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タコの捕食譚 ~喰らった獲物の力を八本の足に宿して~  作者: SN
第一海域・岩礁海

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6/16

6本目【タコ×ウニ】


タコは岩場を進んでいた。


細身小魚と太身小魚をもう一度食べたことで、二本の足は少しだけ良くなった。

速く伸びる足は前より遠くへ届き、太い足には前より力が入る。


足の奥にあるものも、前より美味くなった。


また食べたい。


タコは岩の隙間を覗きながら、ゆっくりと進んでいった。


しばらくすると、少し先の岩に見慣れないものが張り付いていた。

丸く膨らんだ硬そうな殻。

その下から、柔らかそうな部分が僅かに覗いている。


タコは近づいた。

食べられそう。


タコは殻へ足を伸ばし、吸盤を張り付けた。

そのまま岩から剥がそうと引っ張る。


しかし、殻は動かなかった。


タコは太くなった足を伸ばし、殻へ巻き付けた。

他の足を周囲の岩へ張り付け、身体を固定する。


力を込めて引く。


岩貝はびくともしない。

さらに太い足へ力を込めると、タコの身体だけが僅かに伸びた。


タコは何本もの足を殻へ絡ませ、身体ごと後ろへ引いた。

それでも剥がれない。


今度は殻の端へ足先を押し込もうとする。

しかし、岩との間にはほとんど隙間がなく、柔らかな足先も入らなかった。


タコはしばらく引っ張り続けたが、岩貝は動かなかった。


そこで、今度は殻へ口を寄せた。


齧る。


硬い。


場所を変えてもう一度齧ったが、やはり歯が立たない。

柔らかな部分を食べようとしても、岩へ張り付いた下側には口が届かなかった。


タコは再び太い足を巻き付け、力いっぱい引っ張った。


それでも動かない。


タコはようやく足を離した。

岩貝は何事もなかったように、岩へ張り付いたままだった。


食べたい。


タコはしばらく岩貝を見つめていた。

もう一度太い足を伸ばしかけたが、やがて身体を離す。


そのまま岩場の奥へ進んでいった。


途中、小さな魚が岩陰へ逃げ込んでいった。

別の隙間では、エビが砂の中へ身体を隠している。


タコはそちらへ目を向けたが、追いかけなかった。


さらに進んだところで、岩の窪みに黒いものが見えた。


丸い身体。

その周囲から、細長く尖ったものが何本も伸びている。


タコは動きを止め、ゆっくりと近づいた。


黒い身体を覆う、長く鋭い棘。

岩の窪みに収まったまま、ほとんど動いていない。


ウニだった。


タコは一本の足を伸ばした。

しかし、吸盤が触れるよりも先に、足先が棘へ当たった。


痛い。


タコはすぐに足を引っ込めた。


ウニは動かない。

タコは少し離れたところから周囲を回り、別の方向から足を伸ばしてみた。

けれど、どこから近づいても棘が邪魔になる。


タコは一度足を引っ込めた。

それから、カニを食べて硬くなった足を伸ばす。


棘の先端が硬い甲殻へ当たった。

そのまま少し押し付けてみる。


痛くない。


タコはさらに力を込めた。

棘が甲殻の表面を滑る。


タコは硬い足を持ち上げ、ウニへ振り下ろした。


──ゴツッ。


硬い足が棘へぶつかり、何本かが折れた。

タコは動きを止めた。


折れた。


もう一度、硬い足を振り下ろす。

さらに棘が折れ、岩の上へ散っていった。


タコはそのまま硬い足を何度も叩き付けた。

棘が甲殻へ当たっても痛みはなく、叩くたびに少しずつ折れていく。


やがて、棘の少なくなった場所から硬い殻が見えてきた。


タコはそこへ硬い足を押し付けた。

殻は動かない。


今度は足を持ち上げ、勢いよく叩き付ける。

それでも割れなかった。


タコはもう一度同じ場所を叩いた。

殻に小さなひびが入った。


さらに何度か叩くと、ひびが広がり、やがて殻の一部が割れた。

内側から柔らかな部分が覗く。


タコは太い足を伸ばし、ウニの身体へ巻き付けた。

他の足も棘の折れた場所を選んで伸ばし、岩へ押さえ付ける。


そして、割れたところへ口を寄せた。


齧る。


柔らかな中身が口へ入った。

ウニの身体が僅かに震える。


タコはさらに齧り付いた。

その一口でウニの動きが止まり、何かがタコの中へ流れ込んできた。


来た。


タコはそのまま次の一口を齧った。


美味い。


魚とも違う。

エビとも、カニとも違う、少し変わった味だった。


タコは割れた殻を広げながら、中身を食べていった。

棘が邪魔になるところでは硬い足を使い、折りながら少しずつ食べ進める。


やがて、食べられるところがほとんどなくなった。


タコは身体を離した。

そこで、また一本の足が変わっていることに気付いた。


その足だけ、全体が少し黒くなっている。

柔らかかった皮膚も硬く締まり、表面には短い突起がいくつも浮かんでいた。


タコはじっと見つめた。


棘だ。


ウニほど長くはない。

けれど、黒くなった足の表面から、短く鋭い棘が何本も生えている。


タコはその足を動かした。

棘も一緒に動く。


近くの岩へ軽く押し付けると、硬い棘が岩肌へ引っかかった。


硬い。


タコが足を動かした時、棘の一本が隣の足へ触れた。


痛い。


タコはすぐに二本の足を離した。

棘の触れた場所では、皮膚がほんの少し裂けている。


タコは棘の生えた足を見つめた。


触れると痛い。


今度は他の足へ触れないように、ゆっくりと動かしてみた。

棘が岩へ当たると、表面に小さな傷が残る。


硬い。

尖っている。


タコはその足を何度か動かした。

他の足へ触れそうになるたびに、少し離す。


扱いづらい。

でも、気に入った。


タコは棘の足を身体へ引き寄せ、その奥にあるものへ意識を向けた。


いる。

さっき入ってきたものが、そこに収まっている。


タコは舐めるように触れた。

味が広がる。


濃い。


カニの重い味とは違う。

まろやかな味が身体の奥へゆっくりと広がり、その中に細かな刺激がいくつも混じっていた。


ちくちくする。


滑らかな味の中で、小さな棘が転がるような感覚。

けれど、身体に刺さる棘とは違い、痛みはない。


僅かな甘さと、今までにない独特の癖も残る。


美味い。


タコはもう一度触れた。

まろやかな味の中に、ちくちくとした刺激が広がっていく。


やっぱり美味い。


タコは何度もその味を楽しんだ。

今までのどれとも違う、不思議な味だった。


もっと味わいたい。


タコはしばらく足の奥にあるものへ触れ続け、やがて自分の足へ目を向けた。


速く伸びる足。

強い足。

自分を速く動かす足。

硬い足。


そして、棘の生えた足。


五本。

全部違う。


タコは棘の足をゆっくりと動かした。

近くの岩へ当てると、短い棘が硬い表面へ食い込む。


硬い。

尖っている。


タコはその足をもう一度動かした。

そこで、先ほどの岩貝を思い出す。


硬い殻。

岩へ張り付いて、何度引っ張っても剥がれなかったもの。


タコは棘の足を見た。


刺すことはできそう。

けれど、あの殻は硬い。

岩から剥がすことはできそうにない。


まだ食べられない。


タコはしばらく岩貝がいた方を見ていた。


食べたい。


タコは棘の足を他の足から少し離しながら、岩場の奥へ進んでいった。


⚫︎ウニ

特徴:

 全身を硬い棘に覆われている。触れると痛い

獲得能力:

 足が黒く硬化し、その表面に短い硬質棘がいくつも生える


【現在の八腕】

 一ノ足:細身小魚

 二ノ足:太身小魚

 三ノ足:エビ

 四ノ足:カニ

 五ノ足:ウニ

 六ノ足:

 七ノ足:

 八ノ足:

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