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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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8/8

ボルト

その日は、やけに静かだった。

 

 警報が鳴る。

 

 いつも通りのはずなのに——

 

 どこか、違う。

 

『悪魔反応、確認』

 

「……行くよ、アカネ」

 

「うん」

 

 短く頷く。

 

 もう迷いはない。

 

 

 

 

 現場に着いたとき。

 

 

「……え……?」

 

 

 思わず、声が漏れた。

 

 

 悪魔が——

 

 

 “消えていた”。

 

 

 いや、正確には。

 

 

 そこにあった“はず”の痕跡だけが残っている。

 

 

 地面が抉れ、空間が歪んでいる。

 

 

 けれど、本体はいない。

 

 

「……どういうこと……」

 

 

 高宮が周囲を警戒する。

 

 

 そのとき。

 

 

「——遅いわね」

 

 

 声。

 

 

 背後から。

 

 

「っ!?」

 

 

 振り向く。

 

 

 そこにいたのは——

 

 

 一人の少女だった。

 

 

 長い黒髪。

 

 どこか余裕のある立ち姿。

 

 

 そして。

 

 

 その目。

 

 

 すべてを見透かしているような、冷たい視線。

 

 

「……誰……?」

 

 

 アカネが呟く。

 

 

 少女は、くすっと笑った。

 

 

「挨拶もなし?」

 

 

 一歩、前に出る。

 

 

「まあいいわ」

 

 

 軽く肩をすくめる。

 

 

「初めまして、後輩」

 

 

 その一言に。

 

 

 空気が、変わった。

 

 

「……後輩……?」

 

 

 高宮の声が、低くなる。

 

 

「……まさか……」

 

 

 少女は、楽しそうに笑う。

 

 

「そう、その“まさか”よ」

 

 

 指を軽く鳴らす。

 

 

 パチン。

 

 

 その瞬間。

 

 

 空気が弾けた。

 

 

 バチッ!!

 

 

 紫電が走る。

 

 

 地面が焼ける。

 

 

 ただ、それだけで。

 

 

「……っ!?」

 

 

 アカネは思わず後ずさる。

 

 

 分かる。

 

 

 これは——

 

 

 “同じ側”の存在。

 

 

 魔法少女。

 

 

 でも。

 

 

 決定的に違う。

 

 

「……ボルト……」

 

 

 高宮が、名前を口にした。

 

 

「……生きてたのか」

 

 

 その声には、明確な緊張があった。

 

 

 ボルト。

 

 

 その少女は、にやりと笑う。

 

 

「ええ。勝手に殺さないでくれる?」

 

 

 軽い調子。

 

 

 だが——

 

 

 その圧は、明らかに異常だった。

 

 

「……何しに来た」

 

 

 高宮が構える。

 

 

「決まってるでしょ?」

 

 

 ボルトは、視線をアカネに向ける。

 

 

「この子」

 

 

 指差す。

 

 

「見に来たのよ」

 

 

 その一言で。

 

 

 心臓が、跳ねた。

 

 

「……え……」

 

 

「面白いものがいるって、聞いたから」

 

 

 ゆっくりと歩いてくる。

 

 

 距離が、近づく。

 

 

 逃げたい。

 

 

 でも、動けない。

 

 

「……へぇ……」

 

 

 じっと、見られる。

 

 

 まるで——

 

 

 中身まで覗かれているみたいに。

 

 

「……やっぱり」

 

 

 小さく呟く。

 

 

「あなた、“違うわね”」

 

 

「……なにが……」

 

 

 やっとのことで、言葉を返す。

 

 

 ボルトは、笑う。

 

 

「全部よ」

 

 

 その瞬間。

 

 

 ——来る。

 

 

 本能が叫ぶ。

 

 

「下がって!!」

 

 

 高宮の声。

 

 

 だが。

 

 

 遅い。

 

 

 ボルトの姿が——消えた。

 

 

「っ!?」

 

 

 次の瞬間。

 

 

 目の前。

 

 

 距離ゼロ。

 

 

 速すぎる。

 

 

 見えない。

 

 

「——遅い」

 

 

 耳元で、囁く。

 

 

 ゾッとする。

 

 

 そして。

 

 

 手を、軽く振る。

 

 

 それだけで。

 

 

 バチンッ!!

 

 

 衝撃。

 

 

 アカネの身体が、吹き飛ぶ。

 

 

「……っ!!」

 

 

 地面を転がる。

 

 

 息が詰まる。

 

 

「アカネ!!」

 

 

 高宮が飛び込む。

 

 

「装備展開——ファイヤー!」

 

 

 炎が弾ける。

 

 

 即座に攻撃。

 

 

 だが——

 

 

「……甘い」

 

 

 ボルトは、動かない。

 

 

 ただ、片手で受け止める。

 

 

 炎を。

 

 

 素手で。

 

 

「……なっ……!?」

 

 

 高宮の顔が、歪む。

 

 

「そんなもので、戦ってたの?」

 

 

 ボルトは、つまらなそうに言う。

 

 

 そして。

 

 

 軽く、弾く。

 

 

 それだけで。

 

 

 高宮の身体が、後方に吹き飛ぶ。

 

 

「……っ!!」

 

 

 受け身を取るが、明らかにダメージがある。

 

 

 ——格が違う。

 

 

 誰が見ても、そう分かる差だった。

 

 

「……さて」

 

 

 ボルトは、再びアカネを見る。

 

 

「あなた」

 

 

 ゆっくりと近づく。

 

 

「さっきの、出してみなさいよ」

 

 

「……え……?」

 

 

「あるでしょ?中に」

 

 

 その言葉に。

 

 

 身体が、反応する。

 

 

 ドクン。

 

 

 胸の奥が、脈打つ。

 

 

「……やめ……」

 

 

「ほら」

 

 

 ニヤリと笑う。

 

 

「見せてよ」

 

 

 その瞬間。

 

 

 ——壊せ。

 

 

 声が、響く。

 

 

「……っ!!」

 

 

 黒い光が、滲む。

 

 

 止められない。

 

 

 引きずり出される。

 

 

「……そう、それ」

 

 

 ボルトの目が、輝く。

 

 

「やっぱり、あなた——」

 

 

 その言葉の続きを。

 

 

 高宮が遮った。

 

 

「——やめろ!!」

 

 

 炎を纏い、割って入る。

 

 

「それ以上近づくな!」

 

 

 本気の声。

 

 

 怒りと、焦りが混ざっている。

 

 

 ボルトは、少しだけ目を細めた。

 

 

「……へぇ」

 

 

 面白そうに。

 

 

「守るのね」

 

 

 くすっと笑う。

 

 

「でも——無駄よ」

 

 

 その瞬間。

 

 

 空気が、震えた。

 

 

 雷。

 

 

 紫電が、空間を支配する。

 

 

「あなたたち、何も知らない」

 

 

 静かに、言う。

 

 

「何と戦ってるのかも」

 

 

 その目が、鋭くなる。

 

 

「自分が何なのかも」

 

 

 アカネを見る。

 

 

 まっすぐに。

 

 

「——教えてあげる」

 

 

 その言葉は。

 

 

 誘いだった。

 

 

 そして同時に——

 

 

 破滅の始まりでもあった。

 


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