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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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ダン博に行ってきました⑦

 楽屋を出ると、関係者通路の人通りはまばらだった。

 桐野が振り返らずに、軽く言った。


 「先にご飯たべる? 関係者向けのとこに案内するわ」


 「あ、お願いします」


 パビリオンの裏手側には関係者しか出入り出来ないエリアがある。

 一旦、イベントステージを出てそちらに進むと、仮設エリアが見えてきてその中に関係者・スタッフ向けの軽食レストランがあった。


 受付で桐野がIDを見せると、奥のテーブル席に通される。

 店内は、大ホールの祝祭感とは別物の落ち着いた空間だった。

 客は探索者らしい集団・運営スタッフ・各国パビリオン関係者がまばらに座っていている。


 メニューを軽く眺めて、お互いに注文した。


 「シオ、お前もご飯にしようか」


 シオをテーブルの端に乗せる。

 鞄から小皿をとりだして魔、力やら色んな物が混ざったシオ専用の謎液をその上に数滴足らした。

 待っていました、とばかりに小皿に近寄って謎液をあっという間に平らげた。


 「お、まだ欲しいんだな」


 もっとくれ、という感情が届き、俺はまた何滴か垂らしてはシオが速攻で平らげるを何回か繰り返した。


 「へぇ…そうやってシオちゃん食べるんだ」


 「食べる量は日に違いますけど、最近は増えてきてますね。成長してるのかな」


 シオは満足したのか、小皿から距離を取った。

 それを見て俺は小皿を軽く拭いて鞄にしまう。

 その間にシオは器用に俺の肩上へと登ってきていつものポジションに落ち着いた。 


 そして料理が運ばれて来るまでの間、軽く雑談をかわす。

 料理が並ぶと、桐野が一口食べてから軽く息を吐いた。


 「いやぁ…今日のイベント、客の食いつきヤバかったわ」


 「そうなんですか?」


 「真壁さんマジで天然なのね」


 「天然…自覚はないです」


 「他の探索者ってもっとガツガツしてるの。スカウトだのコラボだの自分から積極的に仕掛けてくるわ」


 桐野がフォークでパスタをくるっと巻いた。


 「真壁さんはそれが全くない、それが逆に新鮮!」


 「探索者になったの最近ですから。それに戦闘職じゃないですし」


 「ダンジョンに出入りする鑑定士もちょっと珍しいけど」


 「そうですかね。管理局の回収場所にはちょいちょい見かけますけど」


 「それは普通の鑑定スキル持ちでしょ。鑑定士で、更に上位鑑定士が出向く場所じゃないわ」


 この探索者業界では実際に戦闘に赴くか、それともバックアップに回るかの二択で評価が分かれる。

 探索者、この単語だけで言えば間違いなく花形職ではあるが、その中でも格差は当然あって、俺の鑑定スキルは間違いなく下の方だ。


 鑑定スキルも幅があって、物の名前などしか分からない者もいれば、もっと状態とか細分化してみることが出来る者もいる。

 スキルは成熟度次第で効果は変わるが、鑑定スキルは何をすれば成長していくのか未だに不明なスキル群の一つであり、突然覚醒する者もいれば、一生成長しない者も数多く存在する。


 なんでも鑑定できて、その価値が表面の情報だけでは分からない何かを暴くことが出来れば、それはオンリーワンの価値のあるスキルだとは思うが、実際にその域に達している者は世界的に見てもわずかしか存在しない。


 それだけ鑑定スキルというものは、一般の価値観としてラインに乗りずらいスキルとも言えるだろう。



 ◇



 食事を終えて雑談しつつレストランを出ると、日は暮れかける時間になっていた。

 

 「もうちょい時間潰してから上行こ」


 「分かりました」


 パビリオン区画の裏手から例の関係者待遇で中をショートカットで見て回る。

 明らかに通常の待遇ではない、桐野の関係者待遇はあらゆる場所で強力な効果を発揮していた。


 「桐野さんの持ってる関係者専用のID、明らかに通常の優先待遇じゃないですよね」


 「ウチのクランは世界でも結構大手だからね。こういう世界的な催し物だと強いのよ」


 桐野が言っていたお目当てのパビリオンの裏手に回ると、そこもやっぱり関係者専用の入り口だった。受付でIDを見せると、スタッフが軽く敬礼に近い動作で奥のエレベーターを示した。


 屋上専用らしく、ボタンは1Fか屋上の2択しかない。

 エレベーターに乗り込み屋上へ向かうと、そこは屋外に存在する、いわゆるルーフトップバーになっていた。


 パビリオンの屋上に、こんなルーフトップバーがあるとは改めて驚いてしまう。

 周囲を見渡すとカウンターと低めのソファ席が並んでいおり、客は数組だけで、いずれも関係者らしくお酒を飲みながら談笑していた。


 周囲には視界を塞ぐ高い建物は存在せず、視線の先にはリングに沿って池でもあるウォータープラザが見える。

 そのウォータープラザが夕暮れ時を示す空の色を映していて、その真ん中に巨大なフレームが立っていた。

 会場の人波は夕日を見るためなのか、リングの外周をゆっくりと流れており、一方でこの後何かのイベントを待つかのようにウォータープラザ前に出来ている観客席へと集まっていた。

 

 「どこに連れてるかとおもってましたが、すごい場所ですね」


 「ね、ここいいでしょ。私もたまにくる」


 ウォータープラザが見下ろせる位置にあるソファーへ座ると、桐野がカクテルらしいものを頼んだ。

 俺はノンアルコールのものを選んで、店員に告げる。


 「明日も仕事だからこれくらい」


 「自分もあんまり強くないので」


 シオが、ソファーの上に降りてちょこんと座る。

 周囲が気になるのか珍しく机の上に移動したり、せわしない動きを見せる。


 飲み物がすぐにきて、桐野が、グラスを軽く合わせるしぐさをした。

 俺もグラスを持ち上げて、応じる。


 その時、会場のスピーカーからアナウンスが流れ始めた。


 「19時37分より、本日の噴水ショーを開催いたします」


 「噴水ショー、ここから見えるんですね」


 「うん、ベスポジ」


 「なるほど。たしかに面白い場所だ」


 「でしょ」


 空が、橙から夜の青に寄り始めている。

 ウォータープラザの縁に沿って照明が薄く灯り始めており、中央のフレームに当たる照明だけが一段強く灯っている。


 いつの間にか客も増えており、屋上の縁には多くの客たちが並んでいた。

 俺と桐野もウォータープラザの方に視線を向け、始まるまでの間軽く雑談をしていた。


 時刻まで、あと数分。


 シオが、殻の縁をほんの少しだけ光を揺らした。

読んでいただきありがとうございます。

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