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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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シオの里帰り③

 通路の奥へ進むと、広い壁面が見えてきた。


 空洞状になっているこの場所は、壁一面に青白い光の筋が無数に走っている。

 潮魔石の小さな結晶が、岩肌の内側から薄く光っていた。


 周囲を注意深く見渡すと、前に来た時よりずいぶん整えられている。

 壁面を傷つけないように保護柵が設置され、床には立ち入り位置を示す白い線が引かれている。


 俺らは、その線の手前で止まった。


 『前の配信の時と比べると随分人の手が入ったんだな』

 『なんか結構おおきくなってね?』

 『これ一面が魔石なんか』

 『ここがシオの出生地かぁ』

 『シオの出生地、ガチで重要区域』

 『ちょっと緊張する』


 「現在は母岩環境の変化を継続観察しています」


 シオは、じっと壁面を見ていた。

 殻の縁が、ゆっくりと動く。


 「シオ。お前は、ここで生まれたんだぞ」


 シオは答えない。

 でも、先ほどあわただしさを感じた感情がかなり落ち着いていた。


 「ここに近づいているときは結構落ち着きなかったんですけど、いまはだいぶ落ち着いていますね。なにか本能的なものを感じているんでしょうか」


 『里帰りやな、シオちゃん』

 『シオちゃん……』

 『なにか感じるものがあるんだろうな』

 『シオちゃん…なんか神々しく感じます』

 『ちゃんと帰ってこられてよかった』

 『シオの母ちゃんどれだ?』


 たまたま拾ったコメントを見て俺も少しだけ考える。


 「シオのお母さん、か」


 俺はもう一度この周辺の母岩に対して鑑定を走らせた。


 ――――――――――――――――――――

 潮魔石母岩(ダンジョンコア眷属)

 希少度:SSS

 採取可能部分の推定価値:算定不能

 母岩全体の推定価値:算定不能

 備考:沿岸ダンジョンの深層に稀に存在する潮魔石の生成源の一つ。

 この母岩から放出される魔力が周辺に潮魔石を生成し続けている。

 既にダンジョン生成由来生物を産み出しており、正式にダンジョンの眷属として認められている。

 優秀なダンジョンの遺伝子を継承した、純然たる高位生命体を産み出しに成功したこの母岩は、いずれダンジョンコアとして成長していくだろう。ただし、それには長い年月を必要とする。

 ――――――――――――――――――――


 「……えっ???」


 俺の異変に気付いた周囲が一斉に顔をこちらに向けた。


 「真壁さん? どうかしましたか??」


 「いや、今鑑定を再度してみたんですが、この母岩、正式にダンジョンの眷属として認められたみたいです」


 「………はぁぁぁぁ???」


 「ちょちょちょっと待って、真壁さん??」


 「それどころかいずれダンジョンコアになるみたいですね。それには長い年月がかかるみたいですけど」


 まさかの鑑定結果に周囲が静まった。

 そこで慌てて相馬が配信を切るようにスタッフへ指示を送り、配信画面には『しばらくお待ちください』の文言だけが表示されていた。


 周囲の慌てぶりにようやく俺も気付く。


 「あ………すいません。つい口走っちゃって…」


 「いま配信止めてますよね???」


 管理局職員が相馬を見ると、何回も頷いた。


 「今は止まってますけど、真壁さんの言葉はたぶん配信乗ってると思います…」


 管理局職員はうなだれる。

 明らかにやってしまった、そういう感じが見ただけでわかる位にうなだれている。


 「………真壁さん? いまのは??」


 血走った目で俺をみる管理局職員。

 

 「いや…その…なんかこの母岩、シオを産み出した功績? みたいなものでダンジョンコアの眷属として認められたみたいです…」


 俺の言葉に周囲は再度絶句する。


 「いやぁ…真壁さん? 俺そんなの聞いたことないんですけど」


 榊は困惑気味に周囲を見ながら声を出した。

 それに続き、横浜管理局職員が口を開いた。


 「……私もそのような事例は初めて聞きました。ダンジョン学会とかそういう専門家に上げないとなんとも…」


 「……真壁さん、まだ言ってないことあるんじゃないんですか?」


 管理局職員は鋭く指摘する。

 この人だんだん俺のこと理解してきたような気がする。


 「……ええ。シオのことも示されてます。純然なるダンジョンの遺伝子を継承した、高位生命体、と」


 「…高位、生命体??」


 管理局職員は横浜管理局職員の方に視線を送るも、首を横に振り、知らないアピールを繰り返していた。


 「ちょっと…わからないことが多すぎて…ですが真壁さんの鑑定がそう示した、これに大きな問題があります」


 周囲は同調するかのように頷いた。


 「いまや真壁さんの鑑定結果に対して疑問を呈する人はいないでしょう。それほどまでに鑑定スキルに特化した人材、なんですが、そんな鑑定の大家がこんな重要なことを配信で口走ってしまった、この後のことを考えないといけません」


 「そうですね。ダンジョンコア生成の条件を…いや一部なんでしょうけどいまここで解明してしまったわけですし」


 横浜管理局職員が不安そうに今後のことを気にしている。

 

 「えっと…ちなみにこの横浜みなとみらいダンジョンは開放したままでいいんですかね?」


 榊の言葉に横浜管理局職員が管理局職員と顔を見合わせた。


 「とりあえず、ですが内閣府特命チームに連絡をいれます。そしてここの区画ですが、一旦警備を固めましょうか。横浜管理局に連絡してすぐに人を派遣してください」


 「わかりました」


 横浜管理局職員がスマホを取り出し通話を始める。

 

 その時であった。

 シオが肩からぴょんと降り立ち、そして母岩へと近づいていった。


 「おい? シオ??」


 全員がシオの方へ注目する。

 

 シオの感情が俺の方にも流れ込んでくる。

 その感情は『責任』『使命』『継承』だった。

 ここまでくるとそれは感情というより、意思に近いものに感じる。


 「あっ! 母岩の光が…まるで命が脈動するかのように走ってます…」


 ドクン、ドクン、と。

 光が淡く明滅しつつも、力強さを感じるその脈動はこの空洞全面に広がっていった。


 そして、その光が天井にある一点に集まっていく。

 ちょうど、その真下にいるのはシオだった。


 光が天井の一点に対して、どんどんと集まり続けていく。


 「おいおいおい…何が始まるんだ?!」


 護衛は周囲に指示を出し、俺の周囲に寄ってくる。


 「真壁さん、離れてください」


 「いや、でもシオが…」


 俺の言葉を最後まで待たずに、強制的に距離を取らされた。

 それを見ていた人々全員が同じようにシオから離れる。


 そして光は一点に集まると、バスケットボールよりも大きい水の塊に変わっていった。

 それが重力に従って、落ちる。


 光の水珠、そう言ってもいい程にその水には光のエッセンスを芳醇に蓄えていた。

 落ちる最中に俺の鑑定が勝手に走る。


 ――――――――――――――――――――

 光聖の水珠こうせいのすいじゅ

 希少度:SSS

 状態:一時生成/安定

 分類:潮晶殻獣幼体による母岩環境反応

 備考:ダンジョンの眷属である潮魔石母岩周辺の魔力と、潮晶殻獣幼体の感応反応によって一時的に生成された水球。

 内部に微細な光と聖属性魔力を含む。攻撃性、汚染反応、呪詛反応はなし。

 ダンジョン眷属種として正式な力の継承を可能とする、超生命力を帯びている。

 長時間の単独維持は困難で、母岩環境から離れると徐々に通常の水へ戻る。

 採取・保管には専用容器が必要。

 ――――――――――――――――――――


 落ちてくる光聖の水珠をシオは器用に足で受け取り、それをご飯の時のように一気に飲み干した。

 すると、シオは殻全面から急激に光を激しく放った。

 あまりにも眩しくて、目を瞑ってしまう。


 だがその光もすぐに止み、辺りは先ほどと同じような明るさに落ち着いた。

 そして目をゆっくりと開け、シオを見ると普通にお座りしており、変わった様子が……あった。

 

 「シオの巻貝みたいな殻の色が…白になってる!!!」


 マイナーチェンジ、そう言えばいいのか。

 ゲームで敵として登場する魔物が色を変えて再登場する、アレである。


 だがシオが俺の感情を読み取ったのか、急にご機嫌が悪くなる。


 「え、いや、シオ? 別に変な意味を考えたわけじゃなくてな?」


 するとシオの胴体部分…スライム状の部分から明らかに手を模した触手が伸びてくると、急に手の付近に光の屑が集まってくる。

 そしてその光の屑が凝縮され、ぱっと見だが指揮者が振るう指揮棒のような形状を取った。


 『光聖の指揮棒』


 シオから飛んできたのは今まで以上にはっきりとした感情、いや意思、いやいや、言葉が飛んで来た。


 「え、えぇぇぇぇぇえ! シオ、おまえ喋れるようになったんか????」


 俺の言葉に周囲は「えっ?」という表情を見せた。


 「あ、あの? 真壁さん??? 俺らは何も聞こえないですけど」


 「そうだな。俺も聞こえないぞ?」


 榊と相良は顔を見合わせて頷いた。


 「あ、じゃあこれはいつもの感情が言葉に変わったってことか」


 シオは満足気に胸? を張り出し、そして光聖の指揮棒を振るった。

 振るうその軌跡に光の屑が舞い散り、そして俺らの周囲には魔法陣のようなものが浮かび上がった。


 「うそ?!」

 「な、なんだ??」

 「こ、これは??」


 光を明滅させ、そして消える魔法陣。

 その魔法陣の中に入っていた者全ての胸のあたりに、光の紋章みたいなものが浮かび上がって、そして消えた。


 「これは…加護、か?」


 護衛の一人が呟いた。


 「シオ、いまのって…」


 『せいなるかご いやなやつ とおざける』


 「聖なる加護??? 少しの間だけ邪なすべてを遠ざける効果があるってことか?」


 シオはちょこんと頷いた。


 「ま、まじで…」

 「加護が…それもテイムされた魔物からか??」

 

 護衛の全員は驚愕の目でシオを見る。

 俺は不安になり、慌ててシオに鑑定を通した。


 ――――――――――――――――――――

 潮晶殻獣(成長期)/個体名:シオ

 希少度:SSS

 格:超生命体

 属性:光聖

 パートナー:真壁遼

 状態:安定/母岩環境反応後

 危険度:無し

 現在価値:算定困難

 登録区分:真壁遼の随伴個体/別管理対象

 所有スキル:光聖の指揮棒 光聖の魔導書 光聖の宝珠(第1段階)

 備考:潮魔石母岩の周辺環境にのみ生息するとされる希少幼体。

 封印物・異常術式・埋蔵魔力への感応性が高い。

 初回確認時は母岩周辺の環境変化により衰弱していたが、現在は安定。

 母岩環境との再接触により、力の継承を行い光聖属性となる。

 生物としての格が一段階引き上げられ、万物に加護を与えることができるようになった。

 ――――――――――――――――――――


 「あ、どうもシオのランクが上がったみたいです」


 俺の言葉を聞いた全員が渋い顔を見せた。

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