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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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明晰夢

視界が、白かった。

 

 身体が、重い。

 

 動けない。

 

 

「……意識を確認」

 

 

 無機質な声。

 

 

 ゆっくりと、視界が戻る。

 

 

 そこは——

 

 

 基地の一室。

 

 

「……っ……」

 

 

 起き上がろうとして。

 

 

 気づく。

 

 

 拘束されている。

 

 

 見えない“何か”に。

 

 

「……離して……」

 

 

 力を込める。

 

 

 だが。

 

 

 黒い力は、出ない。

 

 

 抑え込まれている。

 

 

「無意味だ」

 

 

 声。

 

 

 目の前に立っているのは——

 

 

 司令官000。

 

 

 いつもと同じ。

 

 

 感情のない顔。

 

 

「……なんで……」

 

 

 掠れた声で問う。

 

 

「なんで……こんな……」

 

 

 守るための場所だったはずなのに。

 

 

「……お前は、危険だ」

 

 

 即答だった。

 

 

「……は……?」

 

 

 意味が分からない。

 

 

「ディストラクションデビルの宿主」

 

 

 淡々と続ける。

 

 

「制御不能の可能性がある」

 

 

 その言葉が。

 

 

 胸に刺さる。

 

 

「……私は……」

 

 

 言葉が、出ない。

 

 

 自分が何なのか。

 

 

 もう、分からない。

 

 

「……ボルトとの接触」

 

 

 000の声が、少しだけ低くなる。

 

 

「情報汚染の可能性あり」

 

 

「……っ……」

 

 

 その一言で。

 

 

 頭に血が上る。

 

 

「……あれが……嘘だって言うの……?」

 

 

 震える声。

 

 

「……文明が滅びたのも……全部……」

 

 

 問いかける。

 

 

 今度こそ、答えを。

 

 

 だが——

 

 

 000は、沈黙した。

 

 

 ほんの一瞬。

 

 

 その“間”が。

 

 

 すべてを物語っていた。

 

 

「……やっぱり……」

 

 

 理解してしまう。

 

 

 この組織は——

 

 

 何かを隠している。

 

 

「……任務を更新する」

 

 

 000が言う。

 

 

 その声は、変わらない。

 

 

「対象:ボルト」

 

 

 一拍。

 

 

「——排除」

 

 

 その言葉に。

 

 

 空気が、凍る。

 

 

「……え……」

 

 

 思わず、声が漏れる。

 

 

「……殺せって……こと……?」

 

 

「排除だ」

 

 

 訂正でも、否定でもない。

 

 

 同じ意味。

 

 

「……なんで……」

 

 

 理解できない。

 

 

 さっきまで。

 

 

 “守る側”だったはずなのに。

 

 

「……必要だからだ」

 

 

 それだけ。

 

 

 理由は、それだけ。

 

 

「……私に……やらせるの……?」

 

 

 震える声で問う。

 

 

「お前しかいない」

 

 

 即答。

 

 

 迷いもない。

 

 

「……っ……」

 

 

 何かが、完全に壊れた。

 

 

 信じていたものが。

 

 

 音を立てて、崩れる。

 


 アカネは必死に抵抗する。


 「……離して」


 「無意味だ」

  

 一拍。

 

 000は、わずかに視線を落とした。

  

 「——ここは君の思い通りになるような明晰夢じゃない」

  

 静かに、言う。

 

 「……現実だ」

 


 「……分かんないよ……」

 

 

 何が正しいのか。

 

 

 誰を信じればいいのか。

 

 

 自分が何なのか。

 

 

 全部。

 

 

 分からない。

 

 

 その瞬間。

 

 

 黒い力が、揺れた。

 

 

 拘束が、わずかに歪む。

 

 

「……っ」

 

 

 000の目が、わずかに動く。

 

 

「……制御不安定」

 

 

 分析の声。

 

 

 だが——

 

 

「……もういい」

 

 

 アカネが、顔を上げる。

 

 

 その目は、虚ろだった。

 

 

「……全部……どうでもいい……」

 

 

 その一言と同時に。

 

 

 ——バキッ。

 

 

 空間が、割れた。

 

 

 拘束が、砕ける。

 

 

「……なっ——」

 

 

 初めて。

 

 

 000の声が、わずかに揺れた。

 

 

 アカネは、立ち上がる。

 

 

 ゆっくりと。

 

 

「……止まれ」

 

 

 000が命令する。

 

 

 だが。

 

 

 止まらない。

 

 

「……知らない」

 

 

 ぽつりと。

 

 

「……もう……知らない……」

 

 

 一歩、踏み出す。

 

 

 そのまま——

 

 

 姿が、消えた。

 

 

 

 

 夜の公園。

 

 

 誰もいない。

 

 

 静かな場所。

 

 

 ブランコが、揺れている。

 

 

 風もないのに。

 

 

「……っ……」

 

 

 アカネは、そこにいた。

 

 

 力が抜ける。

 

 

 そのまま、座り込む。

 

 

「……なんで……」

 

 

 声が、震える。

 

 

「……なんでなの……」

 

 

 涙が、溢れる。

 

 

 止まらない。

 

 

「……高宮さん……」

 

 

 名前を呼ぶ。

 

 

 もう、いないのに。

 

 

「……どうしたらよかったの……」

 

 

 答えなんて、ない。

 

 

「……私……何がしたいの……」

 

 

 ぽつりと、呟く。

 

 

 本当に、分からない。

 

 

 戦う理由も。

 

 

 守る理由も。

 

 

 全部、消えた。

 

 

「……もう……」

 

 

 言葉が、続かない。

 

 

 ただ、泣くことしかできない。

 

 

 そのとき。

 

 

「——泣いてるの?」

 

 

 声。

 

 

 ゆっくりと、顔を上げる。

 

 

 そこにいたのは——

 

 

 ボルト。

 

 

 街灯の光の下で、立っている。

 

 

「……また……」

 

 

 声が、震える。

 

 

「……来たんだ……」

 

 

 ボルトは、少しだけ首を傾げる。

 

 

「あなたが来たんでしょ?」

 

 

 その言葉に。

 

 

 何も返せない。

 

 

「……どう?」

 

 

 ゆっくりと歩いてくる。

 

 

「世界、壊れた?」

 

 

 その問いに。

 

 

 涙が、また溢れる。

 

 

「……うるさい……」

 

 小さく呟く。

 

 

「……分かんないんだよ……」

 

 

 正直な言葉。

 

 

「……何が正しいのかも……」

 

 

「……誰が敵なのかも……」

 

 

「……私が何なのかも……」

 

 

 全部、吐き出す。

 

 

 ボルトは、それを静かに聞いていた。

 

 

 そして。

 

 

「……いいじゃない」

 

 

 ぽつりと、言う。

 

 

「分からなくて」

 

 

「……え……?」

 

 

 意外な言葉。

 

 

「分からないなら——壊して確かめればいい」

 

 

 当たり前のように言う。

 

 

「……なに……それ……」

 

 

 理解できない。

 

 

 でも。

 

 

 どこかで——

 

 

 納得してしまう自分がいる。

 

 

「……来なさい」

 

 

 ボルトが、構える。

 

 

 雷が、静かに走る。

 

 

「……え……」

 

 

「答えが欲しいんでしょ?」

 

 

 まっすぐに見てくる。

 

 

「なら——戦いなさい」

 

 

 その一言で。

 

 

 空気が、変わる。

 

 

「……っ……」

 

 

 立ち上がる。

 

 

 涙を、拭う。

 

 

 理由はない。

 

 

 でも。

 

 

 今は——

 

 

 それしかない気がした。

 

 

「……いいよ」

 

 

 小さく、呟く。

 

 

「……やる」

 

 

 黒い力が、滲む。

 

 

 ボルトが、笑う。

 

 

「それでいい」

 

 

 雷が、弾ける。

 

 

 黒が、溢れる。

 

 

 そして——

 

 

 再び。

 

 

 戦いが、始まる。


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