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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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オープンワールド型ダンジョン⑤

 何もない空から生まれ出てくる、そんな気配を醸し出しながらまばゆい光と共に、一つの立方体が落ちてくる。

 そしてそのサイコロはある程度落ちたところで、空中に静止した。

 

 「サイコロ?」


 俺の鑑定スキルが無意識に走る。


 ――――――――――――――――――――――――――――

 運命のサイコロ(固有スキル【運命視】の具現体)

 希少度:S

 状態:具現化進行中

 危険度:なし(術者側に効果適用)

 推定価値:算定不能(個人スキル産物・市場流通なし)

 術式痕:運命系固有スキル・確率干渉型

 備考:具現化したサイコロ数に応じて運命表のグレードが上昇。

 一度だけサイコロを振ることができ、その出た目に応じた運命表の効果が発揮される。

 運命表の効果はサイコロの数、使用した状況など状況に応じて変化する。 

 出目のゾロ目や、指定の出目で上位効果の発動条件を満たすことがある。

 ――――――――――――――――――――――――――――


 「む? サイコロの装飾がいつもと違うぞ」


 「ぬぬぬ…?」


 「サイコロの目の色も全部赤になってますね」


 宙に浮いているサイコロは白地だが、金と銀で細かい装飾がなされている。

 続いてまた何もない空から同じようにまばゆい光と共にサイコロが落ちてくる。

 そしてまた同様にサイコロが落ちてくる。

 

 「……あ、あれ」


 久遠の表情が驚きと疑問の色を同時に見せる。

 3つ目が出現した後に、緊張感が抜けたような雰囲気を八咫烏のメンバーは見せるも、また空からまばゆい光を発し、4つ目のサイコロが宙に静止した。


 「う、うそ…」


 サイコロは続けて5つ目を増やし、そして6つ目で生成を終えた。


 「サイコロ……6個…」


 服部が、サイコロの数を一度視界に収め、再度数を確認してから久遠の方を見る。


 「ことね、お前の最大記録、いくつだったか」


 「………3個」


 「いつだ」


 「えっと……2年前に、一度だけ」


 「……6個の前例は、運命系全体で報告がない」


 3人の間に微妙な空気が流れる。

 だが、この久遠のスキルはここで終わらない。


 「つぎ……運命表くるよ」


 久遠がそう言った直後、屋上の中央の空気が、ぴしりと一度音を立てる。

 辺り一面、いきなり黄金色に染まった。

 配信画面も、あまりの光量に白く飛ぶ。


 空中には、長方形の何かのシルエットだけが辛うじて見える。

 全員眩しすぎて手で遮ったり、薄目で光量を絞ったりしてはいるが、全く効果がない。

 更に光量が増して、一点に光が集中したと思うと、いきなり弾けて周囲を光の屑が舞い散る。

 周囲に黄金と銀の花々は散って、そして消えていく。


 「……なにが起こってるんです?」


 そしてゆっくりとまばゆい光を纏った、一枚の紙が宙から降りてくる。

 それを久遠は受け取ると、急に顔を顰めた。


 「………いままでこんな演出なんてなかった」


 「それに…運命表の紙が随分と豪華というか紙厚があるな」


 「それだけじゃありません。何かの賞状みたいにありとあらゆる場所に金と銀の装飾がなされてます」


 『は?演出豪華すぎて草』

 『金虹+花びらとか完全に確定演出やん』

 『これ天井で引いた時のアレだろ』

 『運命表が課金アイテムみたいになってる件』

 『SSR以上の何かが来てる気がする』

 『SSR草』


 「……これ、ふつうの運命表じゃ…………は?」


 久遠が運命表の内容を確認して止まる。

 服部も横から運命表を一度読んでから、東雲の方を勢いよく振り返る。


 「おい東雲、これ見て見ろ」


 「既に見ているが……」


 「えっと、本当だと思う…けど……」


 久遠は俺らを一度見渡した。

 

 その時であった。

 遠くで、アンデッドグランドドラゴンの咆哮が、夜空を引き裂いた。

 腐属性ブレスを撃った時の咆哮よりも、低く、重く、そして長い。

 大気がビリビリと震えていくのが肌を通してわかるほどに強烈な咆哮だった。


 フレーム上空の巨体が、滞空の角度を一段だけ深く落とした。

 目の中の赤い色が、一段だけ濃く灯っている。


 「……来るぞ」


 服部が、背中の長刀の柄に手を添える。

 東雲は手元に魔導士専用のスキルブックを具現化させた。

 桐野が俺の前に出ようと、構えの形を再度取る。


 全員がサイコロから目を離した瞬間、シオの殻の下から、細い足の一本が、触手のようにするりと宙に浮いているサイコロへと伸びていく。

  

 触手のように伸びた足の先が、サイコロをひと束に絡め取り、そのまま宙にサイコロを放り投げる。

 そして同時にシオからもう一本、別の足が触手のように伸びて触手が勢いよく俺の腰のあたりに巻き付いた。


 「なっ?? ちょ! お前、待——」


 言い終わる前に、床から一気に引き上げられたような、浮遊感が俺の身を襲う。

 視界の先にはシオの足が俺に絡みついて、そして俺を引っ張るかのように空に舞った。

 そしてご丁寧に配信機材も持ってきており、気のせいかこちらに配信機材を向けているような気がした。


 「真壁さんっ!」


 桐野の声が、後ろから聞こえる。

 振り向くと屋上の柵を蹴って、空中に飛び出してくる桐野の姿があった。

 そして空中にもかかわらず距離を急速に詰めてくる。


 そして配信機材の画面が、まだ配信中のマークを点したまま揺れていた。



 ◇



 サイコロは遅れて服部の前に落ちた。


 「ずいぶんとせっかちだな…」


 落ちて少し転がり、そして出目がそろう。


 「……げっ!」


 「うそ」


 「ここでこの目を出しますか」


 地面に転がるダイスの目は全てぞろ目の『1』が見えていた。

 

 「6分の1が同時に出る確率ってどんなもんなんだ?」


 「約0.00214%くらいですね」


 「計算はっや。きも」


 そしてちらりとフレームの方を確認し、長刀の柄に手を添えたまま、服部が八咫烏の2人に告げた。


 「まぁいいか。これで多少無理してあいつと戦えるってのはデカいな」


 「残機+1はある意味チート」


 「そろそろ来ますよ」


 3人が向き合った方向には力を貯めたアンデッドグランドドラゴンが、今まさにブレスを吐こうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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