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ブラック給食室の監獄。〜2人きりでモラハラを繰り返す新人潰しチーフに負けず、異動先で幸せを掴むまで〜  作者: S@Y@


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第32話:安室ちゃんとココアシガレット


新しく入ってきた新人さんは、30歳。

とても中学一年生のお子さんがいるとは思えないほど綺麗で、今度は安室奈美恵に激似だった。おどおどしていた私とは違って、受け答えもハキハキしているし、とにかく仕事の飲み込みが驚くほど早かった。


それから1週間が経った頃。

私と新人さんはすっかり打ち解け、作業の合間にちょっとした世間話をするようになっていた。


安室ちゃん「いやー、今悩みがありまして……」

野崎「どうしたんですか?」

安室ちゃん「ここの人たち、誰も喫煙者がいないじゃないですか……。昼休憩の時にタバコ吸いたいんですけど、学校だから敷地内で吸うわけにもいかないし……」

野崎「あー……そうですよね……」


なんとなくその言葉が気になって、数日後、私はチーフにそれとなく探りを入れてみた。


野崎「チーフ、今までいた人たちで喫煙者の方っていますか?」

チーフ「んぁー? いるいるー」

野崎「その方たちって、どこで吸ってたんですか?」

チーフ「歩いて3分くらいの所にコンビニあるだろー? そこに灰皿が設置してあるから、みんなそこで吸ってたなー」

野崎「そうなんですね……! ありがとうございます!」

チーフ「なに、野崎さんタバコ吸うの?」

野崎「いえ、私じゃないんですけど……。新人さんが『タバコ吸いたいな〜』って話していたので、どこか吸える場所がないのかなぁと……」

チーフ「そうなんかぁ。昼休憩にそこ、行くといいぞー」


よし、と心の中でガッツポーズをして、さっそく次の日に彼女に教えてあげた。


野崎「すぐそこのコンビニでタバコ吸えるみたいですよ!」

安室ちゃん「え! 私のために調べてくれたんですか!? ありがたい……。でも、昼休憩に新人の私がいなくなったら、やっぱり印象悪いですよね……」

野崎「……うーん……。じゃあ! 私もついていきます!」

安室ちゃん「えっ!? でも野崎さん……タバコ吸わないですよね……?」

野崎「吸いません! だけど、1人で外に出るより『私がコンビニに行きたいから、新人さんについてきてもらってる』って形にした方が、周りへの角が立たないじゃないですか!」

安室ちゃん「私のためにそこまで……」

野崎「隣でココアシガレットでも咥えてるんで! 気にしないで一緒に行きましょ!」


お節介、あるいは余計なお世話だったかもしれない。

だけど、新人さんが困っているのを見て見ぬふりすることなんて、私には絶対にできなかった。


私がこの学校に異動してきて、みんなにたくさん優しくしてもらった分、今度は私が誰かにその優しさを返したかったのだ。新人で、周りに誰も味方がいなくて、孤独で寂しいあの引き裂かれるような気持ちは、誰よりも痛いほどよく分かっていたから。


この一件をきっかけに、私と彼女の距離はぐっと縮まり、さらに仲良くなった。

毎日仕事に行くのが、ますます楽しみで仕方がなくなっていった。



季節は流れ、11月頃。

彼女も私もすっかり仕事に慣れてきた頃、最近の雑談から、お互いに好きなスロットの機種が同じであることが判明した。

仕事が終わり、着替えのために休憩室に戻る最中など、私たちはひそひそと小声で盛り上がるようになった。仕事終わりとはいえ、学校の廊下でパチンコやスロットの話を大声でするのもどうかな、という配慮からの小声だった。


安室ちゃん「最近ホールに行ってます?」

野崎「彼氏に連れられて何回か……」


内容としては本当にそんな他愛のないパチンコトークだ。そんな小声のお喋りを週に1回ほどしていたある日、私はチーフに個室へ呼び出された。


チーフ「あんなぁ……野崎さんと、新人さん。あんまり仲良くしない方がいいかもなぁ。サブチーフがな、『新人同士でコソコソ話してるのが気になる』って言うんだよ」

野崎「あ……パチンコ関係の話をしてる時のことですかね……」

チーフ「俺もその話題に加わりたいけどなぁ(笑)。でもサブチーフがな、コソコソ話してると周りからは悪口を言ってるように捉えられてしまうから、やめた方がいいって言うんだわ。……それに俺もよぉ、野崎さんの為を思うなら、あの新人さんとは少し距離を置いた方がいいと思う」


実は、チーフは以前から新人さんのことを少し快く思っていなかったようだった。

見た目が華やかな美人で、ちょっとギャル寄り(?)な雰囲気が、昔気質のチーフにとっては苦手だったらしく、生真面目な私が彼女から「悪影響」を受けてしまうのではないかと本気で心配してくれていたのだ。


チーフの親心のような優しさは痛いほど伝わってきた。けれど、私の意志は固かった。


野崎「チーフ……ご指摘いただいた件に関しましては、不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。これからは話し方や場所に気を付けます。……でも、私は前の学校で、新人で誰も味方がいなくて本当に辛かった気持ちが分かるから……。私だけでも、彼女の隣にいて、寄り添ってあげたいんです……」


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