表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十六章 黒龍編 激闘編
503/1178

第五百三話   迎えに・・・

「それじゃあ、早速、出かけるか」


ダイニングに戻ってきたリノスは、誰に言うともなく、そう呟いた。彼は周囲を見回していたが、やがてアリリアに視線を向ける。


「アリリア、ペーリスお姉ちゃんは?」


「迎えに行ったよ」


「迎え?」


アリリアの話では、ペーリスはドワーフ公国に預けてあるイデアとピアトリスを迎えに行ったらしい。それを聞いてリノスは思わず嘆息を漏らした。本来ならば俺が行かねばならないのだが、リコとソレイユを一刻も早く取り戻さねばという思いが先立ってしまった。これは、大いに反省するべきことだ……。そんなことを考えながら、彼は大きく深呼吸をする。


「じゃあアリリア。イデアとピアが帰ってきたら、ペーリスお姉ちゃんと一緒に、弟と妹の面倒を見てやってくれな。それに、お母さんとシディー母さんは眠っているから、あまり騒がないように、な」


彼の言葉に、アリリアは小さく頷く。それを見て、満足そうに頷いたリノスは、龍王に視線を向ける。


「すまないが龍王、黒龍たちの許に案内してくれないか」


「いいだろう。付いて来るがいい。貴様のスキルで、我の飛行に付いてこられるか?」


「いや、俺は空を飛べないが……」


「貴様……空も飛べぬ分際で、我と対等に話をしておったのか! 無礼にもほどがあるぞ!」


「龍王……言いたいことは百を超えるが、今は言わないでおいてやる。イリモに乗って行くから、案内しろ」


「イリモ……あのユニコーンペガサスか。あのような駄馬では我の速度には付いては来られぬ」


「お前なぁ。優しさってのはないのか? それに、うちのイリモはかなり優秀だ。お前なんかよりずっとな」


「我をあのような駄馬と比べるのか……。いくら何でも……」


「アリリア」


リノスは龍王の言葉を遮ったかと思うと、アリリアの居る方向に向き直る。そして、両手を広げながら呆れたような表情で彼女に話しかける。


「おバカなりゅーおーくんに、とうたんに優しくしなさいって言ってやってくれ」


「りゅーおーくん、優しくしないと、ダメよ」


「そうだ、優しくせねば、ならん」


龍王は腕組みをしながら何度も頷いている。そんな彼をリノスは怪訝な表情で眺めている。


「私が行こう」


突然、口を開いたのは、黒龍のツネだ。彼はスッと一歩踏み出すと、龍王とリノスの二人に交互に視線を向けながら口を開いた。


「私が乗せて行こう」


「待て。そなたがここを動くことは、許さん」


龍王が言下に却下する。だが、ツネは不敵な笑みを浮かべながら反論する。


「龍王ともあろう者が、私が弟たちに寝返るのが怖いのか?」


「何?」


「龍王、貴様は、私が弟たちと結託して戦いを挑んでくる……と懸念しているのだろう。それは杞憂だ。ただ私は、弟たちを救いたいのだ」


「救う、だと?」


「ああ。特にターチャとショースの二人の弟は救いたいのだ。彼らはただ、シャリオを取り戻したかっただけなのだ。その思いをロイスに利用されたに過ぎない。おそらく二人は、何も知らされぬまま、ロイスの作った空間に閉じ込められているのだろう。そんな弟たちを救い出し、事実を伝え、そして……元の生活に還らせてやりたいのだ」


「それは、許さん」


龍王は腕組みをしながら、冷たい視線をツネに投げる。彼は少し俯くと、ゆっくりと語膝をつき、その視線をアリリアに向けた。


「龍王と心を合わせし姫よ。我が願い、どうか聞き届けていただきたい。我が弟たちの命、奪わないでいただきたい」


そう言って彼は頭を下げる。その様子を隣にいたシャリオは、見ていられないとばかりに、スッと目を背けた。


「りゅーおーくん、許してあげよ?」


アリリアが屈託のない声で口を開く。龍王は一切表情を変えないまま、毅然とした態度で口を開いた。


「そうだ。許そう」


「どっちやねん」


思わずリノスが呟いたが、龍王は全く気にしていない素振りですましている。一方、ツネは片膝をついたままリノスに視線を向ける。


「アガルタ王、私の背に乗られるがいい」


リノスは無言のまましばらく、ツネの眼をじっと見つめ続けた。このときすでに彼は、鑑定スキルを発動していた。


……ツネの心の中は、一点の曇りもなかった。ただひたすらに、弟たちを助けたいという純粋な気持ちに溢れていた。


「……わかった。お前にかけている結界を解除しよう。ただし」


リノスは一旦言葉を切り、一瞬だけツネから視線を逸らせたが、再び彼に視線を戻す。


「ロイスの命は、奪うことになるぞ」


「承知している。もともとこの騒動は、ロイスが起こしたものだ。ヤツは、命でもって償うほかはないと考えている」


「いい覚悟だ」


ツネの体が紫色に光る。彼は不思議そうに周囲を見回す。結界が解除されたかどうかが全くわからなかったのだ。通常、敵対心が込められた結界を張られると多少の息苦しさや居心地の悪さを感じるもので、それが解除された瞬間は、体が軽くなったような感覚を覚えるが、今回は全くそういうことはなかったのだ。そんな彼の疑問を察してか、リノスが声をかける。


「ちゃんと結界は解除した。ウソだと思うなら、外に出て人化を解除してみるといい」


その言葉にツネは頷き、ゆっくりとダイニングの勝手口に向かう。彼が外に出たとき、子供たちの手を引いてこちらに向かって来る女性が目に入った。彼女はツネの姿を見ると、一瞬体を震わせたが、ツネがゆっくりと頭を下げると、子供たちを伴っていそいそと屋敷に入っていった。


イデアたちを連れたペーリスがダイニングに入ると、リノスが帯剣しているところだった。彼はペーリスたちに気が付くと、ニコリと優しげな笑みを浮かべた。


「ペーリス、ありがとうな。お前には一度、ちゃんとお礼をしなきゃいけないな」


そう言うとリノスは、ゆっくりとその場にしゃがみ、ペーリスの傍にいた息子のイデアに声をかける。


「とうたんはこれから、ママとマミーを迎えに行ってくる。イデア、とうたんが留守の間、この家に男の子はイデア一人になる。お姉ちゃんや妹のこと、守ってくれよ」


ママを迎えに行くと聞いた途端、イデアの表情がパッと明るくなった。彼は父に向かって大きく頷く。その様子をリノスは満足げに眺めていたが、やがて、アリリアとシャリオに視線を向ける。


「すまないけれど、子供たちのことを、頼む」


「では、私はラマロン皇国に……。マトちゃんとエリルちゃんを……」


「すまないな、ペーリス。そうしてくれ」


リノスは優しげな笑みを浮かべていたが、やがて真剣な表情となり、龍王に視線を移して、ゆっくりと頷いた。


「では、行ってくる」


「早く帰って来てね、お父さん! りゅーおーくん!」


アリリアの声が、二人の背中越しに聞こえてきた。龍王は振り返って力強く頷き、すぐにリノスの後を追ってダイニングを出ていった。


庭に出ると、そこには巨大な黒龍が控えていた。グルグルと首を廻しながら、まるでストレッチをしているように体を動かしている。


「さあ、行こうか。龍王、案内を頼む」


「フハハハハ。我の速度についてこられるか? 手加減はせんぞ?」


「心配ない。地の果てまで追いかけてみせる」


ツネの言葉に、龍王はニヤリと笑みを浮かべながら、ゆっくりと浮き上がった。


「アガルタ王、背中から落ちぬようにな」


「わかっている」


そんな短い会話を交わしながら、ツネの体もゆっくりと浮き上がっていく。


「まずはキオイ山に向かう」


そう言うや否や、龍王がとんでもないスピードで飛行していく。その様子にツネは少し呆れた表情を浮かべたが、やがてぐるりと首を廻すと、彼もまた、とんでもないスピードで龍王の後を追いかけて行った。


……その頃、リノスの屋敷では、不眠不休でホーリーソードを鍛え上げたコンシディーが深い眠りについていた。そんな彼女が突然、小さな声で物騒な言葉を呟いた。


「ううん……。ダメ、リノス様……。全員……死んじゃう……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 最後の最後に不吉な台詞が!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ