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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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静寂

基地の中は、静かすぎた。

 

 いつもと同じはずの白い廊下。

 

 でも——

 

 全部が、違って見える。

 

「……滅びた……世界……」

 

 ぽつりと呟く。

 

 頭の中で、言葉がぐるぐる回る。

 

 

 悪魔。

 

 文明の崩壊。

 

 そして——

 

 自分。

 

 

「……悪魔……」

 

 

 その言葉が、胸に刺さる。

 

 

「……違う……」

 

 

 否定する。

 

 

 でも。

 

 

 思い出してしまう。

 

 

 あの黒い力。

 

 

 あの声。

 

 

 ——壊せ。

 

 

「……っ……!」

 

 

 頭を抱える。

 

 

 信じたくない。

 

 

 でも。

 

 

 “知ってしまった”。

 

 

 もう、戻れない。

 

 

 そのとき。

 

 

『緊急警報。特異反応を確認』

 

 

 無機質な声が、響く。

 

 

 ビクッと身体が揺れる。

 

 

「……また……」

 

 

 足が、動かない。

 

 

 怖い。

 

 

 戦うのがじゃない。

 

 

 “自分”が。

 

 

『現場:市街地南区』

 

 

 その瞬間。

 

 

 ドアが、開いた。

 

 

「……アカネ」

 

 

 高宮。

 

 

 戦闘装備のまま、立っている。

 

 

「……行く」

 

 

 短く言う。

 

 

 その目は、迷っていない。

 

 

「……私も……」

 

 

 思わず言いかける。

 

 

 でも。

 

 

 高宮は、首を振った。

 

 

「来なくていい」

 

 

「……え……」

 

 

「今回は、ダメ」

 

 

 はっきりと、拒絶。

 

 

「……なんで……」

 

 

 分かっている。

 

 

 でも、聞かずにはいられない。

 

 

「……今のあんた、危ない」

 

 

 静かな声。

 

 

 でも、その言葉は重かった。

 

 

「……っ……」

 

 

 言い返せない。

 

 

「……大丈夫」

 

 

 高宮は、少しだけ笑う。

 

 

「すぐ終わらせてくる」

 

 

 いつも通りの言葉。

 

 

 でも。

 

 

 どこか、違う。

 

 

「……待ってる」

 

 

 それしか、言えなかった。

 

 

「……うん」

 

 

 短く頷いて。

 

 

 高宮は、出ていった。

 

 

 その背中が——

 

 

 やけに遠く見えた。

 

 

 ◇

 

 

 夜の街。

 

 

 静まり返った空間。

 

 

「……来たか」

 

 

 そこにいたのは——

 

 

 ボルト。

 

 

 街灯の下で、退屈そうに立っている。

 

 

「……やっぱり、あなただったか」

 

 

 高宮が構える。

 

 

「アカネは?」

 

 

 ボルトが聞く。

 

 

「……来ない」

 

 

 即答。

 

 

「へぇ」

 

 

 少しだけ、つまらなそうにする。

 

 

「賢いじゃない」

 

 

「……何が目的だ」

 

 

 高宮の声が低くなる。

 

 

「言ったでしょ」

 

 

 肩をすくめる。

 

 

「見に来ただけ」

 

 

「……なら、帰れ」

 

 

「それは無理」

 

 

 即答。

 

 

「だって——」

 

 

 にやりと笑う。

 

 

「あなたが邪魔だもの」

 

 

 その瞬間。

 

 

 空気が弾けた。

 

 

 バチッ!!

 

 

 雷が走る。

 

 

「っ!!」

 

 

 高宮は即座に回避。

 

 

「装備展開——ファイヤー!」

 

 

 炎が弾ける。

 

 

 突撃。

 

 

 迷いのない一撃。

 

 

 だが——

 

 

「……遅い」

 

 

 ボルトは、軽く避ける。

 

 

 動きが見えない。

 

 

「くっ……!」

 

 

 連撃。

 

 

 炎が空間を焼く。

 

 

 だが。

 

 

 当たらない。

 

 

「……そんなもの?」

 

 

 背後から、声。

 

 

「っ!?」

 

 

 振り向く。

 

 

 遅い。

 

 

 バチンッ!!

 

 

 雷撃。

 

 

 直撃。

 

 

「がっ……!」

 

 

 身体が吹き飛ぶ。

 

 

 地面に叩きつけられる。

 

 

 息が、詰まる。

 

 

 ——強い。

 

 

 分かっていた。

 

 

 でも。

 

 

 ここまでとは思っていなかった。

 

 

「……ねえ」

 

 

 ボルトが、ゆっくりと歩いてくる。

 

 

「なんで戦うの?」

 

 

 問い。

 

 

 シンプルな。

 

 

「……守るためだ……」

 

 

 息を整えながら、答える。

 

 

「誰を?」

 

 

「……人を……」

 

 

「へぇ」

 

 

 ボルトは笑う。

 

 

「じゃあ、その人たちが“何も知らないまま死ぬ世界”でも?」

 

 

「……っ……」

 

 

 言葉が詰まる。

 

 

「騙されてるって分かっても、戦うの?」

 

 

 追い打ち。

 

 

「……それでも……」

 

 

 絞り出す。

 

 

「今、目の前にいる命は——本物だ」

 

 

 その言葉に。

 

 

 ボルトは、少しだけ目を細めた。

 

 

「……なるほどね」

 

 

 小さく呟く。

 

 

「嫌いじゃないわ」

 

 

 でも。

 

 

 次の瞬間。

 

 

「——だからこそ、邪魔」

 

 

 雷が、炸裂した。

 

 

 避けられない。

 

 

 直撃。

 

 

「……っ……!!」

 

 

 膝が崩れる。

 

 

 立てない。

 

 

「……終わりにしましょうか」

 

 

 ボルトが手を上げる。

 

 

 雷が、収束する。

 

 

 圧倒的なエネルギー。

 

 

「……アカネ……」

 

 

 小さく、名前を呟く。

 

 

 あの子は、来なくてよかった。

 

 

 これでいい。

 

 

 そう思えた。

 

 

「……悪くない人生だった?」

 

 

 ボルトが、軽く言う。

 

 

 その言葉に。

 

 

 少しだけ、笑う。

 

 

「……まだ……終わってない……」

 

 

 最後の力を振り絞る。

 

 

 炎を、集める。

 

 

「……はああああ!!」

 

 

 全力の一撃。

 

 

 だが——

 

 

「……うん、弱い」

 

 

 あっさりと、消される。

 

 

 そして。

 

 

 雷が、落ちる。

 

 

 直撃。

 

 

 音が、消えた。

 

 

 静寂。

 

 

 煙が、晴れる。

 

 

 そこに——

 

 

 高宮は、動かなくなっていた。

 

 

「……終わり」

 

 

 ボルトは、興味なさそうに言う。

 

 

 少しだけ、空を見上げて——

 

 

「……じゃあね、先輩」

 

 

 誰に向けたのかも分からない言葉を残し。

 

 

 雷とともに、消えた。

 

 

 ◇

 

 

 その頃。

 

 

 基地で。

 

 

 アカネは、膝を抱えていた。

 

 

 嫌な予感が、消えない。

 

 

 胸が、ずっとざわついている。

 

 

 ドクン。

 

 

 ドクン。

 

 

「……やだ……」

 

 

 理由は分からない。

 

 

 でも。

 

 

 分かってしまう。

 

 

 “何かが壊れた”。

 

 

 その感覚だけが、はっきりとあった。

 

 

「……高宮さん……?」

 

 

 呼んでも、返事はない。

 

 

 ただ。

 

 

 静寂だけが、広がっていた。


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