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タコの捕食譚 ~喰らった獲物の力を八本の足に宿して~  作者: SN
第一海域・岩礁海

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4/19

4本目【タコ×カニ】


カニを探して、岩場を進む。


タコは身体を岩肌の色へ変え、ゆっくりと這っていた。

岩の隙間を覗き、少し進んでは止まって周囲を見る。


別の生き物は何匹か見つけた。

小さな魚。

岩に張り付く貝。

砂の中へ潜る何か。


けれど、今はカニがいい。


硬い甲羅。

痛い鋏。


前は足を切られた。


タコは太くなった足を岩へ巻き付け、身体を引き寄せた。

続けて、エビを食べて変わった足を岩へ押し付ける。


身体が勢いよく前へ飛び出した。


まだ上手く動かせないが、前よりもずっと速い。

タコは近くの岩へ吸盤を張り付け、身体を止めた。


今度こそ、食べたい。


タコは再び岩の影へ身体を紛れ込ませ、ゆっくりと進んでいった。

しばらくすると、岩と岩の間に横へ動くものが見えた。

タコはすぐに動きを止める。


カニだ。


前に逃げられたものと同じくらいの大きさ。

硬そうな甲羅に、二本の鋏。


タコは岩肌へ身体を寄せ、色を合わせた。


カニはこちらに気付いていない。

横向きに歩きながら、鋏で砂や小石をかき分けて餌を探している。


見つけた。


タコはじっと待った。

カニが近づいてくると、細長く変わった足を僅かに持ち上げる。


前に挟まれた足が、まだ少し気になった。


あの鋏は嫌だ。


カニが足の届くところまで来た瞬間、細長い足を一気に伸ばした。

吸盤が甲羅へ張り付き、カニが驚いたように脚を動かす。


二本の鋏が持ち上がった。


タコは細長い足を縮め、身体を引き寄せる。

カニが鋏を大きく開いた瞬間、エビの足を岩へ押し付けた。


身体が勢いよく横へ飛ぶ。


直後、鋏が勢いよく閉じた。

しかし、そこにはもうタコの身体がなかった。


タコは甲羅へ張り付けた足を縮め、カニの後ろへ回り込む。

そのまま何本もの足を甲羅へ絡ませた。


カニが身体を激しく振る。

二本の鋏もタコへ向けられた。


タコは太くなった足を伸ばし、片方の鋏へ巻き付けた。

開いていた鋏を強い力で閉じさせ、そのまま甲羅へ押し付ける。


もう片方にも二本の足を絡ませた。

鋏を閉じたまま押さえ込み、さらに付け根まで巻き付ける。


カニが激しく暴れた。


二本の鋏を開こうとし、タコの足へ向けようとする。

しかし、太い足が鋏を押さえ、他の足も付け根へしっかり巻き付いていた。


鋏が動かない。


タコは残りの足を甲羅や脚へ絡ませ、さらに強く押さえ込んだ。

カニは身体を振って逃れようとしたが、何本もの吸盤が張り付き、思うように動けない。


タコはそのまま締め付けた。


カニの脚が激しく動く。

それでも足を離さず、さらに力を込める。


やがて、抵抗が少しずつ弱くなっていった。

タコは甲羅へ身体を寄せ、硬い表面へ噛み付いた。


硬い。


もう一度齧ってみたが、歯が立たなかった。


タコは身体を少しずらし、今度は脚の付け根へ噛み付く。

先ほどよりは柔らかいが、まだ硬い。


別の脚の付け根へも齧り付いた。

それでも、ほとんど肉を食べられない。


タコは何本もの足でカニを押さえたまま、身体を下側へ回り込ませた。


そこで、口に触れる感触が変わった。


甲羅の下。

腹側の薄い部分だった。


タコはそこへ強く噛み付いた。


柔らかい。


カニの身体が大きく跳ねた。

二本の鋏が激しく動こうとするが、タコの足に押さえられている。


タコはさらに腹側へ齧り付いた。

今度は柔らかな肉が口へ入る。


食べられる。


タコは何本もの足でカニを押さえ込み、そのまま腹側へ何度も噛み付いた。

暴れていた脚の動きが少しずつ弱くなり、やがて身体から力が抜けていく。


それでもタコは離さなかった。


さらに齧り付き、しばらく押さえ続ける。

カニがまったく動かなくなったことを確かめ、もう一度腹側へ口を押し付けた。


齧る。


その瞬間、何かがカニの身体から抜け出し、タコの中へ流れ込んできた。


あれだ。


タコは僅かに身体の中へ意識を向けたが、すぐに目の前のカニへ戻した。


もう一度齧り付く。

柔らかな腹側から食べ進み、硬い甲羅の内側にある肉を少しずつ食べていく。


魚ともエビとも違う。

硬い部分が多く、少し食べにくい。


けれど、美味い。


タコは甲羅の隙間を探しながら、夢中になって食べ続けた。

前は食べようとして、逆に足を切られた相手だ。


今は、そのカニを食べている。


美味い。


タコは残った肉を齧り、硬い甲羅の内側まで食べ進めていった。


やがて、食べられるところがほとんどなくなる。

タコはカニから身体を離した。


そこで、また一本の足が変わっていることに気付いた。


柔らかかった足の表面が厚くなり、硬い殻へ変わっている。

カニの甲羅に似た、硬く重そうな足だった。


タコは試しに動かしてみた。


重い。


他の足よりも動きが鈍い。

けれど、硬くなった部分を近くの岩へ押し付けても、痛みはなかった。


タコは少し力を込め、今度は岩へぶつけてみた。

やっぱり痛くない。


もう一度、少し強く当てる。

足の硬い部分は傷付かず、岩の表面から細かな欠片が落ちた。


硬い。


タコは何度か足を動かした。

今までの足とは違う重さがあるが、岩へ強く当てても平気だった。


気に入った。


タコはその足を身体へ引き寄せ、奥にあるものへ意識を向けた。


いる。

さっき入ってきた、カニのもの。


タコは舐めるように触れてみた。

味が広がる。


魚のものよりも重い。

エビのように弾ける刺激はなく、硬いものをゆっくり噛み砕くような感覚がある。

ずしりとした味が身体の奥へ広がり、長く残った。


美味い。


タコはもう一度触れた。

重い味がゆっくりと広がっていく。


やっぱり美味い。

タコはしばらくその味を楽しんだ。


それから、四本の変わった足を見た。


速く伸びる足。

強い足。

自分を速く動かす足。

硬い足。


増えた。


タコは硬くなった足をもう一度岩へ当てた。


痛くない。


以前、カニの鋏に挟まれた時のことを思い出す。

あの時は、足先を切られてしまった。


けれど、今度の足は硬い。

あの鋏でも、簡単には切れないかもしれない。


タコは硬い足を何度か動かした。

前よりも少しだけ、カニが怖くなくなっていた。


それから、岩場の奥へ目を向ける。


まだ食べたことのないものがいる。

もっと強いものもいるかもしれない。


どんな味がするんだろう。


タコは四本の変わった足を動かしながら、ゆっくりと岩場の奥へ進んでいった。


●カニ

特徴:

 小型。硬い甲羅と鋏を持つ

獲得能力:

 足の表面が硬い甲殻に覆われ、防御力が上昇


【現在の八腕】

 一ノ足:細身小魚

 二ノ足:太身小魚

 三ノ足:エビ

 四ノ足:カニ

 五ノ足:

 六ノ足:

 七ノ足:

 八ノ足:

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