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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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アンデッドグランドドラゴン戦①+???

大阪④:ダンジョン万博in大阪 後編

 屋上の中央に転がったままのサイコロ6個が、夜風に押されてもまだ1の目を上に向けていた。

 そしてほのかに光を発したサイコロは、徐々に消失していく。


 「おっけー。条件消化、誓約確認……効果発動」


 久遠が言葉を発した後に、3人の身体へ刻印が打たれる。


 「おっ! すごっ!! これ回数タイプじゃん」


 「時間制限ではなく?」


 「うん。回数使い切るまで永続効果だね」


 「すげぇなそれ。何回だ?」


 「1回。さすがに複数回はないわー」


 「ですね。そこまで効果発揮した時の歪みが怖い」


 「さぁて。じゃあ遠慮なくあいつをボコりますか」


 「賛成!」


 「フォーメーションは服部が中衛、ことねは前衛で」


 「おう」

 

 「りょーかい」


 服部が手すりの方へ、東雲が屋上の中央寄りへ、久遠は建物の端まで寄った。

 

 「東雲」


 「分かってる」


 東雲が左手を空にかざすと、手のひらの上にひと呼吸遅れて厚みのある革表紙の魔導書が姿を現す。

 本のサイズはやや大きめで、表紙の縁には細かい銀の刻印が走っている。

 空中で表紙が勝手にめくれ、ページが流れるように動き、止まるべき場所で止まった。

 羊皮紙風のページの上で、文字列がまるで水のように揺れている。


 服部は背中の長刀の柄を握り直した。

 柄の側面に組み込まれた小さな魔道具が、薄く青白く光る。

 鞘から抜き放った瞬間、刃は短い小刀の長さしかなかった。


 その刃の根元から、一段、刃が伸びた。

 最終的に、長刀のサイズで止まった。

 刃の表面は、見方によっては薄く透けている。


 久遠は屋上の手すりに片手をついて、もう片方の手で小手の留め金をキュッと締め直していた。

 手首から肘の手前まで覆う銀色のミスリル製小手は、関節部分が可動式で、表面に古い意匠の彫りが入っている。


 もう一度、小手の固定を確認する。


 「うん、いける」


 遠くで、アンデッドグランドドラゴンが咆哮を上げた。

 腐属性ブレスを溜め込む咆哮は、夜空の星をいくつか覆い隠すほど巨体が膨らむ動きと同時に走る。口腔内に灰色と紫が混ざった光が膨らみ始めた。


 3人の足の向きが、同時にドラゴンの方角へ揃う。


 「来るぞ」



 ◇



 東雲の指が、開いていたページの上に置かれる。


 「敷け、風の盾。逸らせ── 《エアル・ベイル》」


 屋上の正面の空気が、薄く青く染まっていく。

 風のうねりが目に見えるほど集まり、屋上の正面に向かって斜めに切り立った壁を作る。

 ドラゴンの口腔から、灰色の光線が吐き出される。

 光線は屋上の壁にぶつかると、進路を捻じ曲げられて、リングの空中側へ斜めに逸れていく。

 腐属性の灰色光線が夜空に弧を描いて、ダンジョンと現世の境界付近で激しく衝突する。


 ブレスが逸れた瞬間、服部が屋上の柵を蹴る。

 大きく跳躍したそれは、まるで弾丸の如くドラゴンの首元の高さまで瞬時に上がり、空中で「幻刀・玄之丞」を上段に構える。


 「── 蜃刀しんとう


 服部の囁きと同時に、半透明の刃が一瞬で倍の長さに伸びた。

 落下しながら振り抜くと、伸びた刃がドラゴンの首鱗を1枚、根元から剥がす。

 剥がれた鱗の下から、灰色の血が滲む。腐肉の匂いが周囲に広がる。


 「思ったより硬いな」


 ドラゴンが首を振って、服部を払いのけようとするも服部は刃を引き抜いて、首の根元の鱗にもう一度当てて、空中で身を回しながら離脱した。


 久遠は服部が跳躍するのと並行して、屋上の手すりを勢いをつけて踏み切っていた。

 空中で身体を一回転させ、ドラゴンの腹下の死角にもぐり込む。

 魔力を纏わせたミスリルの小手が鈍く光る。


 「おらっ!」


 腹部の鱗を連打した。

 まるで重機で打ち付けたかのような重苦しい音が連続で響く。

 1発、2発と、間隔を変えずに撃ち抜いていくと、打撃のたびに灰色の血が、霧のように散る。

 そして数秒間の連撃後、すぐさま距離を取り服部と合流する。


 「うー、固ーい」


 久遠の表情はゆるんだままだが、手を振って痺れを散らしていた。


 「ことね、魔力の通りはどうだ?」


 「うーん、めっちゃ悪い。あいつ魔力でガチガチ」


 「俺の刀も通りが随分と悪い。鱗1枚飛ばしただけでこの通りだ」


 幻刀・玄之丞は刃の部分に刃毀れが目立つ。

 それを見せると服部は魔力を込めて刃を復活させた。


 「消耗戦は分が悪いな」


 「引き付ければ勝ちっしょ」


 「まぁな」


 2人が接近戦を繰り広げるていた時、東雲は別のページに指をすべらせていた。

 スキルブックのページが、左から右に勝手にめくれて、別の魔法に切り替わる。


 「凍てつく息、形を持て── 《フロスト・スピアズ》」


 空中に、小さな氷の槍が10本ほど生成された。

 槍はそれぞれ別の方向から、勢いよくドラゴンの翼の付け根に向かって飛んでいく。

 鱗の隙間に当たった氷の槍は、半分ほど突き刺さって止まった。


 ドラゴンが大きく羽ばたいた。

 翼の打ち下ろしが衝撃波になって、フレームの手前の空気を勢いよく吹き飛ばす。

 服部と久遠はすぐに離れて空中で姿勢を整え、パビリオン屋上へ着地。

 久遠は、服部とは逆位置のパビリオン屋上に退避する。

 東雲は風魔法の壁を畳んで、詠唱姿勢を一度切った。


 改めて距離を取る3人を明確な敵と見定めたアンデッドグランドドラゴンは、フレーム前に着地すると、距離を詰めようと徐々に向かってくる。

 

 服部が長刀の刃を肩に乗せて、2人を見た。


 「フレームから引き剥がせてる、いいぞ」



 ◇


 「東雲っ! 俺らが時間稼ぐっ!!」


 東雲はスキルブックを胸の前で広げ直した。

 中央のページが、淡く光り始める。

 光はページの周囲に渦を巻いて、東雲の周りの空気の流れがその一点に圧縮し始めていく。


 「了解。チャージ開始」


 服部が柄を握り直しながら東雲の方には視線をやらず、久遠に声だけで返した。


 「ことねっ!」


 「おっけー」


 久遠が小手に魔力を集中させる。

 屋上の手すりを蹴って、再びドラゴンの腹下へ。服部もほぼ同時に、屋上の縁から空中に跳ぶ。

 空中で2人の動きが、上下で別の弧を描いた。


 「── 隼落とし」


 「百鬼連拳っ!」


 服部の刃が、急降下の勢いを乗せて首の別の位置に入る。

 鱗を切断し腐肉に刃が食い込むが、手応えの悪さを感じた服部は、切断範囲を広げる方向に刃を向ける。


 同時に久遠は魔力を濃密に纏わせた両手で一撃一撃が重い連撃を容赦なく腹部へ浴びせ倒す。

 鱗を魔力が貫通・中和して腐肉の奥まで魔力撃が浸透する感触を残していた。

 ただ、アンデッドグランドドラゴンは、攻撃を無視するかのように腹を急激に膨らまして行く。

 

 「やべっ! ことねっ!」


 「あいあいさー」


 すぐさま距離を取る2人を追撃するべく、アンデッドグランドドラゴンは朽ちて割けた口を大きく開けて、雄叫びを上げた。


 魔力を潤沢に含んだ衝撃波は単純だが、周囲に絶大な威力をまき散らした。

 一瞬で瓦礫と化すパビリオンを盾に見立てて距離を取る2人は、ギリギリ射程範囲外へ退避することに成功する。


 「あいつダメージ全無視か…」


 「アンデッド化してるからなーうすうす感じてたけど」


 ちらりと東雲のほうへ視線を向けると、魔力の高鳴りを感じはするが、まだ溜まりきっていないことを確認する。


 「ことね、次はスイッチでいく」


 「おっけー」


 

 ◇

 


 空中で、シオの足が俺の腰を巻いたまま、減速をかけてくれている。

 最初は落下の速度がそのまま乗っていたが、触手の長さがすこしずつ伸びて、空中の何かに引っかけているような動きで、落下速度を段階的に削っていく。

 

 視界の中で夜のパビリオン群が下から上へ流れていたのが、徐々にゆっくりとなっていった。

 隣接するパビリオンの屋上の床面に、足の裏がすっと触れる。


 触手がゆるりと俺の腰からほどけて、シオが肩の上に戻ってきた。

 動きはいつもより遅い。

 恐らく神聖領域の発動と、この運搬で相当消耗している。


 「死んだかと思った」


 シオは小さく身体を上下に揺らしただけで、返事はなかった。

 配信機材は、シオが器用に触手と化した足で握っており、配信中のマークが点いたままで、コメント止まるどころか勢いが増しているようだった。


 遅れて桐野が大きく身を翻して降りてきた。

 両足で着地して、髪を一度かき上げる。


 「真壁さん、無事?」


 「なんとか…生きてます」


 「シオも、お疲れ様」


 シオがちょん、と肩の上で身体を傾けて、桐野の方に応えた。


 「あー、本職装備持ってきてればなー」


 桐野が小さく漏らしたのは、たぶん俺に向けたぼやきではない。

 あの八咫烏のメンバーですら装備は最小限だった。

 これはダン博内に入るために必要な装備解除ではあるが、今回はこれが思いっきり裏目に出ている。

 ダン博内の警備もほぼ無力化されているし、いまリング内で満足に動けるのは俺らしかいないことから明白だ。


 俺は手の中の配信機材を、いったん脇に挟んで、フレームの方へ意識を向けた。

 ここからだとリング経由で裏を簡単に取れそうだ。

 ちょうど八咫烏のメンバーたちも交戦に入り、注意がそちらに向いているいまがチャンスである。

 

 「リングを南東から回れば、コアまで一直線です」


 「了解。先導するね、私が前」


 桐野が屋上の連絡通路の入り口に向けて、先に歩き出す。

 俺はシオを肩に乗せたまま、すこし遅れて続いた。

読んでいただきありがとうございます。

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