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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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覚醒

空気が、軋んでいた。

 

 黒と、紫。

 

 相反する力が、空間を歪ませる。

 

 

「……殺す」

 

 

 アカネは、静かに言った。

 

 

 感情は、ほとんど消えている。

 

 

 残っているのは——

 

 

 ただひとつ。

 

 

 殺意。

 

 

「いい顔ね」

 

 

 ボルトは笑う。

 

 

「やっと“それ”を出した」

 

 

 雷が、弾ける。

 

 

 バチッ!!

 

 

「来なさい」

 

 

 その瞬間。

 

 

 アカネの姿が、消えた。

 

 

 ——アクセル。

 

 

 視界から消える速度。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 懐。

 

 

「っ!!」

 

 

 拳を叩き込む。

 

 

 ——パワー。

 

 

 ドンッ!!

 

 

 衝撃が爆ぜる。

 

 

 だが——

 

 

「……いいわね」

 

 

 ボルトは、受け止めていた。

 

 

 片手で。

 

 

「でも——浅い」

 

 

 バチンッ!!

 

 

 雷撃。

 

 

 至近距離で炸裂する。

 

 

「っ……!!」

 

 

 アカネの身体が吹き飛ぶ。

 

 

 地面を滑る。

 

 

 だが。

 

 

 すぐに立ち上がる。

 

 

「……まだ……」

 

 

 呼吸が荒い。

 

 

 でも止まらない。

 

 

 止まれない。

 

 

「……壊す……」

 

 

 再び踏み込む。

 

 

 今度は——

 

 

 水。

 

 

 ——ウォーター。

 

 

 刃のように鋭い流れが、ボルトを切り裂く。

 

 

「……っ」

 

 

 わずかに、当たる。

 

 

 初めて。

 

 

「……へぇ」

 

 

 ボルトの目が、細くなる。

 

 

「今のは良かった」

 

 

 だが。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 消える。

 

 

「……え」

 

 

 背後。

 

 

「遅い」

 

 

 バチッ!!

 

 

 雷が、直撃する。

 

 

「がっ……!」

 

 

 膝が崩れる。

 

 

 神経が焼かれるような痛み。

 

 

「……ねえ」

 

 

 ボルトの声が、すぐ近くにある。

 

 

「それ、本気?」

 

 

 冷たい問い。

 

 

「……全部……出してる……!」

 

 

 叫ぶ。

 

 

 だが。

 

 

「嘘ね」

 

 

 即答。

 

 

「まだ、“奥”がある」

 

 

 ドクン。

 

 

 胸が、脈打つ。

 

 

 分かる。

 

 

 確かに、ある。

 

 

 もっと深いところに。

 

 

 もっと、黒い何かが。

 

 

「……出しなさい」

 

 

 ボルトが囁く。

 

 

「じゃないと——勝てない」

 

 

「……っ……!」

 

 

 歯を食いしばる。

 

 

 怖い。

 

 

 あれは。

 

 

 あの力は。

 

 

 使ったら——

 

 

 戻れない気がする。

 

 

「……それでも?」

 

 

 ボルトが、静かに言う。

 

 

「そのまま、終わる?」

 

 

 視線の先。

 

 

 高宮の姿が、目に入る。

 

 

 動かない。

 

 

 もう、戻らない。

 

 

「……っ……」

 

 

 感情が、揺れる。

 

 

 壊れかけていたものが——

 

 

 完全に、崩れる。

 

 

「……もう……」

 

 

 声が、震える。

 

 

「……どうでもいい……」

 

 

 その瞬間。

 

 

 黒が、溢れた。

 

 

 今までとは、違う。

 

 

 重さが、違う。

 

 

 空間が、悲鳴を上げる。

 

 

「……ああ」

 

 

 ボルトが、笑う。

 

 

 心底、嬉しそうに。

 

 

「それよ」

 

 

 アカネの姿が、変わる。

 

 

 黒い装束が、さらに深く染まる。

 

 

 目の光が、変質する。

 

 

 ——デビルアカネ。

 

 

「……消えろ」

 

 

 低い声。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 消える。

 

 

 いや——

 

 

 “歪む”。

 

 

 空間ごと。

 

 

「……っ!?」

 

 

 ボルトの表情が、初めて変わる。

 

 

 完全には、見えていない。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 衝撃。

 

 

 ドンッ!!

 

 

 ボルトの身体が、吹き飛ぶ。

 

 

 地面を抉る。

 

 

「……なるほど」

 

 

 立ち上がる。

 

 

 口元に、血。

 

 

 初めてのダメージ。

 

 

「それが、“本体”」

 

 

 楽しそうに笑う。

 

 

「いいじゃない」

 

 

 雷が、さらに強まる。

 

 

「これなら——戦える」

 

 

 構える。

 

 

 完全に、本気。

 

 

 だが。

 

 

 次の瞬間。

 

 

 空気が、変わった。

 

 

「……そこまでだ」

 

 

 低い声。

 

 

 重い圧。

 

 

 その場の全てを支配するような存在感。

 

 

 振り向く。

 

 

 そこにいたのは——

 

 

 司令官000。

 

 

 いつの間にか、そこに立っていた。

 

 

「……ちっ」

 

 

 ボルトが、舌打ちする。

 

 

「邪魔ね」

 

 

「その個体は、こちらの管理下にある」

 

 

 感情のない声。

 

 

 アカネを見る。

 

 

「回収する」

 

 

 その言葉に。

 

 

 黒い力が、わずかに揺れる。

 

 

「……触るな」

 

 

 アカネが、低く言う。

 

 

 だが。

 

 

 000は、気にしない。

 

 

「抵抗は無意味だ」

 

 

 その瞬間。

 

 

 見えない“何か”が、空間を押さえつけた。

 

 

「……っ!?」

 

 

 動けない。

 

 

 力が、抑えられる。

 

 

「……なに……これ……」

 

 

 初めての感覚。

 

 

 支配される。

 

 

「……やっぱり、あんたか」

 

 

 ボルトが、睨む。

 

 

「全部の元凶は」

 

 

 000は答えない。

 

 

 ただ。

 

 

「撤退しろ」

 

 

 それだけを言う。

 

 

 ボルトは、しばらく見つめてから——

 

 

「……まあいい」

 

 

 肩をすくめる。

 

 

「今日はここまでにしてあげる」

 

 

 アカネを見る。

 

 

「またね、後輩」

 

 

 その一言を残して。

 

 

 雷とともに消えた。

 

 

 静寂。

 

 

 残ったのは。

 

 

 崩れた街と。

 

 

 動けないアカネ。

 

 

 そして——

 

 

 すべてを見下ろす、000。

 

 

「……回収する」

 

 

 その言葉が。

 

 

 次の絶望の始まりだった。


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