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ブラック給食室の監獄。〜2人きりでモラハラを繰り返す新人潰しチーフに負けず、異動先で幸せを掴むまで〜  作者: S@Y@


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第38話:規則を破るための新人②と、金曜日の大パニック


野崎「え、副業してるんですか……?」

新人②「してるよー♪ だからさー、この仕事終わったら焼肉屋と居酒屋交互に行ってるから、たまにどっちかのシフト忘れちゃってさ〜。夜遅くまでやってるし眠くて朝キツイんだよね〜。私いっつも出勤最後になっちゃってるもんねw」


悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに笑う彼女。

そう、この新人②は、毎回出勤が調理員の中で1番最後だった。

何時に来いという厳密な決まりはないものの、「新人は少し早めに来て準備する」というのがこの業界の暗黙の常識だったため、直接本人には言わないものの、みんな内心ずっと気にしていたのだ。


普段、8時30分の調理開始に向けて、みんなは7時50分辺りには出勤する。それぞれがその日に使う道具や、調味料を入れる容器などを準備するためだ。

対して、新人②が来る時間はいつも8時20分頃。


8時20分といえば、すでにみんなが休憩室に揃って、その日の注意事項や連絡事項を共有する「朝のミーティング」をしている時間だ。

全員が真剣にミーティングをしている最中に堂々と出勤し、そこからのんびりと着替え始める新人②。とにかく心臓が強すぎた。


野崎「でも、ウチの会社って副業禁止ですよね……?」

新人②「規則ってさー、破るためにあるよねー」

野崎「……はぁ……。それを肯定することは、私には出来ませんが……」

新人②「若いから真面目だねー! 大人になるとさ〜、真面目に規則なんて守ってられないんだよね〜」


ヘラヘラと喋る新人②を前に、私はただただ困惑するしかなかった。

(もういい、この人は放っておこう。仕事はしっかりと教えるけれど、必要以上に関わるのはやめよう……)と、心の中で固く決意した。


さらに彼女の強烈さは、お昼ご飯の時間にも発揮された。

みんなが正座をしたり、少し足を崩す程度の常識的な姿勢で給食を食べている中、この新人②は、なんとここでも「体育座り」のまま食べるのだ。

しかも、体育座りをした自分の膝の上に無理やり食器をのせ、汁物などを「ズズズー!!」と大きな音を立ててすする。

お世辞にも行儀が良いとは言えず、あまりにも品がなかった。

当然、膝の上で食べるものだから、食べこぼしで制服のズボンは毎日泥泥。汚い状態でそのまま洗濯に出されていた。


ここまで行儀が悪く、常識が通用しない大人に出会ったのは、私の人生で初めてのことだった。



そして、事件は突然起こった。

彼女が外回りの仕事を一通り覚えて、初めて「一人で外回りをこなす日」とされた、金曜日の朝。


8時30分を過ぎても、新人②が来ない。

チーフが何度も携帯に電話をかけるが、一向に出ない。


調理員「これ……飛んだね……」


朝から給食室は一気に大混乱に陥った。外回りの仕事をやる人間がいない。調味料の計量は誰がやる? 容器の数は? 出す順番は?

何より最悪だったのは、それらの重要事項がすべて書かれている「指示書」を、新人②が家に持ち帰ってしまっていたことだった。


女チーフ「皆さん、落ち着きましょう……! と、とりあえず……調理を開始しましょう! えーっと、機械にかける作業は私が代わるから……野崎さん、外回りお願い出来る!!?」


――わ、私ー!?


野崎「分かりました……っ!」


ひぇぇえ……! と心の中で悲鳴をあげながら、私は外回りへと飛び出した。

時間なんて、1分1秒たりとも足りない。

私は手当たり次第にボウルやステンレスカップを掴み、記憶を頼りに調味料の計量を開始した。出す順番なんて、もう完全に「勘」で進めるしかない。


食器の積み込みなども猛烈な急ピッチで行う中、追い打ちをかけるように、さらに重大な事件が発生した。


給食の揚げ物などには卵を使用することが多いのだが、卵アレルギーを持つ子供たちのために、私たちは「アレルギー除去食」を別で作る。

その際、アレルギーの子が間違ってノーマルの給食を食べてしまわないよう、専用の紙にクラスや生徒のフルネームが記載されており、それと一文字ずつ照らし合わせながら、各クラスの配膳台に慎重に除去食を置いていく。これも外回りの命に関わる重要な仕事だった。


しかし、その「アレルギー対応の紙」が、どこを探しても見当たらないのだ。

新人②の個人のロッカーにも入っていない。

これでは、今日のアレルギー対応の子が何人いるのか、どこのクラスの誰なのかが、一切分からなかった。


野崎「チーフ……! アレルギー対応の紙、新人さん②が一緒に持ち帰ってしまっているようです……!」

女チーフ「えええ!? 持ち帰り禁止だってあんなに言ってあったのに!? どうしよう……とりあえず、栄養士の先生に確認してみるね!」


チーフが顔を真っ青にして栄養士の先生に内線をいれると、あの美しい先生が、髪を振り乱して給食室まで走ってきた。


先生「新人さん②……来なかったんですね……。大丈夫です、今日私も給食室に入って手伝います!!」


人手不足に不測の事態が重なり、文字通り絶望的な大ピンチだったけれど、北川景子(栄養士の先生)が自ら現場に入ってくれたお陰で、なんとかギリギリ、子供たちに給食を提供することができた。


命からがら金曜日を乗り切った私たち。

しかし、激ヤバ新人②の残した爪痕は、これだけでは終わらなかった。


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