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【一章は毎日更新】記憶を失った魔法少女、世界の違和感に気づく  作者: mr.iwasi
第一章「破壊編」

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炎の魔法少女

『戦闘区域:第七ブロック。悪魔反応、急速拡大中』


 


 無機質な声が、空間全体に響き渡る。


 


「アカネ、ここで待ってて」


 


 炎の装備を纏った高宮が、振り返る。


 


「絶対、動かないで」


 


 その声は、さっきまでとは違っていた。


 優しさの奥に、はっきりとした“命令”の色がある。


 


「……う、うん」


 


 頷くことしかできない。


 


 次の瞬間。


 


 高宮の姿が、消えた。


 


「……え……?」


 


 遅れて、風が吹き抜ける。


 


 速い。


 目で追えないほどのスピード。


 


 


 モニターに視線を向ける。


 


 そこに映し出されていたのは——


 


 “戦場”だった。


 


 


 街の一角。


 道路はひび割れ、建物の窓ガラスは砕け散っている。


 


 そして、その中心にいたのは——


 


「……あれが……悪魔……」


 


 


 黒い塊。


 


 いや、“塊”と呼ぶにはあまりにも不安定だった。


 


 輪郭が揺らぎ、伸び、崩れ、また別の形になる。


 人の顔のようなものが浮かんでは消え、子供の落書きのような歪な手足が伸びる。


 


 見ているだけで、気分が悪くなる。


 


 


 ——その前に。


 


 


 赤い閃光が走る。


 


 


 高宮だ。


 


 


「はぁッ!!」


 


 


 炎を纏った拳が、悪魔の中心を撃ち抜く。


 


 


 爆ぜるような衝撃。


 


 


 黒い身体が大きく歪み、悲鳴のようなノイズが響く。


 


 


『——■■■■■■■ッ!!』


 


 


 言葉にならない声。


 


 それだけで、空気が震える。


 


 


 だが、高宮は止まらない。


 


 


「逃がさない——!」


 


 


 地面を蹴る。


 


 炎の軌跡が、一直線に伸びる。


 


 


 次の瞬間。


 


 


 回し蹴り。


 


 


 炎が渦を巻き、悪魔の身体を吹き飛ばす。


 


 


「……すごい……」


 


 


 思わず、声が漏れる。


 


 


 速い。


 強い。


 迷いがない。


 


 


 まるで、戦うために生まれてきたみたいに。


 


 


 ——でも。


 


 


 違和感があった。


 


 


 完璧すぎる。


 


 動きに無駄がない分、どこか“機械的”に見える。


 


 


 感情が、見えない。


 


 


「……なんで……」


 


 


 あんなに強いのに。


 


 どうして、少しだけ——怖く見えるんだろう。


 


 


 そのとき。


 


 


 悪魔の身体が、大きく膨れ上がる。


 


 


「っ——来る!」


 


 


 高宮が距離を取る。


 


 


 次の瞬間。


 


 


 黒い腕のようなものが、無数に伸びた。


 


 


 地面を叩き、建物を貫き、空間そのものを裂くような攻撃。


 


 


「ちっ……!」


 


 


 高宮は紙一重でそれを回避する。


 


 だが——


 


 


 一本が、肩をかすめた。


 


 


「っ……!」


 


 


 火花が散る。


 


 装備の一部が、削れる。


 


 


『■■■■■■■■■■!!』


 


 


 悪魔が、さらに暴れ出す。


 


 


 さっきまでとは明らかに違う。


 


 力が、増している。


 


 


「……成長、してる……?」


 


 


 その言葉に、背筋が冷たくなる。


 


 


 高宮は一瞬だけ息を整え——


 


 


「……なら、出し惜しみしてる暇ないか」


 


 


 そう呟いた。


 


 


 両手に、炎が集まる。


 


 さっきよりも濃く、重く、熱い。


 


 


 空気が、歪む。


 


 


「これで——終わり」


 


 


 静かに言い放つ。


 


 


「——フレア・ブレイカー」


 


 


 放たれた炎は、“柱”だった。


 


 


 一直線に伸びる、圧倒的な熱量。


 


 


 それが、悪魔を真正面から貫く。


 


 


 閃光。


 


 爆発。


 


 そして——


 


 


 黒い影が、音もなく崩れ落ちる。


 


 


 静寂。


 


 


 戦いは、終わった。


 


 


「……すごい……」


 


 


 もう一度、同じ言葉がこぼれる。


 


 


 完全勝利。


 


 誰が見ても、そう言える結果だった。


 


 


 なのに——


 


 


 胸の奥の“何か”が、ざわついている。


 


 


 ——違う。


 


 ——それじゃ、足りない。


 


 


「……え……?」


 


 


 自分の中から聞こえたその声に、思わず息を呑む。


 


 


 足りない?


 


 何が?


 


 


 あれだけの力で、十分じゃないのか?


 


 


 分からない。


 


 分からないのに——


 


 


 もっと、“壊せる”気がした。


 


 


 もっと、“簡単に終わらせられる”気がした。


 


 


「……なんで……」


 


 


 自分の考えとは思えない。


 


 


 なのに。


 


 


 その感覚だけは、やけにリアルだった。


 


 


 そのとき。


 


 


 通信が入る。


 


 


『対象の排除を確認。戦闘員は帰還せよ』


 


 


 機械的な声。


 


 


 それを聞いた瞬間。


 


 


 高宮は、何も言わずにその場を離れた。


 


 


 まるで。


 


 


 最初から“終わりが決まっていた”みたいに。


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