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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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33/84

除去対象だった幼体が、仮同行になった日

 翌日、俺は横浜へ向かった。


 昨日の夜には浅田からは『現地で10時に』という一言だけ届いていた。

 内容が内容だけに今日は配信を入れていない。


 みなとみらいの駅で降りてダンジョンに向かうと、浅田とその後ろに田中が立っていた。


 「昨日の続きですが、本日は現地で処理します。幼体の状態を再確認して、問題なければ仮同行扱いに切り替えます。そして鑑定結果を添付して申請を通します」


 「分かりました」


 その後、民間鑑定士の証明書を提示してから、3人で入場した。



 ◇



 B5Fまで降りるのに20分ほどかかる道程だ。


 ダンジョン内にこもる湿度は変わらず高い。

 潮の匂いが強く感じられるダンジョンで、一般的には水系、若しくは水属性ダンジョンと呼ばれる。

 壁の青緑が照明を受けて薄く光り、薄暗い一般的なダンジョンとは違って青が目立っていた。


 通路の奥へ進むと、潮魔石の青白い光が次第に密度を増していった。

 昨日と同じ角を曲がって、母岩の前に出る。


 昨日と同じ場所に、青灰色の塊が張りついていた。

 特に変わりはなく、昨日見つけたあの幼体は同じ場所にくっついている。

 

 大きさは縦4センチほどで半透明の殻が重なって、内側にわずかな光の揺らぎが見える。


 昨日は付着物だと思って見ていた。

 今日は殻の形が周囲の岩盤と、別の構造をしていることがすぐに判別できる。


 「気のせいか少し沈んで見えますね」


 「ええ。昨日より弱ってるように感じます」


 壁面に張りついたまま、ほとんど動かない。

 改めて【鑑定】を向けた。


 ――――――――――――――――――――

 潮晶殻獣(幼体)

 希少度:S

 状態:衰弱(環境変化による進行中)

 危険度:低

 汚染:なし

 現在価値:算定困難

 備考:母岩への依存状態が続いており、現環境では衰弱が進行している。

 継続的な母岩環境での生存は困難と判断。一時保護・環境移行を推奨。

 管理局管理下での仮同行可。無許可飼育不可

 ――――――――――――――――――――


 「昨日より進んでいます。このままにしておくのは無理みたいです」


 浅田がスマホを取り出した。


 「一時保護申請、通します」


 スマホのタップ音が通路に響いた。

 申請番号が発行されて、浅田が続けた。


 「鑑定結果を添付します。証明書番号を」


 番号を答えると、しばらく入力が続いた。


 「仮同行許可、出ました」


 浅田が確認画面を向けてきた。

 申請番号・許可種別・条件3点が並んでいた。

 管理局への月次報告、異常時の即時通知、飼育環境の記録。


 「これで持ち帰れます」



 ◇



 俺は壁に向かった。


 幼体の周囲に指先をゆっくり差し込んだ。

 壁面の潮魔石層を傷めないように、殻の縁と岩盤の接触部分を確かめながら進める。

 昨日より接着が弱くなっていて、少しの力で動いた。


 慎重に引き剥がした。


 思ったより軽かった。殻はひんやりしている。

 両手に乗せると、脈というより振動に近い細かい揺れが手に伝わってきた。

 弱くて、遅い揺れだった。


 目のような何かは半開きで、こちらを見ているかどうか分からない。

 身を守る姿勢も取っていない。ただそこにある、という状態だった。


 浅田が管理局の保護容器を開いた。

 半透明の硬い素材で、内側に薄い緩衝材が敷いてある。


 容器の中に収めると、幼体はそのまま動かなかった。


 「仮同行、成立です」


 「はい」


 ただ、容器の蓋が閉まったあとも、手に残った細かい揺れがしばらく消えなかった。

 殻のひんやりした感触と、弱くて遅い振動。

 拾ってきた素材を袋に入れたときの感覚とは、明らかに別のものだった。



 ◇



 来た道を戻り始めた。


 浅田が歩きながらスマホを確認していた。


 「申請の控えと月次報告の様式は、事務所に戻ってからメールで送ります」


 「お願いします」


 搬入口に出る手前の通路を歩いているとき、保護容器の中の幼体が動いた。


 首とも頭ともつかない部分が、わずかにだが俺のバッグの方へ向いた。

 殻の内側の光が、一瞬だけ揺れる。

 短い音が出た。

 鳴き声というよりは、硬いものが微かにぶつかるような音だった。


 何に反応したのか、俺には分からなかった。

 バッグの中には回収道具と、先月拾った旧式封印筒の触媒片が入っている。

 どれに反応したかは判断できない。


 「今の、何ですか」


 田中が容器を覗いた。


 「分かりません」


 そのまま出口へ向かった。

 浅田はそのことについて特に言及することもなかった。



 ◇



 自宅に戻ったのは夕方だった。


 机に保護容器を下ろして容器の中をまじまじと見る。


 幼体は容器の中でほとんど動かない。

 殻の内側には一定した間隔で薄い光の揺らぎがある。

 呼吸しているのか、それとも代謝の働きなのか、判断するための情報が今は手元にない。


 翌週から月次報告の義務が始まり、飼育環境の記録もある。


 「ちゃんと成長してくれよ…」


 俺の言葉に反応したのか、容器の中の幼体がごくわずかに動いた気がした。

 だが、次の瞬間には止まっていた。

真壁「こいつ何食べるんだろ…野菜とかかな…」

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