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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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探偵・真壁遼②

 修復工程の記録が集まるまで、思ったより時間はかからなかった。


 AIC鑑定室の端に、ノートPCが3台並べられる。

 御厨の指示を受けた職員たちが、それぞれ別の記録を開いていった。


 誰が修復に入ったのか。

 誰が部屋に出入りしたのか。

 封印ケースを開けたのは誰か。

 外部業者の搬入はどこで挟まったのか。

 作業端末は、誰の名前で使われたのか。


 WEG東京のセキュリティ部門とテック部門がすぐにやってきて、様々なデータを抽出していく。


 通常、入館記録やセキュリティと連動しているパーソナルデータは容易に見ることはできない。

 様々な上位者の承認がないとそもそも無理なのだが、WEG東京組織委員会の最上部が最上位命令をあっさりと発動し、今、目の前で普段みることのない裏方の専門家が集合しつつあった。


 「どこまでこれって追えるんですかね??」


 何気なく俺が誰に対しても無く呟くと、管理局職員が反応した。


 「このHQ含めて全ての管理区画の記録は追えます」


 「そこまで記録取ってるんですか??」


 「はい。このWEGというイベントグレードは世界最上位のグレードSに属します。これは何を意味するかというと、主催は立候補した自治体になります。そして開催にあたって国の保証を求められます。これはイベントというよりも、国としての活動にあたりますので、そこには国家機密も含まれます。ですのでセキュリティはかなり厳しくなります」


 「……認識が全然ちがってました」


 「世界各国の探索者だけが参加するわけでは無く、各国の王族や色んな関係機関のVIPも当然来場されます。なのでセキュリティに関しては、開催要項の一つとして定められています。なのでここだけではなく、開催会場も同様に厳しいセキュリティを設けています」


 「それは…すごいですね。じゃあかなり絞り込めそうですか?」


 「恐らくは。……真壁さんの考え通りなら、多分」


 「そっちの方の準備は??」

 

 「すでに周辺に動員はかけました。まもなく準備は完了するかと」


 「ありがとうございます。もっと簡単な方法もあるんですけど、それはまぁ最終手段で」


 「……それは…今伺ってもいい話ですか?」


 俺は苦笑いしつつ答えた。


 「とりあえずは、これが終わったあとですかね」


 「………わかりました。後できっちりと伺います」


 管理局職員はキリっとした顔を見せて、眼鏡をクイっと上げた。

 

 

 ◇



 「まず、リンクプリズム本体に物理接触した人間の記録を抽出します」


 設置したノートPCに限られた者しかアクセスできない管理WEBへログインすると、搬入した日から遡って抽出をかけていく」


 「分解、汚染核除去、封印確認、再構築、外装戻し。工程ごとに分けます」


 「お願いします」


 御厨が短く返す。


 そして数分後、最初に抽出で出てきた人数は32人だった。


 「もうそこまで絞り込めたんですね」


 俺が言うと、御厨はWEB画面から目を離さずに答えた。


 「放送連携魔道具です。関わる工程が多いものの、逆をいうと専門的な分野になるので、それだけ関われるものも絞られていきます」


 そこから実際に中継核に触れた人間を抜き出す。


 作業端末にログインしただけの人や、封印ケースを運んだだけの人。

 そして部屋には入ったが、作業台には近づいていない人、など。


 そういう直接的に関係がなさそうな人間を除いていく。


 しばらくすると、候補は17人にまで減っていた。


 さらに、封印ケースの開閉ログと作業時間を重ねる。

 外部業者の搬入記録も合わせる。

 誰がどの時間帯に、どの工程へ入っていたのか。

 画面上の名前が、少しずつ減っていく。


 「絞り込み終了しました。最終接触候補は、10名です」


 WEBの管理画面を操作していた職員が言った。

 端末に、10人分の名前と所属が並ぶ。


 AIC所属の鑑定士が3人。

 WEG運営側の技術担当が2人。

 外部保守会社の作業員が3人。

 搬送管理の担当が1人。

 記録補助が1人。


 見たところ、名前だけでは何も分からない。

 そこで俺は更に絞り込むべく、御厨に尋ねた。

 

 「この10人の作業備品は残っていますか」


 「作業備品、ですか?」


 そう言うと御厨はAICの職員に視線を向けた。


 「そうですね…全てを保管は流石にしていないですが、作業工程がここまである程度絞り込めているのなら、必ず使うであろう作業備品はこの場で用意可能だと思います。例えばですが、封印区域内で使用した手袋、工具ケース、簡易端末などはそのままにしてあるはずです」


 御厨がこちらを見る。


 「……まさかとは思いますが、それを辿れるんですか?」


 「多分ですけど。前に似たようなことをやったことがあるので」


 俺は大阪で見たあのタグを思い出す。

 

 断言はできない。

 だが、あの時もそうだったように作業痕が残っているなら、拾える可能性はある。


 俺の鑑定は、物の状態や履歴だけでなく、そこに紐づく因果までも妙な形で引っかかる。

 それがありがたいのか迷惑なのかは、今更なので考えないことにした。



 ◇



 「今、職員を走らせてそれと思われる備品や関連物品を順番で持って来させています」


 AICの職員がそう言うと、最初の一つを差し出した。


 作業用手袋だった。

 白い箱に、一つずつ封入されている。

 番号札が貼られ、誰が使ったものかは備考メモが貼り付けてあり、そこに記載されていた。


 「こちらに持って来られる物で、確実に使うであろう手袋類から持ってきました」


 「ありがとうございます。では順番に鑑定で見ていきます」


 俺の言葉に周囲は少しだけ懐疑的な視線を送るも、こいつならやりかねないな、という空気感も同時に出ていた。


 俺は一つ目を見る。


 普通の作業痕しかなく、それ以外に何か不審な点は特に無かった。


 「これは特に問題なさそうです」


 そして同じような手袋を順番に見ていく。

 だが特に問題のある痕跡はなかった。


 8番目で、目が止まった。


 ――――――――――――――――――――

 AIC封印区域用作業手袋

 使用者:新藤雄二

 分類:封印区域用消耗備品

 状態:洗浄済み/回収保管中

 付着:封印材微量、魔力粉微量

 残留:放送同期系中核補助層に近い整流処理痕

 一致傾向:リンクプリズム中継核外周部の人為的整流痕と一部一致

 備考:外装戻し工程のみでは発生しにくい指先処理痕あり。

 通常工具を介さず、薄い術式層へ直接干渉した可能性。

 推奨:本人使用端末、工具ケース、入退室記録との照合。

 ――――――――――――――――――――


 「使用者は新藤雄二……リンクプリズムの外装部の戻し工程で中継核に干渉した可能性があります」


 俺が言うと、近くの職員が管理画面で検索を始めた。


 「………外部保守会社、新藤雄二。作業区分は外装戻し補助のみと記録上ではあります」


 「新藤雄二が使用した物を他にも見たいです」


 御厨はすぐ動いた。


 「新藤雄二の入館履歴はどうなってますか?」


 「少々お待ちを……短期ではなく、外部協力業者としてHQ棟にあるテックフロアの席を与えられていますね。ロッカーも供与されているので、まずはそこから持ってきましょう」


 そう言うと職員はすぐに指示を出した。

 そして数分後、ロッカーの中にあった関連性のありそうな備品を箱に入れて運んで来た。

 

 中をのぞくと最初に目に飛び込んできたのは、黒い樹脂製の小さなケースだった。

 外部保守会社の備品らしく、AICの管理番号と別に会社側のラベルが貼られている。


 俺はケースをあけて中身を見る。


 中身は細い調整棒、簡易封印ピン、清掃用の布、魔力計測用の小型端子。

 どれも普通に見える。


 だが、細い調整棒だけ、先端の見え方が少し違った。

 金属の溝に、何かが薄く残っているようが気がする。


 「この調整棒、新藤雄二が使った物で間違いないですか」


 「記録上は、本人の工具として登録されています」


 鑑定結果は、もう一段だけ深く出た。


 ――――――――――――――――――――

 外部保守用細型調整棒

 使用者:新藤雄二

 分類:封印外装調整具

 状態:洗浄済み/返却済み

 異常:先端部に非登録術式層の接触痕あり

 残留:薄い呪詛系統補助反応

 一致傾向:リンクプリズム中継核外周部の整流処理痕と一部一致

 備考:外装戻し工程のみでは付着しにくい残滓あり。

 清掃済みだが、先端溝に微量の反応が残っている。

 推奨:本人確保。所持品検査。通信記録確認。

 ――――――――――――――――――――


 「……当たりです」


 言った瞬間、御厨は顔を上げた。


 「いま新藤はどこにいるかわかりますか?」


 「新藤雄二、現在は待機室Bにいます。記録照合対象として呼び出し待ちです」


 「呼んでください」


 だが、その直後、別の職員が声を上げた。


 「ちょっと待ってください。いま連絡が来てます! 待機室Bから退出申請。理由は体調不良。付き添いなしで医務室へ移動希望」


 部屋の中で、数人が同時に顔を上げる。


 一方の俺は落ち着いた表情で護衛の方を見た。

 視線の合った護衛は頷いた。 

最近気分を変えるために、普段なら絶対書かないであろうタイプの短編読み切り作品を書いてみました。


あずいず 〜男装美少女だと思われた僕は、妹と歌った動画で【姉妹ユニット】としてバズりました〜


ヒューマンドラマ〔文芸〕で掲載しております。

気分転換で作ったのですが、まさかの日間ランキング入りしてましたので少しは需要があるのかな?笑

箸休め気分で見ていただくといいかもです。

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