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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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真の力

胸騒ぎが、消えなかった。

 

 理由は、分からない。

 

 でも。

 

 ずっと、嫌な感じがする。

 

「……遅い……」

 

 時計を見る。

 

 もう、とっくに帰ってきているはずの時間だった。

 

 

「……高宮さん……」

 

 

 小さく、名前を呼ぶ。

 

 

 返事は、ない。

 

 

 当たり前なのに。

 

 

 それが、妙に怖かった。

 

 

 ドクン。

 

 

 心臓が、強く鳴る。

 

 

 考えたくない。

 

 

 でも。

 

 

 考えてしまう。

 

 

「……行かなきゃ」

 

 

 気づけば、立ち上がっていた。

 

 

 理由なんてない。

 

 

 ただ——

 

 

 確かめないといけない気がした。

 

 

 ◇

 

 

 夜の街。

 

 

 静まり返っている。

 

 

 いつもなら、もう少し人がいるはずなのに。

 

 

「……ここ……」

 

 

 足が、止まる。

 

 

 現場。

 

 

 空気が、違う。

 

 

 重い。

 

 

 息が詰まりそうになる。

 

 

「……高宮さん?」

 

 

 一歩、踏み出す。

 

 

 足音が、やけに響く。

 

 

 そして。

 

 

 見つけた。

 

 

「……あ……」

 

 

 そこに——

 

 

 倒れている人影。

 

 

 近づく。

 

 

 分かってしまう。

 

 

 でも、認めたくない。

 

 

「……ねえ……」

 

 

 声をかける。

 

 

 返事は、ない。

 

 

「……起きてよ……」

 

 

 手を伸ばす。

 

 

 触れる。

 

 

 冷たい。

 

 

「……え……」

 

 

 頭が、真っ白になる。

 

 

「……嘘……」

 

 

 もう一度、揺らす。

 

 

「……ねえ……起きてよ……」

 

 

 何度も。

 

 

 何度も。

 

 

 でも。

 

 

 動かない。

 

 

「……やだ……」

 

 

 声が、震える。

 

 

「……やだ……」

 

 

 現実が、押し寄せてくる。

 

 

 これは。

 

 

 もう。

 

 

 戻らない。

 

 

「……なんで……」

 

 

 ぽつりと、呟く。

 

 

 そのとき。

 

 

「——遅かったわね」

 

 

 声。

 

 

 振り向く。

 

 

 そこにいたのは——

 

 

 ボルト。

 

 

 街灯の下で、退屈そうに立っている。

 

 

「……あんた……」

 

 

 その瞬間。

 

 

 感情が、ぐちゃぐちゃになる。

 

 

 怒り。

 

 

 悲しみ。

 

 

 理解できない衝動。

 

 

「……あなたがやったの?」

 

 

 震える声で、問う。

 

 

 ボルトは、あっさりと頷いた。

 

 

「ええ」

 

 

 あまりにも、軽く。

 

 

「……っ……!」

 

 

 息が詰まる。

 

 

 視界が揺れる。

 

 

「……なんで……」

 

 

 それしか言えない。

 

 

「……邪魔だったから」

 

 

 即答。

 

 

 迷いも、後悔もない。

 

 

「……そんな……」

 

 

 言葉が、出てこない。

 

 

「ねえ」

 

 

 ボルトが、一歩近づく。

 

 

「まだ分からない?」

 

 

 静かな声。

 

 

「これが、“現実”よ」

 

 

 その言葉が。

 

 

 胸に、刺さる。

 

 

「……違う……」

 

 

 否定する。

 

 

 でも。

 

 

 何も、否定できない。

 

 

「あなたたちの“正義”なんて、その程度」

 

 

 冷たく言い放つ。

 

 

「守る?救う?」

 

 

 くすっと笑う。

 

 

「守れてないじゃない」

 

 

「……っ……!」

 

 

 言い返せない。

 

 

 何も。

 

 

 何も。

 

 

「……やめて……」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 これ以上、聞きたくない。

 

 

「……弱いのよ」

 

 

 ボルトの声が、重くなる。

 

 

「あなたも」

 

 

 その視線が、刺さる。

 

 

「その力も」

 

 

 ドクン。

 

 

 胸が、脈打つ。

 

 

「……だから——壊れる」

 

 

 その瞬間。

 

 

 何かが、切れた。

 

 

 音がした気がした。

 

 

 頭の中で。

 

 

「……うるさい」

 

 

 ぽつりと、呟く。

 

 

「……え?」

 

 

 ボルトが、わずかに目を細める。

 

 

「……うるさい……」

 

 

 ゆっくりと、立ち上がる。

 

 

 涙は、止まっていた。

 

 

 代わりに。

 

 

 別のものが、そこにある。

 

 

「……黙れ」

 

 

 その一言と同時に。

 

 

 黒い光が、溢れた。

 

 

 空気が、歪む。

 

 

 地面が、軋む。

 

 

「……ああ」

 

 

 ボルトが、笑う。

 

 

 本当に、楽しそうに。

 

 

「それよ」

 

 

 雷が、弾ける。

 

 

「やっと出た」

 

 

 アカネの目が、ゆっくりと上がる。

 

 

 その視線は——

 

 

 もう、さっきまでのものじゃなかった。

 

 

「……殺す」

 

 

 静かに、言う。

 

 

 その言葉に。

 

 

 ボルトは、満足そうに笑った。

 

 

「いいわ」

 

 

 構える。

 

 

「来なさい、後輩」

 

 

 その瞬間。

 

 

 世界が、ぶつかる。


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