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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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9/10

真実

空気が、張り詰めていた。

 

 雷が、静かに空間を走る。

 

 ボルトは、ゆっくりとアカネを見つめている。

 

 逃げ場は、ない。

 

「……教えてあげるって、何を……」

 

 震える声で、問いかける。

 

 ボルトは、少しだけ笑った。

 

「全部よ」

 

 

 その一言が、やけに重かった。

 

 

「……悪魔って、何だと思う?」

 

 

 問い。

 

 

 答えは、もう聞いている。

 

 

「……人の心から生まれる、歪み……」

 

 

 そう教えられた。

 

 

 高宮から。

 

 

 組織から。

 

 

「……半分正解」

 

 

 ボルトは、あっさりと言う。

 

 

「でも、それ“だけ”じゃない」

 

 

 ゆっくりと、空を指差す。

 

 

「ねえ、空……見たことある?」

 

 

「……え……?」

 

 

 意味が分からない。

 

 

「“本物の空”よ」

 

 

 その言葉に。

 

 

 高宮の表情が、わずかに変わる。

 

 

「……やめろ、ボルト」

 

 

 低い声。

 

 

 警告。

 

 

 でも、ボルトは止まらない。

 

 

「この世界の空って、綺麗すぎると思わない?」

 

 

 夕焼けを見上げる。

 

 

「雲も、光も、全部——“作られてる”みたいに」

 

 

「……何言って……」

 

 

 理解できない。

 

 

 けれど。

 

 

 胸の奥が、ざわつく。

 

 

「……ねえ、アカネ」

 

 

 名前を呼ばれる。

 

 

「どうして“悪魔”がいると思う?」

 

 

「……それは……」

 

 

 人の心。

 

 

 そう答えようとして——

 

 

 言葉が、止まる。

 

 

「……じゃあ聞くけど」

 

 

 ボルトの声が、少しだけ低くなる。

 

 

「どうして“昔の記録”が、ほとんど残ってないの?」

 

 

「……え……」

 

 

「どうして、文明の発展が“途中で途切れてる”の?」

 

 

 次々と投げられる疑問。

 

 

「どうして、この世界は——こんなに“都合よく”できてるの?」

 

 

 その全部が。

 

 

 今まで、考えたこともなかった。

 

 

「……答え、教えてあげる」

 

 

 ボルトは、静かに言う。

 

 

「一度、終わってるのよ。この世界」

 

 

 その言葉で。

 

 

 時間が、止まった気がした。

 

 

「……は……?」

 

 

 理解が、追いつかない。

 

 

「文明は、一度滅びてる」

 

 

 淡々と続ける。

 

 

「悪魔によってね」

 

 

「……嘘……」

 

 

 思わず、否定する。

 

 

 そんなの。

 

 

 聞いたことがない。

 

 

「嘘じゃない」

 

 

 即答。

 

 

「私たちは、その“残りカス”の上で生きてる」

 

 

 その言葉は——

 

 

 あまりにも重すぎた。

 

 

「……だったら……なんで……」

 

 

 声が震える。

 

 

「なんで、そんなこと……」

 

 

 隠してるのか。

 

 

 その問いの続きを——

 

 

 ボルトは、笑って受け取る。

 

 

「簡単よ」

 

 

 あっさりと。

 

 

「“知られたら困る”から」

 

 

「……誰が……」

 

 

 その答えは、もう分かっていた。

 

 

 でも。

 

 

 言ってほしくなかった。

 

 

「——あんたたちの“組織”よ」

 

 

 静かに、断言する。

 

 

 Cicada。

 

 

 その名前が、頭に浮かぶ。

 

 

「……違う!!」

 

 

 高宮が、強く否定する。

 

 

「そんなわけない!」

 

 

 即答。

 

 

 迷いのない否定。

 

 

「……へぇ」

 

 

 ボルトは、面白そうに笑う。

 

 

「じゃあ聞くけど」

 

 

 一歩、近づく。

 

 

「あなた、“どこまで知ってるの?”」

 

 

「……っ……」

 

 

 言葉が詰まる。

 

 

「司令官000の正体は?」

 

 

「……」

 

 

「魔法少女システムの“元になったもの”は?」

 

 

「……やめろ……」

 

 

 高宮の声が、揺れる。

 

 

「悪魔が“どこから来てるのか”は?」

 

 

 次々と、突きつけられる。

 

 

「答えられる?」

 

 

 沈黙。

 

 

 それが、すべてだった。

 

 

「……ほらね」

 

 

 ボルトは肩をすくめる。

 

 

「何も知らされてない」

 

 

 その事実が。

 

 

 何よりも残酷だった。

 

 

「……じゃあ……なんで戦ってるの……」

 

 

 アカネの声が、震える。

 

 

 正義だと思っていた。

 

 

 守るためだと信じていた。

 

 

 でも。

 

 

「……理由なんて、後付けでいいのよ」

 

 

 ボルトは言う。

 

 

「大事なのは、“使えるかどうか”」

 

 

 その視線が、鋭くなる。

 

 

「あなたみたいなのは、特にね」

 

 

 ドクン。

 

 

 胸が、脈打つ。

 

 

「……あなた」

 

 

 まっすぐに見られる。

 

 

「“悪魔”でしょ?」

 

 

 その一言で。

 

 

 すべてが、止まった。

 

 

「……え……」

 

 

 思考が、追いつかない。

 

 

 でも。

 

 

 否定できない。

 

 

 心の奥で、何かが——

 

 

 “そうだ”と囁く。

 

 

「……やめろぉ!!」

 

 

 高宮が、叫ぶ。

 

 

 炎を纏い、飛び出す。

 

 

「それ以上、喋るな!!」

 

 

 本気の攻撃。

 

 

 だが。

 

 

「……図星、か」

 

 

 ボルトは、軽く受け流す。

 

 

 その動きに、余裕しかない。

 

 

「……まあいいわ」

 

 

 興味を失ったように言う。

 

 

「今日はここまで」

 

 

 くるりと背を向ける。

 

 

「……待て!!」

 

 

 高宮が叫ぶ。

 

 

 だが。

 

 

「——またね、後輩」

 

 

 ボルトは、軽く手を振った。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 雷が弾ける。

 

 

 視界が、白く染まる。

 

 

 そして——

 

 

 消えた。

 

 

 静寂。

 

 

 何もかもが、元に戻ったように見える。

 

 

 でも。

 

 

 もう、元には戻らない。

 

 

「……ねえ……」

 

 

 アカネが、小さく呟く。

 

 

「……どっちが、本当なの……」

 

 

 高宮は、答えない。

 

 

 答えられない。

 

 

 ただ。

 

 

 拳を、強く握りしめていた。

 

 

 ——信じていたものが、揺らいでいる。

 

 

 その事実だけが、残った。


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