表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/146

鑑定スキル(前編)

 横浜みなとみらいダンジョンから出たあと、俺はやはりそのまま帰してもらえなかった。


 それもまあ、当然だとは思う。

 横浜みなとみらいダンジョン正式オープン初日の配信中に、シオが母岩から何かを受け取った。

 一番危ない部分は配信されていないが、俺のまた余計な鑑定結果を配信してしまっており、今後の世間の流れが容易に想像できてしまう。


 今はダンジョン横にある管理局内にいるが、外では相変わらず報道陣が集まっており、これから入ろうとしている探索者たちは緊急閉鎖にざわつき、横浜管理局の人たちはずっと走り回っている。


 その中心にいるのが俺とシオなのだから、普通に帰れるわけがない。


 「またやってしまった…」


 配信中であろうがなかろうがこの隙の多さが俺の欠点なのだが、もちろん直そうとしているのだが、中々上手くいっていない。


 榊たちは、「自分のとこのチャンネルに来ている対応をしなければならないです、すいません」と言って、早々にここから離れている。

 

 せっかくのコラボ配信なのに大変悪いことをしてしまった。


 「はぁ…また何言われるんだろうか…」


 シオはいつもの肩の上ではなく、今は膝の上にいる。

 多少サイズが大きくなっているのか、こちらの方が座り心地が良いらしい。

 

 「……お前は大丈夫か?」


 声をかけると、シオの殻の縁が少しだけ動いた。


 嫌な感じは返ってこない。

 むしろ、妙に穏やかだった。


 逆に俺の方が落ち着かないくらいだ。


「真壁さん」


 待機室にいた専属支援チームの職員が寄ってくる。


「日本ダンジョン学会から、追加確認の担当者が来ます」


「追加確認、ですか?」


「はい。横浜管理局、ダンジョン庁、学会側の三者で、まずはシオの状態を確認したいとのことです」


「……なるほど。それはその、安全保障的なやつですか?」


「どちらかというとシオの能力についての確認じゃないかと。呪いを祓った時からそういう話は出ていたそうで、今後の扱いとしてテイム登録枠にするにしても情報が無さ過ぎるので、ぜひ本格的に調査や確認したいとのことです」


 「それはわかります。このまま何も調べないまま進むってのは、色んな人が納得しない話なんでしょう。ですが、変な調査っていうんですか? 痛い思いをさせる調査や検査には同意できません」


 「もちろん、そういうモルモット的な調査や検査はありません。あくまでも意思を持った生物、そういう扱いで協力いただけないかと」


 専属支援チーム職員はそのまま続けた。


「母岩環境とダンジョン由来生物の相互反応。しかも、記録映像も残ってますし、何よりも真壁さんの鑑定ログ付きです。学会側からすると、放置できない案件であるということはご理解ください」


 俺は膝の上に座っているシオを見た。


 「……シオ、とりあえず協力できる範囲でいいから協力してもらえないか?」


 シオは殻をふりふりする。

 『おいしいごはん くれるなら いいよ』

 

 「……お、おまえ…どこからそんな知恵を…わかった。お願いしてとっておきのを用意してもらうからよろしく頼むよ」


 俺の言葉に専属支援チーム職員は驚いた表情を見せた。


 「もしかしてシオと会話したんですか?」


 「はい、前は言葉に近い感情が来るだけだったんですが、今ははっきりと意思表示できます」


 「そ、そうですか…ちょっと失礼します…」


 専属支援チーム職員は頭に手を添えたまま、部屋を出た。



 ◇



 それから1時間ほど待機していた。

 室内には俺とシオのみで、部屋は静寂が保たれている。


 「随分と待たされるなぁ、シオ」


 シオは殻に籠って無反応だ。

 恐らく寝てるんだろう。


 その時、待機室の扉がノックされた。


 「どうぞ」


 入ってきたのは、若い女性だった。


 黒に近い落ち着いた色のジャケットに、動きやすそうなパンツ。

 首から下げている身分証には、日本ダンジョン学会のロゴが入っていた。


 目が合った瞬間、相手は軽く頭を下げた。


 「はじめまして、御厨澪です。日本ダンジョン学会所属、特殊環境生態部会。鑑定士登録は特級です」


 御厨…その名字に、俺は少しだけ反応した。


 「御厨さん……」


 「祖父が玄斎、父が宗一郎です」


 「あ、はい。いや、どこかで聞いたことあるような…」


 「つい最近父がお世話になったそうで」


 「最近、ですか?」


 「あれ? たしかWEGのリンクプリズムでお世話になったって…」


 「あぁ、あの人か!」


 「そうです。あの人の娘です。澪、と呼んでください」


 「あ、はい」


 続いて入って管理局職員が入ってくる。

 それ以外にも関係者らしき人が続々と入室してきた。

 

 「この子がシオ、ですね」


 「はい」


 「………凄いですね」


 シオの殻の縁が、ほんの少しだけ動いた。


 「まず伺った要件ですが、私はシオに触れません。強制的な鑑定補助具も使いません。こちらで行うのは、真壁さんの鑑定ログの確認と、私自身の範囲内での……非接触鑑定です」


 「なるほど…」


 「シオが嫌がった場合は中止します」


 「シオには調査に協力してほしいと伝えて、条件出されましたがOKもらってます」


 「……条件、ですか?」


 澪は僅かだが目を細めた。


 「大した条件でもないんですが、おいしいご飯くれるならOKだそうです」


 「美味しい…ご飯??」


 「はい。シオ、それでいいんだよな?」

 

 シオは殻から顔を出して、触手をぺしぺしと何回か叩いた。


 『こいまりょくのおみず それと ませき』


 「え? 濃い魔力の水、それと魔石??」

 

 俺は御厨澪を見た。


 「………わかりました。用意します」


 御厨澪の受け答えと同時に職員が部屋を出る。


 「多分ここにはそういった保管庫があるので、すぐに提供できるかと思います」


 「ありがとうございます」


 『はよ』


 「………早く持ってきて、だそうです」


 「……わかりました。ではシオの前に真壁さんの方から先に済ませていきましょう」

 

 「わかりました」


 「真壁さん。動画では口頭でしか確認できなかったのですが、シオの詳細な鑑定ログを、もう一度鑑定で我々に共有することは可能ですか?」


 「それなら多分。母岩の方は直接見ないといけませんけど」


 「今はシオだけで結構です。鑑定ログは鑑定スキルで出て来たイメージを具体的にわかりやすく言ってください。いまから聞き漏れのないように録画もさせてもらいます」


 「わかりました。あ、それなら文字で書いた方が正確に伝わりそうですね」


 「……そこまではっきりと見えているのなら、そちらの方がこちらも都合がいいです」


 机の前に紙とボールペンが差し出された。

 そして俺はシオを見る。


 「シオ、鑑定でみるからおとなしくしててくれ」


 シオは殻をふりふりする。

 俺は息を整え、鑑定を通した。


 ――――――――――――――――――――

 潮晶殻獣(成長期)/個体名:シオ

 希少度:SSS

 格:高位生命体

 属性:光聖

 パートナー:真壁遼

 状態:安定/母岩環境反応後

 危険度:無し

 現在価値:算定困難

 登録区分:真壁遼の随伴個体/別管理対象

 所有スキル:光聖の指揮棒 光聖の魔導書 光聖の宝珠(第1段階)

 備考:潮魔石母岩の周辺環境にのみ生息するとされる希少幼体。

 封印物・異常術式・埋蔵魔力への感応性が異常に高い。

 初回確認時は母岩周辺の環境変化により衰弱していたが、現在は安定。

 母岩環境との再接触により、力の継承を行い光聖属性となる。

 生物としての格が一段階引き上げられ、万物に加護を与えることができるようになった。

 ――――――――――――――――――――


 俺は目の前に表示されてある鑑定結果を紙に写し始める。

 だが書くにつれて周囲から声が漏れ始めていた。


 「これが鑑定結果です」


 差し出したシオの鑑定結果に全員が釘付けになる。


 「…………あの、真壁さん。何点かお聞きしても?」


 御厨澪が鑑定結果を見つつ、上目遣いでこちらを見た。


 「あ、はい。御厨さん、どうぞ」


 「…澪、でいいです。……いま紙にそのまま鑑定結果を淀みなく書かれてましたが…普段からはっきりと鑑定結果がイメージ出来ているんですか?」


 澪の言葉に俺は一瞬悩む。


 「イメージ…ですか?? 普通に文字情報で出てきますので、それをそのまま写しただけですが…」


 俺の回答に全員が「えっ??」と一様に口を揃えた。

 すると後ろに立っていた学者風の男が口を挟む。


 「ちょちょちょっと、待ってください! では、いまこの鑑定結果はそのまま見えている、ということですか???」


 「はい、その通りですが…何か問題でも??」


 学者風の男は周囲の同僚と思しき人に視線を向けた。


 「……真壁さん。いつからこのように文字情報として鑑定結果を捉えていたんですか?」


 澪が真剣な眼差しでこちらを見ている。


 「いつからって…鑑定スキルが芽生えた時からこんな感じでしたよ? 目の前に鑑定結果を記したボードみたいなのが見えるんですけど。何かおかしいとこありますか??」


 俺の言葉に周囲は「まじかよ…」「これ本当に鑑定スキルなのか?」などと言った声が漏れ始める。


 「なるほど…わかりました」


 「わかってくれましたか」


 「はい。わからないということが、わかりました」


 「えっ?」


 「明らかに異常なまでの鑑定精度だな、と思ってましたがここまでとは…」


 澪は周囲を見回した。

 

 「……とりあえずですが、真壁さんの鑑定スキルについてはまた後程くわしく聞かせてください」


 澪がそう言うと、職員がシオのご飯をもって室内に入って来る。


 「ちょうどご飯がきましたし、シオの調査に移りましょう」

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ