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タコの捕食譚 ~喰らった獲物の力を八本の足に宿して~  作者: SN
第一海域・岩礁海

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7/16

7本目【タコ×成魚】


タコは岩場の奥へ進んでいた。


道中で見つけた小魚やカニ、エビなどを何匹か食べた。

そのたびに足の奥にあるものは少しずつ濃くなり、変わった足もほんの少しずつ強くなっていった。


タコは食べられそうなものを探しながら進む。

岩の隙間を覗き、時々身体の色を変えて周囲へ紛れた。


しばらくすると、少し先を一匹の魚が泳いでいた。


太い。


タコは動きを止めた。


見覚えがある。

以前、捕まえたのに押さえ切れず、逃げられた魚だった。


太身魚だ。


太身小魚よりも身体が大きく、分厚い。

太い尾をゆっくりと振りながら、岩場の間を泳いでいる。


タコは太くなった足を動かした。

以前より少し強くなっている。


それから、黒く硬質化した棘の足を動かす。

前にあの魚と戦った時には、まだなかった足だ。


タコはもう一度、太身魚を見た。


食べたい。


岩へ身体を寄せ、周囲と同じ色に変える。

太身魚はこちらに気付かず、少しずつ近づいてきた。


タコはじっと待った。


魚が足の届くところまで来た瞬間、細長い足を一気に伸ばす。

吸盤が太身魚の身体へ張り付き、そのまま巻き付いた。


太身魚が大きく身体を振った。

タコはすぐに二本目、三本目の足を伸ばし、太い足まで絡ませる。


太い尾が水を大きく掻き、タコの身体が強く引っ張られた。


やはり強い。


以前と同じように、魚が激しく身体を捻る。

何本もの足へ大きな力がかかり、タコの身体も振り回された。


それでも足は離れなかった。


タコは太い足へ力を込め、魚の身体をさらに強く締め付ける。

他の足も鱗へ吸盤を張り付け、逃げられないように絡み付いた。


しかし、太身魚は止まらなかった。


尾を振るたびにタコの身体が引きずられ、岩へ張り付けた吸盤も少しずつ剥がされていく。


タコは何度も岩へ足を伸ばし、身体を支え直した。

魚を押さえ込もうとしても、強い力で振り回されてしまう。


このままでは、また逃げられる。


タコは棘の生えた足を持ち上げた。

そして、身体を大きく振る太身魚の横腹へ叩き付ける。


短く鋭い棘が鱗へ食い込んだ。


太身魚の身体が大きく跳ねる。

暴れる力が一瞬だけ強まり、タコも岩から引き剥がされそうになった。


それでも足は離さなかった。


タコは太い足で締め付けながら、もう一度棘の足を横腹へ叩き付けた。


何枚かの鱗が剥がれ、その下から赤いものが滲む。


太身魚が激しく身体を捻った。

タコは吸盤を張り付けたまま耐え、さらに棘の足を叩き付ける。

何度も棘が食い込み、魚の横腹に傷が増えていく。


やがて、太身魚の動きが少しずつ鈍くなった。

大きく振られていた尾の勢いが弱まり、身体を捻る力も落ちていく。


タコは太い足へさらに力を込めた。

他の足も巻き付け、岩へ吸盤を張り付けながら魚を押さえ込む。


今度は、振りほどかれなかった。

太身魚は何度か身体を揺らしたが、次第に動かなくなっていく。


タコはそのまま押さえ続けた。

しばらく待っても動かないことを確かめ、柔らかそうな場所へ口を寄せる。


齧る。


その瞬間、何かが太身魚の身体から抜け出し、タコの中へ流れ込んできた。


来た。


タコはそのまま次の一口を齧った。


美味い。


太身小魚よりも肉が多い。

噛み応えもあり、味も濃かった。


タコは夢中になって食べ続けた。


以前は捕まえても逃げられた魚。

あんなに強く身体を振っていたのに、今は動かない。


その魚を、食べている。


美味い。


タコはさらに齧り付き、硬い部分を避けながら肉を食べていった。


やがて、食べられるところがほとんどなくなる。

タコは魚から身体を離した。


そこで、また一本の足が変わっていることに気付いた。


太身小魚を食べて変わった足とは別の一本。

その足が、以前の太い足よりもさらに太くなっていた。

吸盤の周りまで厚みが増し、動かすだけで強い力が入る。


タコはその足をゆっくりと曲げた。


重い。

けれど、強い。


近くにあった大きめの石へ巻き付け、そのまま引っ張ってみる。

石が簡単に動いた。


タコは別の石にも足を巻き付けた。

先ほどより大きな石だったが、力を込めるとゆっくりと引き寄せることができた。


強い。


タコは以前からある太い足も動かした。

二本とも力は強いが、新しい足の方がさらに太く、重かった。


タコは何度か二本の足を動かした。


似ている。

けれど、こっちの方が強い。


新しく変わった足を身体へ引き寄せ、その奥へ意識を向けた。


いる。

さっき入ってきたものが、そこに収まっている。


タコは舐めるように触れた。

味が広がる。


濃い。


太身小魚の味に似ている。

けれど、もっと重く、身体の奥へ深く沈み込んでいく。

濃い味がゆっくりと広がり、その後もずしりと残った。


美味い。


タコはもう一度触れた。

太身小魚とは違う、さらに力強い味が広がる。


やっぱり美味い。

タコはしばらくその味を楽しんだ。


前に逃げられた魚。

今度は食べられた。


タコは二本の太い足をゆっくりと動かした。

どちらも前より強くなっている。


タコはそのまま岩場を進んでいった。

しばらくすると、岩の隙間を一匹の魚が素早く横切った。


タコは動きを止めた。


細長い身体。

以前食べた細身小魚に似ている。


けれど、もっと大きい。

そして、もっと速い。


細身魚だった。


魚は岩と岩の隙間を縫うように泳ぎ、一瞬で遠ざかっていく。


速い。


タコは目で追った。

細長い足を伸ばすが、魚はすでに遠くへ離れていた。


細身魚は少し先の岩陰へ入り、そのまま姿が見えなくなった。


タコはゆっくりと近づいた。

岩へ身体を寄せ、周囲と同じ色に変える。


そのままじっと待った。


しばらくすると、細身魚が別の隙間から出てきた。

まだタコには気付いていない。


タコは身体を低くした。

細長い足を少し持ち上げ、そのまま魚が近づくのを待つ。


魚は岩の近くを素早く泳いでいる。

その速さでは、足を伸ばすだけでは捕まえられそうにない。


タコはエビを食べて変わった足を岩へ張り付けた。

細身魚が近づいた瞬間、その足を一気に伸ばす。


タコの身体が勢いよく飛び出した。


細身魚がこちらに気付き、すぐに身を翻す。


タコは飛び出した勢いのまま、細長い足を伸ばした。

足が鋭く水を切り、逃げる魚との距離を縮めていく。


細身魚は近くの岩の隙間へ逃げ込もうとした。

しかし、その前に伸びた足の吸盤が尾へ触れた。


タコはすぐに足を巻き付けた。


細身魚が激しく身体を振り、細長い足が引っ張られる。

タコは他の足を近くの岩へ張り付けて身体を支え、そのまま魚を引き寄せた。


続けて二本目、三本目の足も伸ばす。

何本もの吸盤が魚の身体へ張り付き、逃げようとする細身魚を包み込んだ。


魚は何度も身体を捻った。


動きは速いが、先ほどの太身魚ほど力は強くない。

タコは太い足を一本巻き付け、そのまま締め付ける。


細身魚が身体を振った。

しかし、太い足は離れない。


タコはさらに何本もの足を絡ませた。

魚の動きが少しずつ弱くなり、やがて身体から力が抜けていく。


それでもすぐには離さなかった。

しばらく押さえ続け、動かないことを確かめてから口を寄せる。


柔らかな部分へ齧り付いた。

何かが魚の身体から抜け出し、そのままタコの中へ流れ込んでくる。


タコはそのまま次の一口を齧った。


美味い。


細身小魚に似ている。

けれど、肉は多く、味も少し濃い。


タコは柔らかな部分を探しながら、夢中で食べ続けた。

やがて、食べられるところがほとんどなくなる。


タコは魚から身体を離した。

そこで、また一本の足が変わっていることに気付いた。


残っていた普通の足の一本。

その足が、細身小魚を食べて変わった足に似た形になっていた。


以前よりも長く、しなやかになっている。

太さはそれほど変わらないが、少し動かしただけでも水の中を滑るように伸びた。


タコはその足を持ち上げ、少し離れた岩へ向けた。

足が一気に伸び、吸盤が岩へ張り付く。


速い。


今度はさらに遠くの岩へ伸ばしてみる。

足が素早く伸び、こちらにも届いた。


タコは以前からある細長い足も動かしてみた。


二本とも速く伸びる。

けれど、新しく変わった足の方が遠くまで届き、動きも速かった。


長く、速い。


タコは何度か足を伸ばした。

太い足ほど力は入らないが、離れた岩へ簡単に届く。


気に入った。


タコはその足の奥へ意識を向けた。


いる。

さっき入ってきたものが、ここに収まっている。


タコは舐めるように触れた。


軽い。


細身小魚の味に似ている。

けれど、もっと鋭く、細く長く伸びていくような感覚がある。


舐めた瞬間に味がすっと広がり、そのまま遠くへ伸びていく。

後に残る味も細く、長く続いていた。


美味い。


タコはもう一度触れた。

軽く鋭い味が広がり、その後も細い余韻が残る。


やっぱり美味い。

タコはしばらくその味を楽しんだ。


それから、自分の足を見渡した。


速く伸びる足。

強い足。

自分を速く動かす足。

硬い足。

棘の足。

もっと強い足。

もっと速く、遠くまで伸びる足。


七本。

全部違う。


タコは一本だけ残っている普通の足を見た。


まだ、何も変わっていない。

けれど、他の七本は全部変わった。


この足も、そのうち変わる。

どんなものになるんだろう。


タコは七本の変わった足をゆっくりと動かした。


前より強い。

前より速い。


以前は逃げられた魚も、今は食べられた。


タコは岩場の奥へ目を向けた。


もっと食べたい。

もっと美味いものも、きっといる。


タコは身体を岩肌の色へ変えながら、さらに奥へ進んでいった。


●太身魚

特徴:

 太身小魚の成体。身体がより大きく、筋力も強い

獲得能力:

 足がさらに太くなり、筋力・締め付け・引っ張る力が大きく上昇


●細身魚

特徴:

 細身小魚の成体。より素早く、岩の隙間を泳ぐ

獲得能力:

 足がさらに長く、しなやかになる。伸縮距離と伸縮速度が大きく上昇


【現在の八腕】

 一ノ足:細身小魚

 二ノ足:太身小魚

 三ノ足:エビ

 四ノ足:カニ

 五ノ足:ウニ

 六ノ足:太身魚

 七ノ足:細身魚

 八ノ足:

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