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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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探偵・真壁遼④

 AIC鑑定室を出たあと、そのまま別室へ向かうのかと思っていた。


 だが、護衛に案内されたのは地下の搬入口だった。


 搬入口に出ると、黒い公用車が2台止まっている。

 窓は薄く曇っていて、中は見えない。


 「真壁さん、こちらにお乗りください」


 「移動するんですか」


 俺が聞くと、護衛は短く頷いた。


 「はい。新藤の移送先はここではありませんので」


 「行き先は?」


 「霞が関ダンジョン庁の施設です」


 その名前が出てきた時点で、だいたい嫌な予感しかしない。


 「シオ、勝手に触るなよ」


 『みるだけ』


 「そう。見るだけ」


 そう言いながら、俺は車に乗り込んだ。


 車は有明WEGセンターを出て、しばらく都内を走った。

 着いた先は、外から見ると普通の庁舎のように見える。


 看板には、総合資料保管センターとだけ書かれている。

 表には付けられず、そのまま裏まで車は進むと、そのまま地下駐車場へ向かった。


 「着きました。少々お待ちください」


 護衛が守衛と話をしており、そしてすぐに外から出るように指示が入った。

 一見するとどこにでもあるオフィスビルの地下駐車場だが、守衛がどこか違って見えた。


 俺は横目で守衛をみつつ、そのまま認証ゲートの方へ進んだ。

 そこでようやく、護衛が小さく言った。


 「ダンジョン庁、特異災害対策局。深層事案特務室の管理施設です」


 「名前が長いですね…」


 思わずそう言うと、護衛は表情を変えずに答えた。


 「よく言われます」


 案内された先は、白い壁の小さな部屋だった。

 白い壁にやけに明るい照明が明らかな違和感を感じ取ってしまう。


 何となく、部屋そのものに鑑定を通す。


 ――――――――――――――――――――

 深層事案特務室 要注意対象用簡易確保室

 分類:戦闘能力保持者・スキル保持者用一時収容区画

 状態:使用中

 機能:外部通信遮断、音声記録、魔力反応監視、簡易封印維持、スキル発動抑制

 壁面:白色封止塗料ミュートコート全面塗布

 床面:衝撃吸収層/魔力拡散層併設

 天井:高出力スキル反応時の自動封鎖術式あり

 異常:なし

 備考:一定以上の戦闘能力を持つ対象を、物理拘束なしで一時的に留めるための部屋。

 壁面塗料は術式・スキルの初動を拡散し、発動前に反応を鈍らせる。

 対象者の拘束に重きを置く部屋で、ここに入ると著しく様々なものを強制的に制限させてしまう。

 室内の記録は特異災害対策局の管理下に置かれる。

 ――――――――――――――――――――


 「……どんな危険人物を閉じ込めてるんだここは…」


 俺のボヤキに護衛が少しだけ驚いた表情を見せた。


 「やっぱり真壁さんレベルだとスキルは発動しますか…」


 「あ、すいません」


 「いえ、大丈夫です。あちらになります」 


 部屋の前には明らかに一般人とは呼べない、立ち姿からして相当なレベルの探索者と思われる黒服が立っていた。


 「こちらです」


 中に入ると、新藤雄二は椅子に座っていた。

 両手は机の上に置かれているが、何かの術式で縛られているようにも見える。

 ちなみに物理的な拘束具は見えない。


 視線を少しだけ左右に動かすと、部屋の四隅には黒服が立っていた。


 手厚く保護、か。

 たしかにそう言えなくもない。


 本人がそれを保護だと思っているかは、別として。


 新藤は俺を見た瞬間、顔をこわばらせた。


 「……あんたは…」


 「どうも」


 挨拶として合っているのか分からないが、とりあえずそれしか出なかった。


 そして政府側の職員が、机の横に立つ。


 「真壁さん。先ほどお伝えした通り、取り調べは我々が行います。あなたにお願いしたいのは、彼に残る痕跡の確認です」


 「ええ。可能な限り見てみます」


 新藤がそこで顔を上げた。


 「は? 何の話だよ」


 新藤が声を上げると、何かに反応したのか全身に術式が浮かびだす。

 そしてそれが口元にも表れ、途端に口が強制的に閉じた。

 

 「……っ!!」


 俺はそれを見て新藤と護衛を交互に見る。

 職員が俺の行動を見てこの状況を補足した。

 

 「制限術式を新藤に課しています。人体内に残るタイプの術式なので、こういう部屋にはとても相性がいいんですよ」


 「な、なるほど?」


 「とりあえず鑑定が出来る部屋に移動しましょうか」


 職員の言葉に護衛が口を挟んだ。


 「いや、ここでいい。真壁さん、ここでも鑑定スキルは使えますよね?」


 「あ、はい。多分」


 俺の言葉に職員は「えっ?」と口走った。


 「ここ、スキル制限区画ですよ??」


 「真壁さんはそういう人だ」


 護衛の言葉に、職員は「まぁそうですよね」とだけ口にして鑑定を促した。


 「まずはざっと見てみます」


 俺は新藤に向かって鑑定スキルを発動した。

 前と比べて明らかに抵抗が薄い。

 前までは人に向かって鑑定するときは、ちょっとした壁を感じていた。

 そして鑑定が新藤に通ると、そこには思わず目を細めてしまいそうな内容が表示されていた。

 

 ――――――――――――――――――――

 名前:新藤雄二(偽名の可能性あり)

 分類:外部協力業者/登録上は保守技術者

 探索者登録:なし

 探索者換算:B級相当

 戦闘適性:近接制圧、短距離離脱、遮蔽物利用

 状態:制限術式下/発動抑制中

 異常:氏名・生体認証情報に偽装層あり

 表示名:新藤雄二

 照合結果:登録生体データと現在の生体反応に微細な不一致

 偽装方式:術式性生体情報上書き/短期認証向け

 接触痕:非登録識別媒体、外部保守用細型調整棒、放送同期系中核補助層

 残留:呪詛系統補助反応微量

 背後関係:外部指令系統との接続痕あり

 行動理由:本人判断ではなく、認証媒体を介した作業指示に従った可能性

 備考:新藤雄二という登録情報そのものが偽装されている可能性が高い。

 本来の氏名・所属は偽装層により判定不能だが、深く鑑定を通せば判定可能。

 推奨:封印済み所持品、登録生体データ、入館認証ログとの再照合。

 ――――――――――――――――――――


 「……この人のパーソナルデータはどこで確認を?」


 俺の問いに職員が僅かに強張る。


 「……WEG東京から提供してもらった登録データからですが…」


 「多分…というか鑑定結果からですけど、恐らく偽名です。本人の生体データを何らかの方法で偽っています。そして、この人が中継核に仕込み直した人というのは確定です」


 「……まさか!」


 俺の言葉に新藤は身じろぎをするも、がっちりと固定されてほぼ動くことは出来なかった。


 「こいつ、禁術使ってるな…真壁さん、こいつの本当の名前などはわかりますか?」


 「ええ。多分追えます」


 新藤はやめろとばかりに必死になって動いたり、声を出そうとしたりと抵抗を試みる。


 「……なんかもぞもぞ動いてますけど…」


 「あぁ、大丈夫です」


 護衛はそう言うと奥の黒服に視線を送ると、新藤はまるで電気ショックでも浴びたかのように、身体を痙攣させ、そして項垂れた。


 「……生きてますよね??」


 「えぇ。殺すほどはしていません」


 「………では見ます」


 大人しくなった新藤を再度鑑定する。


 ――――――――――――――――――――

 偽装登録情報《新藤雄二》

 実体照合名:前島竜二

 分類:偽装身分使用者/工作協力者

 探索者換算:B級相当(魂魄術式影響で戦闘力ランクダウン中)

 登録経路:外部保守会社経由でWEG関連業務へ潜入

 偽装方式:術式性生体情報上書き/短期認証突破用

 背後関係:未登録組織系統との接続痕あり

 接続媒体:薄型識別片、認証カードケース、外部指令系統

 作業目的:放送連携魔道具への再汚染準備

 行動理由:本人判断のみではなく、外部指令に従った可能性が高い

 備考:前島竜二本人の経歴にも改竄痕あり。

 偽装名《新藤雄二》は、入館認証と作業記録に通すための表層情報。

 魂魄術式を利用して生体データを魂魄の薄い層に載せている状態。

 そのため、一時的なデバフがかかっている状態。

 推奨:前島竜二名義の探索者履歴、国外渡航記録、外部保守会社との接点照合。

 ――――――――――――――――――――


 「……本名、前島竜二、と出ました。とりあえず、鑑定結果を記載したいんですが」


 「それではここに書き込んでください」


 渡されたバインダーの中に、今回見えた鑑定結果を書き込んでいく。

 それを職員に渡し、護衛もそれを見た。


 「……おいおいおい! 前島ってあの前島か?!」


 「こんなとこに大物が潜入していたとは…」


 「…そんなに有名な人なんですか?」


 護衛は職員と視線を合わせた。


 「……真壁さんは知っておくべきでしょうね。当事者でもありますし。この前島竜二という者はとある組織で活動している有名なブラックリスト、いわば世界のお尋ね者です。世界の探索者組織はもとより、各国が全力で追っていた国際的なテロリストなのですが、まさかWEGに潜伏しているとは…」


 「なんにせよすぐに上に報告は上げるぞ。そして防衛体制を根本から見直す必要がある」


 「そうですね。私はすぐにダンジョン庁に報告します」


 「俺は内閣府の特命チームに上げる。そしてこいつはすぐ特別警戒区画に移送しよう。流石にここでは管理しきれない。一時的に戦闘力を自ら下げていたのが、こいつにとっては仇となったな」


 「真壁さんも移動しましょう」


 「あ、はい」


 そして俺はすぐにこの部屋を出されて、区画から逃げるように車を走らせたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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