違和感の正体
それから数日。
アカネは、戦っていた。
何度も。
何度も。
「右から来るよ!」
「うん!」
跳ぶ。
身体が軽い。
——アクセル。
悪魔の攻撃を紙一重でかわす。
そのまま、踏み込む。
「……はっ!」
拳に力を込める。
——パワー。
叩き込む。
ドンッ!!
黒い身体が、歪む。
「いい感じ!」
後方から高宮の声。
そのまま続ける。
今度は手を開く。
——ウォーター。
水の刃が、空気を裂く。
悪魔の身体を、正確に切り裂く。
「……終わり!」
最後にもう一撃。
核を砕く。
悪魔は、霧のように消えた。
静寂。
「……ナイス」
高宮が歩いてくる。
「もう普通に戦えてるじゃん」
軽く言う。
「……慣れてきた、かも」
自分でも、少し驚いている。
最初は怖かった。
でも今は——
ちゃんと、“使えている”。
「……すごいよ、普通じゃない」
高宮はそう言って、少しだけ笑う。
その言葉に、少しだけ引っかかる。
“普通じゃない”。
それは、褒め言葉のはずなのに。
どこか、距離を感じた。
◇
別の戦場。
また一体。
アカネが前に出る。
「……これで!」
加速。
一瞬で距離を詰める。
攻撃。
回避。
反撃。
全部が、自然にできる。
考える前に、身体が動く。
まるで——
“最初から知っていた”みたいに。
「……アカネ、ちょっと下がって!」
高宮の声。
だが——
「大丈夫!」
そのまま突っ込む。
そして。
——終わらせる。
悪魔が、崩壊する。
「……」
高宮は、何も言わなかった。
ただ、少しだけ。
その様子を、じっと見ていた。
◇
戦闘後。
「……無茶するようになったね」
ぽつりと、高宮が言う。
「……そうかな?」
首を傾げる。
自分では、普通のつもりだった。
「前は、もっと慎重だった」
その言葉に。
少しだけ、考える。
「……でも、倒せるし」
自然と、そう言っていた。
倒せる。
簡単に。
確実に。
それが、分かっているから。
「……」
高宮は、何も言わない。
ただ、視線を逸らす。
「……まあ、結果は出てるしね」
そう言って、話を終わらせた。
けれど。
その声は、少しだけ硬かった。
◇
その夜。
アカネは、一人で座っていた。
手を見る。
普通の手。
でも。
「……簡単すぎる……」
ぽつりと呟く。
戦いが。
怖くないわけじゃない。
でも。
それ以上に——
“できてしまう”。
考えなくても。
迷わなくても。
壊せる。
「……これって……」
いいことなのか。
分からない。
そのとき。
胸の奥が、わずかに脈打つ。
ドクン。
まるで——
喜んでいるみたいに。
「……やめて……」
小さく呟く。
その感覚を、否定するように。
◇
一方で。
別の場所。
暗い空間。
「……へぇ」
少女が、モニターを見つめていた。
そこに映っているのは——
アカネの戦闘記録。
「……やっぱり、出てきた」
小さく笑う。
楽しそうに。
「……“本物”が」
その目は、どこか狂気を帯びていた。
「……いいわね」
立ち上がる。
「退屈しなさそう」
その少女の名は——
ボルト。
かつての、魔法少女。
そして。
これからアカネと交わる運命の存在。
「……会いに行きましょうか」
その一言で。
物語は、大きく動き始める。




