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魔法少女の末路は、死か、悪魔か。~壊れていく正義をたどって~  作者: mr.iwasi
第二章「再生編」

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独白

 規則的な音だけが、響いていた。


 ピッ、ピッ、と。


 命がまだ繋がっていることを示す、機械の音。


 白い天井。


 白いシーツ。


 その中央で——


 アカネは、眠っていた。


 動かない。


 呼吸はある。


 だが、目を覚ます気配はない。


「……」


 ドアが、静かに開く。


 入ってきたのは、一人の少女。


 整った立ち姿。


 落ち着いた足取り。


 ——ボルト。


 ベッドの横に立つ。


 アカネの顔を見る。


 少しだけ、目を細めた。


「……思ったより、ひどいわね」


 小さく呟く。


 指先に、微かな電気が走る。


 だが、それを当てることはしない。


 ただ、見つめる。


「無理もないか」


 静かな声。


「“自分”と殺し合ったんだもの」


 椅子に腰掛ける。


 足を組む。


 しばらく、何も言わない。


 ただ——見ている。


「……ねえ」


 ぽつりと、話しかける。


「夢、覚えてる?」


 返事はない。


 当然だ。


 それでも続ける。


「あの世界」


「あなたが“アカネ”って呼ばれてた世界」


 わずかに、視線を落とす。


「あれ、全部——私よ」


 静かに告げる。


 まるで、告白のように。


「作ったの」


 部屋の空気が、少しだけ重くなる。


「記憶も」


「流れも」


「名前も」


 一つずつ、積み上げる。


「全部、私が書いた“警告”」


 沈黙。


 機械音だけが響く。


「あなたの記憶がないのも」


「000が、何気なくあなたの名前を呼んだのも」


 指先に、再び電気が走る。


「全部、繋がってる」


 目を細める。


「だって——そうしないと、気づかないでしょう?」


 誰にともなく言う。


「この世界が、どれだけ歪んでるか」


 立ち上がる。


 ベッドに手を置く。


「……あなたは特別なのよ」


 優しく。


 でも、どこか冷たく。


「生まれたときから」


「“アカネ”って名前を与えられて」


「悪魔を埋め込まれて」


 ほんの一瞬。


 表情が揺れる。


「……ほんと、最悪よね」


 小さく笑う。


 自嘲のように。


「でも」


 視線が鋭くなる。


「それでも、あんたは選んだ」


「壊す側じゃなくて」


「進む側を」


 少しだけ、間。


「だから——」


 顔を近づける。


 囁くように。


「起きなさいよ」


 返事はない。


 ただ、機械音が続く。


 ボルトはしばらく見つめて——


 背を向けた。


「……まだ、時間はある」


 そう言って、部屋を出ていった。


---


 暗い部屋だった。


 光は最低限。


 機械の音だけが、規則的に響いている。


 その中央に——高宮は立っていた。


「……来たか」


 声がする。


 振り向く。


 そこにいたのは——村上。


 穏やかな笑み。


 だが、その目は冷たい。


「話は聞いているよ」


 ゆっくりと歩み寄る。


「君はもう、“普通”には戻れない」


 断言だった。


 高宮は、何も言わない。


「でも」


 村上は続ける。


「それは悪いことじゃない」


 一歩、距離を詰める。


「むしろ——選ばれたということだ」


 静かに、囁くように。


「力が欲しいんだろう?」


 その言葉に。


 高宮の指が、わずかに動く。


「全部、終わらせるための力」


 沈黙。


 やがて——


「……あるなら」


 小さく呟く。


「寄越せ」


 迷いはなかった。


 村上は、満足そうに笑う。


「いいね」


 手を上げる。


 機械が作動する。


 低い音。


 空気が変わる。


「ただし」


 その中で、村上が言う。


「一つだけ、忠告しておく」


 視線が鋭くなる。


「人間では、いられなくなる」


 間。


 高宮は——


「……知ってる」


 それだけ言った。


 もう、引き返す気はない。


「なら問題ない」


 村上が頷く。


「これは——」


 装置が起動する。


 黒い光が、高宮を包む。


「死神の魔法少女」


 低く、告げる。


「死んでも動き続ける存在だ」


 光が強くなる。


 体が軋む。


 骨が鳴る。


 それでも——


 高宮は叫ばない。


 ただ、耐える。


「……いい顔だ」


 村上が笑う。


「そのまま壊れていけ」


 光が弾けた。


---


 静寂。


 煙の中から——一歩。


 足音が響く。


 現れたのは、高宮。


 だが、その姿は——もう違う。


 傷だらけの体。


 だが、再生している。


 ゆっくりと。


 確実に。


「……これが」


 自分の手を見る。


 震えはない。


 痛みも——ない。


「いいだろう?」


 村上が言う。


「どれだけ壊れても、止まらない」


 高宮は、何も言わない。


 ただ——


 一歩、踏み出した。

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