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魔法少女の末路は、死か、悪魔か。~壊れていく正義をたどって~  作者: mr.iwasi
第二章「再生編」

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堕ちる

 警視庁の廊下は、妙に静かだった。


 人の気配はある。


 だが、どこか張り詰めている。


 事件が続いているせいか——空気が重い。


 その中を、高宮は歩いていた。


 迷いはない。


 目的がある足取り。


 だが、その表情は硬い。


「……ここか」


 小さく呟く。


 目の前の扉。


 関係者以外立入禁止。


 だが——


 躊躇はしない。


 ノックもせずに、開けた。


---


 室内。


 資料が並ぶ。


 モニターには、未確認生命体の映像。


 その前に立っていたのは——


 一人の男。


 振り向く。


 鋭い目。


「……誰だ」


 短く問う。


 高宮は、一歩踏み込む。


「話がある」


 単刀直入だった。


 男——上条は、わずかに眉をひそめる。


「関係者か?」


「違う」


 即答。


「でも、関係ある」


 その言い方に、少しだけ空気が変わる。


「……要件は」


 上条が促す。


 高宮は、モニターに映る映像を見る。


 異形。


 破壊。


 そして——戦っている“何か”。


「それ」


 指差す。


「私が関わってる」


 沈黙。


 上条の目が、わずかに細くなる。


「……冗談にしては趣味が悪いな」


「冗談じゃない」


 一歩、近づく。


 視線がぶつかる。


「だから言いに来た」


 少しだけ間を置く。


「これ以上、関わってくるな」


 静かに言う。


 命令でも、お願いでもない。


 ただの“線引き”。


 だが——


 上条は即座に首を振った。


「無理だな」


 迷いがない。


「これは事件だ」


 視線を外さない。


「子供がどうこうって話じゃねぇ」


 その一言に。


 空気が、少しだけ冷える。


「……子供?」


 高宮が低く呟く。


「そう見えるか」


「見える見えないの話じゃない」


 上条は淡々と返す。


「これは公安が扱うレベルだ」


「民間人は下がれ」


 完全に“大人の論理”だった。


 線引き。


 守るための言葉。


 だが——


「……は」


 高宮が、小さく笑う。


 乾いた笑い。


「守る、ね」


 一歩、引く。


 だが、その目は冷たい。


「何も知らないくせに」


 吐き捨てるように言う。


 上条の眉がわずかに動く。


「……知ってる必要はない」


 短く返す。


「現場を止めるのが仕事だ」


「被害を広げない」


 それだけだ。


 シンプルで、揺るがない。


 高宮はしばらく黙る。


 その言葉を噛み締めるように。


 そして——


「……じゃあ」


 顔を上げる。


 目が合う。


「止めてみろよ」


 静かに言う。


「私も含めて」


 その一言は、挑発ではなかった。


 どこか——試すような響き。


 上条は、少しだけ間を置く。


 そして。


「必要なら、やる」


 はっきりと言った。


 高宮は、それを聞いて。


 ほんの一瞬だけ——


 何かを確かめるような顔をした。


 だが、すぐに消える。


「……そう」


 背を向ける。


 ドアへ向かう。


「後悔するなよ」


 それだけ残して、出ていった。


---


 扉が閉まる。


 静寂。


 上条はしばらく動かなかった。


 やがて、小さく息を吐く。


「……関係ある、か」


 さっきの言葉を思い返す。


 そして。


「……厄介なのに踏み込んだな」


 苦く呟いた。


--------------------------------


 最初は——ほんの小さな違和感だった。


「……これでいい」


 高宮は、そう思っていた。


 誰よりも早く動き。


 誰よりも多くの情報を集め。


 誰よりも先に、敵に辿り着く。


 そのために——少しぐらい、ルールを外れること。


 それは、必要なことだと。


---


 最初の嘘は、軽かった。


「……見つからなかった」


 本当は、見つけていた。


 だが、組織にも警察にも渡さない。


 自分で処理するために。


 “効率”のために。


 それだけだった。


---


 次は——利用。


「このルートを通れば、安全だよ」


 そう言って、別の誰かを動かす。


 危険な場所へ。


 自分の代わりに。


 それでも、心は痛まなかった。


 “必要な犠牲”だと、思っていたから。


---


 やがて——裏切り。


「……ごめん」


 口ではそう言いながら。


 行動は違った。


 仲間を置き去りにする。


 助けられたはずの人を、見捨てる。


 その方が、目的に近づくから。


 それだけの理由で。


---


「……なんで」


 誰かが言った。


「なんで、そんなことできるんだよ」


 高宮は、少し考えて。


「……早く終わらせたいだけ」


 そう答えた。


 その言葉に、もう迷いはなかった。


---


 気づいたときには。


 周りに、誰もいなかった。


 連絡は来ない。


 視線は、冷たい。


 信用は——完全に消えていた。


---


 それでも、高宮は止まらない。


「……あと少し」


 そう言い聞かせる。


「もう少しで、全部終わる」


 その“全部”が何なのか。


 もう、自分でもよく分かっていなかった。


---


 夜。


 一人で立つ。


 誰もいない場所。


 静かな空間。


「……はは」


 小さく笑う。


 その笑いは、空っぽだった。


「ほんと……バカみたい」


 手を見る。


 震えている。


 血もついている。


 でも——


 止める気は、ない。


---


「……でも」


 顔を上げる。


 目は、もう迷っていない。


「ここまで来たんだから」


 一歩、踏み出す。


 闇の中へ。


「最後まで、やるしかないでしょ」


 その背中は——


 もう、誰も止められなかった。




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