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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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ただの付着物だと思われていたそれは、希少幼体だった

 朝、浅田からメッセージが届いた。


 『本日の同行は管理局スタッフが1名です。前回の切り出し地点から周辺20メートルを確認してください。専門チームを入れる前の事前確認になります。それ以外にも付着反応の未確認ポイントもあるので、周辺状況踏まえてそちらも見ていただければ』


 『わかりました。周辺含めて確認します』


 鑑定に必要な工具と配信機材、民間鑑定士の証明書を鞄に入れる。

 横浜は品川より少し遠いので、いつもより早めに家を出た。



 ◇



 みなとみらいの駅で降りてそのままダンジョンへ向かうと、入口近くに管理局のスタッフが立っていた。

 30代前後の男で、タブレットを持っている。


 「真壁さんですね。田中といいます」


 「よろしくお願いします」


 証明書を提示してから、田中に確認した。


 「今日も中で配信は進めて問題ないですか」


 「はい。浅田から聞いています。記録として残してもらえると助かります。機密に触れそうな場面が出たら、こちらから声をかけます」


 「お願いします」


 中に入ってから、スマホを取り出して配信を始めた。


 「今日は横浜に来ています。母岩付近の追加確認で、前と同じように管理局の方が同行しています」


 『横浜また来た』

 『追加確認って何があるの』

 『楽しみ』


 「大きな発見があるかどうかは分かりません。確認作業です」



 ◇



 B5Fまで下りるのに20分ほどかかった。


 みなとみらいのダンジョンは湿気が多く、地面もぬかるみや水たまりが出来ている箇所がある。

 こんなに水気を感じるダンジョンは品川第七ふ頭ダンジョンでは無いので、毎回来ると新鮮に感じてしまう。


 壁の方に目を向けると壁の青緑が照明を受けて薄く光り、ダンジョン内の色味という部分でも大きく違いを感じられた。


 「ここまで水気が来るんですね」


 「みなとみらいのダンジョンはこんな感じですよね」


 母岩の前に出た。

 壁一面の潮魔石が青白く輝いている。

 前回より明度がわずかに落ちているような気がしたが、母岩自体に変化はない。



 ◇



 切り出し地点から周辺を確認し始めた。


 田中がスマホにメモを取りながら並んで歩く。

 付着物の位置と種類を丁寧に記録していく地味な作業だ。


 今回の目的でもある母岩一帯の調査を進めつつ、配信にてその状況を細かく説明しながら進めていった。


 『ダンジョンとして開放するには手間かかるんだな』

 『国内でも水系ダンジョンは多くないからな。通常より面倒そうだ』

 『できれば水系の魔物とか見たかったな』

 『そういえばこのダンジョンはどこまで層があるんだろ?』

 

 俺は配信をしつつ、この全面に形成されてある母岩を丁寧に鑑定をかけながら見ていく。

 

 「結構母岩とは関係ない付着物も多いですね」


 そんなことを言いつつ、鑑定の邪魔になる付着物を田中は確認しつつ、丁寧に剝ぎ取っていく。


 「この付着物も一応、ダンジョン局の鑑定チームに回しておきますか。資料として後で保存してくれとか言われると面倒ですし」


 田中はそう言いながら、目の前の付着物を丁寧にはぎ取って保持専用ボックスに収納していく。


 次に壁の低い位置にあった青灰色の小さな塊に目を付けた。


 縦4センチほどで、半透明な殻のようなものがあった。

 周囲の岩盤と似た色をしていて、母岩の副生成物か、剥がれかけた付着物のように見える。


 田中が工具を取り出しながら言った。


 「この辺の付着物を保存しておきましょうか。専門チームが入る前の予備資料にも使えそうですし」


 返事をしかけて、目を殻に戻した。


 殻の形が、周囲の結晶と微妙に違う。

 表面の層の重なり方が、岩盤の堆積物とは別のものに見える。

 

 気のせいで終わらせてもよかった。

 ただ、目を向けた瞬間に、【鑑定】が普段の素材とは違う引っかかり方をしていた。


 「待ってください」


 田中が工具を握ったまま手を止めた。視線がこちらに向く。


 「何か気になりましたか」


 すぐには答えなかった。

 もう一度、殻の表面に目を寄せると半透明の層が、照明の角度で薄く色を変える。

 岩盤の堆積物にしては、層の重なり方が整いすぎていた。


 ここで【鑑定】を向けた。


 ――――――――――――――――――――

 潮晶殻獣(幼体)

 希少度:S

 状態:衰弱(母岩周辺の環境変化による)

 危険度:低

 現在価値:算定困難

 備考:潮魔石母岩の周辺環境にのみ生息する希少幼体。封印物・異常術式・埋蔵魔力への感応性が高く、成体になると魔力探知の補助として高い需要がある。現在は母岩周辺の環境変化により衰弱している。無許可飼育不可。管理局への一時保護申請の対象。種判定・危険度判定・汚染有無確認のうえ、保護判断を推奨

 ――――――――――――――――――――


 「生きてます。除去しない方がいいです」


 田中が視線を上げた。

 

 「……生きているんですか、これが? 魔物ですか」


 「魔物ではない…かな。潮晶殻獣の幼体で、希少度はSです。分類としては共生型に近いと思います。母岩の環境に依存して生きていて、攻撃性はほぼない。駆除や討伐の対象ではなく、保護申請の方に乗る種です」


 田中がスタブレットの方を開いて何かを確認しようとしたが、すぐには見つからないようだった。


 配信コメントがすぐに沸いた。


 『付着物が生き物だったの?』

 『希少度S?』

 『さっき落とそうとしてた』

 『ギリギリだった』

 『あれか?ダンジョン由来生物ってやつか??』


 「勝手に連れ出す段階じゃないです。手続きが先です」


 田中が工具をしまった。


 「一時保護申請になりますね。私では判断できないので浅田さんに上げます。今日は触らない方がいいですか」


 「はい。このままにしてください」



 ◇



 浅田に現地から写真と鑑定結果を送った。


 少し時間が空いた後に返信が来た。


 『確認しました。保護判断を正式に取ります。明日、もう一度来ていただけますか。現地で一時保護申請の手続きを進めます』


 『分かりました』


 田中と並んで来た道を戻り始めた。


 通路を曲がる前に、後ろを一度振り返る。

 壁の青灰色の塊が、ごくわずかに動いたように見えた。

 確認しようとしたが、次の瞬間にはもとの位置に戻っていた。

読んでいただきありがとうございます。

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