壊れる
公園の空気が、歪んでいた。
黒が、滲む。
いや——
“溢れている”。
「……っ……」
アカネの身体が、軋む。
内側から、何かが押し出される。
止められない。
止める気も、ない。
ドクン。
ドクン。
鼓動が、変わる。
人のものじゃない。
「……あ……ああ……」
声が、混ざる。
自分と、自分じゃない何かが。
その瞬間。
——弾けた。
黒が、爆発する。
空間が、ひび割れる。
地面が沈む。
重力すら、歪む。
そこに立っていたのは——
もう、“アカネ”じゃなかった。
禍々しい装束。
歪んだ光を放つ瞳。
世界そのものを拒絶するような存在感。
——デビルアカネ。
それは。
力の根源。
そして——
“ディストラクションデビル”そのものの姿。
「……ああ……」
ボルトが、静かに息を吐く。
その目は——
興奮していた。
「……なるほど」
口元が、歪む。
「それが、“崩壊の力”」
理解する。
魔法少女のシステム。
その根源。
模造された力の、元。
——本物。
「……いいじゃない」
雷が、走る。
「最高よ」
その瞬間。
アカネが、動いた。
——消える。
否。
“空間ごと消す”。
「っ!?」
ボルトが反応するより早く。
懐に、いる。
「……お前を——」
低い声。
重い。
存在そのものが、圧し潰してくる。
「……壊す」
その一言で。
空間が、軋んだ。
「っ……!」
ボルトが、飛ぶ。
直感で回避する。
その瞬間。
後ろの地面が——
“消えた”。
抉れるとかじゃない。
存在ごと、消失する。
「……はは」
思わず、笑う。
「やばいわね、これ」
完全に理解する。
これは。
まともに受けたら——
終わる。
「……なら」
雷が、収束する。
全力。
今までとは比べ物にならないエネルギー。
「——消し飛びなさい」
手を振り下ろす。
紫電が、収束し——
解き放たれる。
「オーバーライジング・フィナーレ」
轟音。
光が、全てを飲み込む。
公園が、消し飛ぶ。
地面が裂ける。
空気が蒸発する。
直撃。
「……はぁ……」
ボルトが、息を吐く。
決まった。
そう思った——
次の瞬間。
光の中から。
“それ”が、出てくる。
「……は?」
無傷。
いや。
“ほぼ無傷”。
黒い力が、揺れているだけ。
「……効いてない……?」
理解が、追いつかない。
「……ああ」
ボルトが、小さく笑う。
「そっか」
納得する。
「レベルが違うんだ」
模造と、本物。
その差。
「……いいわ」
構える。
震えは、ない。
「それなら、それで」
むしろ——
嬉しそうだった。
「本気で殺しに行く」
だが。
その言葉よりも早く。
アカネが、動く。
黒が、収束する。
世界が、軋む。
「……終わり」
その声は。
あまりにも、静かだった。
「——カタストロフ・ジ・エンド」
次の瞬間。
すべてが、黒に染まる。
光も。
音も。
存在も。
何もかもが——
“壊れる”。
「……っ……!」
ボルトの身体が、消えていく。
崩壊していく。
逃げられない。
防げない。
これは。
そういう力だ。
「……はは……」
笑う。
最後に。
「……最高じゃない」
その目は。
どこか満足していた。
「……やっと、本物に会えた」
その言葉を最後に。
ボルトは——
完全に、消えた。
跡形もなく。
◇
静寂。
何も残っていない。
公園だった場所。
そこに立っているのは——
アカネだけ。
「……あ……」
声が、漏れる。
黒が、揺らぐ。
少しずつ、形が戻る。
視界が、戻る。
そして。
理解する。
「……私……」
自分が、何をしたのか。
誰を、殺したのか。
全部。
「……あ……」
膝が、崩れる。
もう。
戻れない。
完全に。
——壊れてしまった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
物語は、まだ終わりません。
ここまで読んでくださった方には、
少しずつ違和感のようなものを感じていただけていたら嬉しいです。
一章も、いよいよ次で最終回となります。
ここから先、これまで見えていたものが少しずつ変わっていくはずです。
何が正しくて、何が間違っているのか。
その答えが出るわけではありませんが、
一つの区切りとして、最後まで見届けていただけたらと思います。
もし少しでも続きが気になると感じていただけたなら、
ブックマークや評価をしていただけると励みになります。




