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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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23/86

古い袋の中には、ロマンが詰まっている

 翌朝、馴染みの買取業者に魔力共鳴石を持ち込んだ。


 担当者がペアで置かれた2つの石を見て、しばらく動かなかった。


 「これ、どちらも同じ石ですか」


 「同一個体から割れたものです」


 「一緒に持ち込まれるのは初めてです。バラけると価値がないので、たいていどちらか片方しか来ない」


 慎重に光に当てながら確認して、155,000円の提示が出た。


 「もし今後もペアのものが出たら、ぜひ持ってきてください」


 「また見つけたら必ず」


 帰り際、修復業者から着信が入っていた。

 

 『封印部屋から見つけてこられた2点、仕上がりました。時間があるときにどうぞ』


 留守電メッセージになっており、結構かかったな、と思いつつもそのまま受け取りに向かった。



 ◇



 修復業者で受け取った2点は、どちらも見違えるようだった。


 旧式魔力増幅器は外側の破損が補修されて、内部の術式が可視化できるほど安定している。

 「現代品より術式の組み方が丁寧です」とのことだった。


 修復費用を支払い、俺はその足で魔道具専門の業者を回った。

 旧式魔力増幅器が190,000円、魔力蓄積型護符が52,000円の値が付いた。


 改めて封印部屋の5点合計を計算してみると、今日までに手元に入った分だけで、合計35万円を超えている。

 修復費用を差し引いても、十分に黒字になっていた。

 地図に載っていなかった部屋から、これだけのものが出てきたことになる。


 「鑑定スキル様々、だな」



 ◇



 昼すぎ、管理局から指定された住所に向かった。


 民間登録士としての最初の正式依頼だ。


 相手は30代の男性探索者で、個人で活動しているらしい。

 事務所代わりに借りているらしい小さなワークスペースで待っていた。


 「真壁さんですか。先日登録されたばかりだと聞きましたが」


 「そうです」


 「大丈夫ですか」


 「登録は最近ですが、鑑定そのものは慣れています」


 大丈夫ですか、か。

 たしかに登録したてだし、その不安は当然だろう。

 その分、仕事の結果をもって証明していかないと行けない、そんな立場に俺は望んでなった。


 「はぁ。わかりました。本日依頼したい物はこれです」


 テーブルに装備が8点並んでいた。

 剣2本、護符3枚、魔石2点、腕輪1本。

 最近1年で買い集めたものらしい。


 1点ずつ鑑定していった。


 7点は問題なかった。相場に見合った品質で、汚染も偽造もない。


 8点目の腕輪に【鑑定】を向けたとき、少し引っかかった。


 ――――――――――――――――――――

 魔力循環腕輪(封印状態)

 希少度:B

 現在価値:低(封印のため)

 封印解除後推定価値:18万〜25万円

 備考:外見は劣化した普通の腕輪に見えるが、内部に術式が封じられている

 封印は意図的なものであり、専門業者による解除が可能

 封印解除前に鑑定できる者がいなければ、そのまま安値で手放される可能性が高い品

 推奨:魔道具封印解除の専門業者への持ち込み

 ――――――――――――――――――――


 「この腕輪、封印がかかっています」


 男が眉を上げた。


 「封印、ですか。壊れてるんじゃなくて」


 「意図的に術式を封じた状態です。解除すれば、18万〜25万円の価値になります」


 しばらく沈黙があった。


 「いくらで買いましたか」


 「8,000円です。中古品の市場で」


 「封印状態だから安値がついていたんだと思います。専門業者に持ち込んでください」


 男が腕輪をしばらく見つめた。

 それから深く息をついた。


 「鑑定士に頼んでよかった。ありがとうございます!」


 「他の7点は問題ありませんでした。きちんと見て買われていると思います」


 鑑定した詳細を書類に記載して依頼者へと渡す。

 この用紙は管理局が定めている書式で、登録した時に浅田さんからもらったものだ。

 記載後に、誰が鑑定したかを示す鑑定士番号と名前を署名する欄があり、俺は緊張気味にそこに署名した。


 それから報酬を受け取って帰路につく。

 最初の正式依頼は、思ったより静かに終わった。



 ◇



 夜、18回目の配信を始めた。


 登録者は11,250人になっていた。


 「今日はB3Fを回ります。上層は細かいものが残りやすいので、丁寧に見ていきます」


 入口で中年スタッフと目が合った。


 「今日も来たか」


 「はい」


 「昨日、見慣れない奴が何人か入口のあたりをうろついてた。配信目当てかもしれん」


 「そうですか」


 「気をつけろよとは言わないが、まあ、気にしておけ」


 それだけ言って立ち去った。

 正体特定スレの話が現場にまで届いているのかもしれない。


 気持ちを切り替えてB3Fに入った。


 今夜はいつも以上に丁寧に動く。

 壁際から通路の隅、段差の下など。

 普通なら視線が向かない場所を一つずつ確認していく。


 コメントがゆっくり流れていた。


 『地味に好きなやつ』

 『くまなく探してる感じが落ち着く』

 『今日はどんなの出るかな』


 40分ほど進んだところで、通路の脇に古い革袋が落ちていた。


 ひとこぶし大で、くたびれた茶色の皮製だ。口が紐で縛ってある。

 汚れていて、見た目はただのゴミだ。


 「これ、袋ですね。拾えそうですが」


 『それ完全にゴミじゃない』

 『何入ってると思う』

 『鑑定して』


 拾い上げると、思ったより重かった。

 袋の大きさに合わない重量がある。


 「……重い。見た目のわりに」


 【鑑定】を向けた。


 ――――――――――――――――――――

 次元収納袋(旧式・内容物あり)

 希少度:B(収納機能込み)

 現在価値:中(内容物による)

 備考:魔力で編まれた旧式の収納具。外見より大きな空間が内部に展開されている

 現在、内部に複数の物品が収納された状態

 袋自体の素材が劣化しているため、収納機能は間もなく失効する可能性あり

 推奨:速やかに内容物を取り出すこと

 ――――――――――――――――――――


 コメントが止まった。


 「……中に何か入ってます。外見より大きな空間が内側にあって、複数の物品が収納されてる」


 『は?』

 『袋の中に空間が?』

 『開けて開けて』

 『なんで誰も気づかなかったの』


 「見た目が完全にくたびれていて、誰もがゴミだと思うからですかね。俺だって鑑定スキルが無ければこれは拾わない。どうも劣化してきてるみたいなので、今取り出しましょうか」


 紐を解いた。口を広げると、外側の大きさではありえない深さがあった。


 手を差し込んだ。


 最初に出てきたのは、小さな布包みだった。

 開くと、深い赤色の魔石が入っていた。


 【鑑定】を向けた。


 ――――――――――――――――――――

 紅魔石・上位種

 希少度:A

 推定価値:22万〜28万円

 備考:魔力の密度が高く、触媒・素材として幅広い用途がある

 保存状態が良好で、品質の劣化なし

 ――――――――――――――――――――


 「……22万〜28万円の魔石です」


 コメントが一気に流れた。


 『いきなり??』

 『袋から22万が出た』

 『最初からこれ??』


 「まだ中にあります。続けます」


 2点目を引き出した。細い金属製の腕輪だ。


 ――――――――――――――――――――

 銀魔合金製腕輪

 希少度:B

 推定価値:5万〜7万円

 備考:銀と魔鋼の合金製。軽量で耐久性が高い

 装備品として、または素材として価値がある

 ――――――――――――――――――――


 「腕輪です。5万〜7万円」


 3点目。丸められた紙のようなものだ。


 ――――――――――――――――――――

 旧式術式書(一部解読可能)

 希少度:C

 推定価値:15,000円〜2万円

 備考:古い術式の記録書。専門家であれば部分的に解読可能

 希少性は高くないが、研究・資料目的での需要がある

 ――――――――――――――――――――


 「術式書ですね。2万円前後」


 4点目を引き出した。護符だ。3枚まとめて束ねてある。


 ――――――――――――――――――――

 封護符・旧式(劣化)×3

 希少度:D

 現在価値:ほぼなし

 備考:術式が経年劣化で失効している。素材としての価値も低い

 ――――――――――――――――――――


 「これは価値なしです。護符なんですが、術式が切れてます」


 『4点中3点は価値があった』

 『22万の魔石が入ってたのが全部持っていった』

 『誰が何でここに置いたんだろ』


 「分かりません。かなり昔に落とされたのか、誰かが隠したのか。袋自体が劣化してたので、長い時間が経ってると思います」


 袋の中をもう一度確認した。空だった。


 「以上です。袋自体もいずれ使えなくなるみたいなので、今夜取り出せてよかった」


 『完璧なタイミングだった』

 『これが回収屋の目か』

 『普通に踏んで通り過ぎてたと思う』


 「踏んでた人は何人もいると思います」



 ◇



 配信を閉じると視聴者は12,500人を超えていた。


 帰り道、久しぶりに正体特定スレを開いた。


 『先週の深夜、品川第七ふ頭のダンジョン入り口付近でフードの男を見た。身長は170〜175センチくらい。一人で入口から入っていった。あの人じゃないですか』


 目撃談だ。

 ネット上の推測ではなく、実際に現地で見た人間の書き込みのようだ。


 気味が悪くなり、スマホを閉じる。


 中年スタッフが言っていた「見慣れない奴がうろついていた」という話と繋がる。

 意識している人間が、現地に来るようになっていた。

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