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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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6/8

違和感

戦いが終わったあとの空気は、妙に重かった。

 

 悪魔は、すでに消えている。

 

 最後は高宮が仕留めた。

 ——いつも通りに。

 

 けれど。

 

 “いつも通り”じゃないものが、ひとつだけあった。

 

 

「……アカネ」

 

 

 名前を呼ばれる。

 

 

 その声に、少しだけ緊張が混じっているのが分かった。

 

 

「……さっきの、見た?」

 

 

 恐る恐る、聞く。

 

 

 高宮はすぐには答えなかった。

 

 

 少しだけ、視線を逸らして——

 

 

「……見たよ」

 

 

 短く、そう言った。

 

 

 それだけで、十分だった。

 

 

 全部、見られていた。

 

 

「……あれ……なに……?」

 

 

 自分でも分からない。

 

 

 なのに。

 

 

 あの感覚だけは、まだ身体に残っている。

 

 

 壊せる、という確信。

 

 

 あまりにも自然に湧き上がってきた衝動。

 

 

「……わからない」

 

 

 高宮は、そう答えた。

 

 

 けれど。

 

 

 それが“嘘”だと、なんとなく分かった。

 

 

 ほんの少しだけ。

 

 言葉の間が、不自然だったから。

 

 

「……でも」

 

 

 続ける。

 

 

「ひとつだけ言える」

 

 

 ゆっくりと、こちらを見る。

 

 

 その目は——

 

 

 さっきまでと同じじゃなかった。

 

 

「……あれは、“武装”じゃない」

 

 

 断言。

 

 

 静かで、確信に満ちた声。

 

 

「……うん……」

 

 

 それは、アカネ自身も分かっていた。

 

 

 あれは、外から与えられた力じゃない。

 

 

 内側から溢れてきたものだ。

 

 

「……ああいうのはね」

 

 

 高宮は、少しだけ言葉を選ぶ。

 

 

「普通、存在しない」

 

 

 その言い方は——

 

 

 “知っている人間”のものだった。

 

 

「……普通じゃないって、こと?」

 

 

「……うん」

 

 

 短い肯定。

 

 

 それだけで、十分すぎた。

 

 

 沈黙が落ちる。

 

 

 夕焼けが、街を赤く染めていく。

 

 

 壊れた道路も、崩れた壁も。

 

 

 全部が、やけに現実感を持って迫ってくる。

 

 

「……怖い?」

 

 

 不意に、高宮が聞いた。

 

 

「……え?」

 

 

「自分の力」

 

 

 まっすぐな問い。

 

 

 逃げられない。

 

 

「……怖いよ」

 

 

 正直に答える。

 

 

「……だって、わかんないし」

 

 

 いつ、また出てくるのか。

 

 何を壊すのか。

 

 

「……自分じゃなくなるみたいで……」

 

 

 言葉にすると、余計に怖くなる。

 

 

 あのときの自分は——

 

 

 確実に、“自分じゃなかった”。

 

 

「……そっか」

 

 

 高宮は、それ以上は何も言わなかった。

 

 

 ただ、少しだけ目を伏せる。

 

 

 何かを考えている。

 

 

 迷っている。

 

 

 そんな感じだった。

 

 

「……ねえ、高宮さん」

 

 

「ん?」

 

 

「……あれ、また出ると思う?」

 

 

 恐る恐る聞く。

 

 

 高宮は、少しだけ考えて——

 

 

「……たぶん、出る」

 

 

 はっきり言った。

 

 

「……っ……」

 

 

 心臓が跳ねる。

 

 

「でも」

 

 

 そのあとに、言葉が続く。

 

 

「さっき、止めたでしょ」

 

 

「……え?」

 

 

「完全にじゃないけど、途中で止まった」

 

 

 言われて、気づく。

 

 

 確かに——

 

 

 あのまま振り下ろしていたら、終わっていた。

 

 

 でも、止まった。

 

 

 自分の意思で。

 

 

「……つまり」

 

 

 高宮は、ゆっくりと言う。

 

 

「“制御できない力”じゃないかもしれない」

 

 

 その言葉に。

 

 

 ほんの少しだけ、救われる。

 

 

「……ほんとに……?」

 

 

「保証はしないけど」

 

 

 苦笑する。

 

 

「でも、可能性はある」

 

 

 その一言で。

 

 

 胸の奥の不安が、少しだけ軽くなる。

 

 

 ——制御できるかもしれない。

 

 

 その可能性があるだけで、全然違った。

 

 

「……ありがとう」

 

 

 小さく、呟く。

 

 

 高宮は、少しだけ驚いた顔をしてから——

 

 

「……別に」

 

 

 そっぽを向いた。

 

 

 その仕草が、少しだけ可笑しくて。

 

 

 ほんの一瞬だけ。

 

 

 普通の時間が戻る。

 

 

 けれど。

 

 

 その裏で。

 

 

 高宮の中には、別の感情が残っていた。

 

 

 ——あれは、危険すぎる。

 

 

 あの力。

 

 

 あの気配。

 

 

 知っている。

 

 

 あれは——

 

 

 “触れてはいけない領域”のものだ。

 

 

(……報告するべきか)

 

 

 一瞬、そんな考えがよぎる。

 

 

 司令官000に。

 

 

 すべてを。

 

 

 だが。

 

 

(……いや)

 

 

 小さく、首を振る。

 

 

(……まだ、いい)

 

 

 アカネを見る。

 

 

 不安そうに、それでも前を向こうとしている少女。

 

 

 ——もう少しだけ。

 

 

 様子を見る。

 

 

 それが、今の結論だった。

 

 

 ◇

 

 

 その夜。

 

 

 アカネは、一人でベッドに座っていた。

 

 

 静かな部屋。

 

 

 手を見つめる。

 

 

 何も変わっていない。

 

 

 普通の手。

 

 

 なのに。

 

 

「……ここに、いる……」

 

 

 確信だけがある。

 

 

 自分の中に、“何か”がいる。

 

 

 あの力。

 

 

 あの声。

 

 

 あの衝動。

 

 

 消えてなんていない。

 

 

 ただ——

 

 

 “待っている”。

 

 

 次に呼ばれるのを。

 

 

「……もし、また出てきたら……」

 

 

 小さく呟く。

 

 

 怖い。

 

 

 でも。

 

 

 それ以上に——

 

 

「……使えるのかな……」

 

 

 その考えが、浮かんでしまった。

 

 

 ——力として。

 

 

 その瞬間。

 

 

 胸の奥で、何かが“反応”した。

 

 

 ドクン、と。

 

 

 まるで——

 

 

 応えるように。

 

 

 ◇

 

 

 そして。

 

 

 その変化を。

 

 

 すでに、“見ている者”がいた。

 

 

 白い部屋。

 

 

 モニターに映る、アカネの姿。

 

 

「……やはり、そうか」

 

 

 低い声。

 

 

 司令官000。

 

 

「興味深い」

 

 

 その目に映るのは——

 

 

 期待か。

 

 

 それとも。

 

 

 別の何かか。

 

 

 まだ、誰にも分からない。


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