れた。そして、両手を躯に向けたかと思うと、真っ赤な火の玉を出して発射して、一瞬のうちに躯を焼き尽くしてしまった。この間、一分もかからなかったのだ。


弟との最後の別れをする暇もなく、まるでゴミを燃やすかのように淡々と葬られてしまったのだ。彼が無言のまま呆然とするのもよくわかる。


「さて、次だ」


全く何事もなかったかのように、龍王が口を開く。コイツには憐憫の情というものはないのだろうか。


そんな俺の気持ちなど知ったことではないと言わんばかりに、彼は腕組みをしながらフワリと浮き上がった。


「我らも……行こう」


まるで絞り出すように、ツネが口を開く。俺は無言で彼の背中に乗った。


「……すまん、ツネ。今度は、うまくやる」


「……」


何とも気まずい雰囲気のまま俺たちは再び、龍王の後を追いかけた。


◆ ◆ ◆


「うおっ!」


突然龍王が上空で止まった。それに釣られてツネも急停止した為に、俺はあやうく彼の背中から投げ出されそうになる。


必死で背中の角に捕まりながら、一体何事だと龍王に視線を向けるが、彼は何やらキョロキョロと周囲を見廻している。まさか……迷っているのか?


「まよっているわけではない」


龍王は済ました顔をしているが、言葉のイントネーションがかなりおかしい。明らかに動揺しているじゃないか。コイツは心の動きを隠すのが実にヘタクソだ。


「ちなみに、どこに向かおうとしていたんだ?」


「ショースのところだ」


「ロイスじゃないだろうなということは薄々わかっていたが……。俺が聞きたいのは、どこのどんな場所で、どんなところに隠れているかという点だ。何か特徴はないのか?」


「山の中だ」


見れば眼下に山々が連なっている。あたり一面森だ。俺は心を落ち着けながら、言葉を続ける。


「どんな山だ?」


「森に囲まれているのだ」


「そのまんまやないかい!」


マジで説明下手なのか、俺をおちょくっているのか、ちょっと判断がつかない。後者なら全力でボコるところなのだが、この振る舞いはどうやらマジで道に迷ってしまっているらしい。


「……見つけたぞ」


突然ツネの声が聞こえる。龍王が驚いた表情を浮かべている。え? マジで見つけはったんですか、兄さん……。彼の表情からはそんな感情がうかがえる。だがツネは目を見開いて驚いている龍王を放っておいて、ゆっくりと下降していく。


……深い谷だった。いったい、どのくらいの深さがあるのかがわからなかったが、突然、ツネの体が揺れて衝撃を覚える。そこは、大小さまざまな石がゴロゴロしていて、とても足場の悪そうなところだった。もともと、川でも流れていたのだろうか?


「フハハ、よく見つけたな」


龍王が他人事のように呟きながら降りてきた。全く世話の焼けるヤツだ。俺は地上に降り、腰に差しているホーリーソードを引き抜く。そして、それに魔力を込め、まるで円を描くようにしてゆっくりと剣を振るう。


「偃月殺法……」


「何?」


「龍王、お主は儂の剣では斬れぬと思ぅているであろう。しかし、儂は、斬れる……」


「……」


眠〇四郎のモノマネ、結構上手いと思うんだけれどな。……市川〇蔵、知らんよね? いや、知らなきゃいいんだ。これができただけで、大満足だ。やっぱり、わかんないか。……何をキョトンとしているんだ? ついて来いよ? 置いていくぞ?


「何をしているのだ?」


龍王が怪訝な表情で尋ねてくる。仕方がない。長くなるが、眠〇四郎こと市川〇蔵と偃月殺法について説明してやるか。そう思いながら視線を向けると、龍王が俺を睨みながら、あらぬ方向を指さしている。


「黒龍がいるのは、あそこだ」


「早く言えよ」


龍王が指さしている方向に向き直り、改めてホーリーソードに魔力を通して、偃月殺法の構えを取る。すると、一匹の黒龍の姿が現れた。


……少し小ぶりなドラゴンだった。俺たちが認識できるのか、顔はこちらを向いている。よくみると、そいつは震えていた。


「ショース。助けに来た。もう大丈夫だ」


ツネが話しかけるが、ショースは微動だにしない。その瞳は意外と美しく、一種の純粋さを感じさせるものだった。俺は剣を構えながら、ゆっくりと黒龍に近づく。


「あっ、待て!」


気が付くと、ショースの姿がどんどんと透けていく。まさか、ここから転移しようとしているのか?


「待て、ショース! 話を聞け!」


ツネが首をぐるりと廻しながら叫んでいる。俺は咄嗟に剣を振るう。


「ベライン・ボーグ!」


俺が剣を振るったと同時に、龍王の声が聞こえる。その瞬間、ショースの体がグニャグニャに曲がっていくのが見えた。そして、まるで風船がはじけるように、その体が消え失せてしまった。


「……え? 何だ?」


思わず呆気にとられてしまう。一体、何がどうなったのかが把握できない。それはツネも同様で、彼は全く微動だにせず、一点を見据えたままだ。俺はゆっくりと龍王に向き直る。


「おい、一体、何がどうなったんだ?」


「……」


「目逸らしてんじゃねぇよ。こっち向けよ、オイ」


「散ってしまったな」


龍王がそっぽを向きながら、小さな声で呟く。


「散った……って……お前……」


「手加減したつもりだったのだがな……」


「てことは、まさか……」


「ショース……」


ツネの、何とも形容しがたい嘆息が漏れる。まさか、自分の弟が目の前で倒されるとは、さすがの彼も思っていなかったのだろう。彼の心中は察して余りある。


「龍王、お前、どうするんだよ」


「どうする? 何をだ」


「何をだじゃねぇよ。別に殺さなくたっていいじゃないか! 何で殺した!」


「貴様が悪いのだ」


「何、俺?」


「貴様がショースの空間を切り裂くから、我のベライン・ボーグがまともに当たってしまったのだ。かわいそうに、怯えているにもかかわらず……だ」


「龍王、お前、自分が何を言っているのか、わかっているのか?」


「何を言うか!」


龍王は尻尾を勢いよく地面に叩きつける。そして、俺とツネの二人に交互に視線を向けながら、堂々と言い放った。


「あれしかなかったのだ。あれが、一番の、最善の策だったのだ」


「お前なぁ……」


「考えてもみよ。ショースは転移しようとしていた。一刻も早くあの空間を破壊する必要があった。と、すれば、魔力を強く籠めねばならぬだろう。とはいえまさか、貴様の剣があそこまで早く空間を切り裂くとは我も思わなんだ。我の予想の上をいくとは……やるではないか」


龍王の乾いた笑いがこだまする。俺は舌打ちをしながら、隣で茫然自失となっているツネに小声で話しかける。


「龍王のバカ、一発、ぶん殴っておこうか?」


「……」


「……近いうちに、娘のアリリアに頼んで、龍王にはキツイお仕置きを執行しておくよ」


俺の言葉に、ツネは小さく頷いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、なかなかアレな展開ですが、リノスがふざけるのは二人が結界によって無事が確認出来ているから余裕がまだあるということでしょうか。 一話単体で見ればアレですが、きっと初期の“例のアレ…
[一言] ツネ、かわいそすぎ…
[一言] カオスすぎてそのままうっかりリコまで死にそうで怖い
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