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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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シオの里帰り②

いつもお読みいただきありがとうございます。

本日18時10分に新作を新たに公開しました。

『ダンジョン湖畔の休憩地 〜限定オリジンスキルで始めた小さな宿屋に、探索者たちが帰ってくる〜』


こちらはスローライフ系の作品となっておりまして、『会社をクビに…』とはちょっと系統が違った作品となっております。


毎日1回更新(多分18時10分)で投稿して参りますので、こちらもぜひ読んでみてください。

 横浜みなとみらいダンジョン入口の前には大きな広場が作られており、そこには探索者が今か、今かと待っていた。


 その広場を見下ろす位置に管理局の事務棟などが併設されており、スタッフの指示に従って管理局棟の屋上広場から移動する。

 関係者用の通路を抜け裏口から出ると、先ほどまで見下ろしていた地上広場があった。


 開放を待っている探索者たちが、広場を埋めるように集まっている。

 装備を背負った者や、クランのジャケットを着た者、撮影用の小型カメラを確認している者などがおり、横浜の正式オープンを待つ熱気がそこに凝縮されていた。


 「……いっぱいいますね」


 俺がそう漏らした瞬間だった。

 探索者たちの視線が、一斉に俺たちへ集まった。

 黒服に、管理局職員、ダンジョンTubeのスタッフなど配信にかかわるものが大勢いたせいか、さすがに嫌でも目立ってしまう。


 そして最初に誰かが、声を上げた。


 「真壁さんだ!」


 その一言がきっかけとなり、波のように周囲に伝播していく。


 「回収屋さん!」

 「シオちゃんいるぞ!」

 「真壁さん、ありがとう!」


 そこから先は歓声と叫び声が混じり合っていた。


 「大阪の件、ありがとう!」

 「ダン博で助けられた探索者、俺の知り合いなんです!」

 「探索者として感謝してます!」

 「日本の探索者の誇りです!」

 「シオちゃん、おかえり!」


 俺は自分に向けられた歓声に対して頭が真っ白になり、石像のように固まった。

 コメント欄も当然のように爆発している。


 『うわああああ』

 『現地の歓声すご』

 『探索者から直接ありがとうは効くね』

 『シオちゃんおかえりって言われてる』

 『真壁さん固まってるw』

 『榊さんフォローして』


 榊が横に来て少しだけ声を落とす。


 「真壁さん、まずは深呼吸しましょう」


 俺の首がまるでギギギ、と音を立てるように榊の方に向いた。


 「体から力抜いて、そしてリラックスしましょう」


 ゆっくりと息を吐きだし、そして深く息を吸った。


 「……はい、ありがとうございます。どうしていいかわかんなくて」


 「こういう時は手を振って応えてあげると嬉しいものです」


 榊の言葉に俺は頷き、ぎこちなく片手を上げた。

 その瞬間、また歓声が大きくなった。


 シオが肩の上で、ぴくりと身じろぎする。


 「……大丈夫だ。みんなシオと会えて嬉しいって」


 俺がシオに言うと、シオは殻の縁を少しだけ動かした。

 怖がっているというより、びっくりしている感じかな、これは。


 進行スタッフから進んでください、と促され、俺はこの集団の中を突っ切るのか、そう思ったところ、探索者たちが自然に左右へ分かれ始めた。


 俺たちの前に、広場の中央を抜ける道ができる。

 人の波が割れていき、それはまるで何かの映画みたいだった。


 「……これ、俺たち、通っていいんですか?」


 「もちろんですよ!! 行きましょう!!!」


 そう言うと榊が先頭に立ち、続いてダイブチャンネルのメンバーが続く。

 

 「今日の一番乗りは俺たち、いや真壁さんですよ! 胸を張っていきましょう!」


 「えっ? 一番乗り??」


 「そうです! まぁ色々と理由があるんですけど、様々な人たちからの要望、ってことですかね」 


 『一番乗り!?』

 『真壁さん、また扱いが国家行事になってる』

 『シオちゃんの里帰りなら一番乗りでええやろ』

 『探索者たちが譲ってくれたの熱いな』

 『これもう横浜ダンジョンの開門式じゃん』

 『本人だけ状況わかってないの草』


 通り抜けて行く際中に拍手が巻き起こり、それに伴いいろんな場所から声が届いてくる。

 初めてこの目で、この耳で、五感全てで体験する感謝の言葉に、思わず目頭が熱くなってしまう。


 「……みなさんありがとうございます」


 そして向かう先にはセレモニーの時にいた、あのマスコミの大群が待ち構えていた。


 『カメラ多すぎw』

 『これニュースで見る光景だ』

 『完全に公式イベントの主役じゃん』

 『シオちゃん、全国デビュー何回目だよ』

 『横浜市広報までいるの草』

 『報道陣の圧がすごい』

 『もう逃げ場ないなこれ』

 『真壁さん、顔が引きつってそう』


 「さぁ、真壁さん、先頭へ!」


 今日セレモニーに参加したはずなのに、何故か自分のセレモニーのようになっているこの状況に若干引き気味だったが、意を決してマスコミたちの横を通り抜ける。


 『真壁さん、こちらお願いします!』

 『こちらを見てください!』

 『横浜ダンジョン正式オープンへのコメントをお願いします!』

 『一番乗りのご感想を!』

 『大阪の件について一言だけ!』

 『シオちゃん、こっち向いて!』

 『真壁さん、笑顔でお願いします!』

 『ダンジョンTubeさん、カメラかぶっています!』


 動画だけではなく、カメラ媒体も多く来ていたせいでフラッシュの雨のようにたかれて、俺は生まれて初めてフラッシュを大量に浴び、シオは驚いて殻に籠る。


 「…ははは」


 多分俺は作り笑いしか出来なかったと思う。

 そんな通過儀礼をこなした俺は、ようやくダンジョン内へと入るのであった。



 ◇



 「いや、ほんとに…大変なことに…」


 「凄かったですね!! あんなにも人に囲まれたのは生まれて初めてでしたよ!!」


 なんでこいつは元気なんだと横目で見ると、心なしか肌艶が良くなっている気がした。


 「探索者の方たちにも悪いことしましたね。早く入りたかっただろうに」


 「どうも管理局のほうから、事情は事前に説明済みだったそうです。横浜市側と管理局から、警備と広報上の理由で真壁さんたちを先に入れると伝えたところ、皆さん快く了承してくれたそうで」


 榊の言葉に思わず驚いてしまう。


 「いや、俺も打ち合わせの時に聞いて、マジ? って思いましたよ。でもみんなの気持ちはわかりますよ、俺。」


 「みんなの気持ち?」


 「そうです! ダン博であんなにも舐めたことをしでかしたやつに、真壁さんたちは立ち向かったじゃないですか! いわば俺ら探索者たちの代表として国難に立ち向かった訳ですよ。それって俺ら探索者からしたら、よくやった! しかないですもん」


 「なるほど…そういう考え方もあるのか」


 「ですです! 日本の探索者がコケにされるところを、まさか鑑定士によって救われることになろうとは誰も思って無かったでしょうね。もちろんあの舐め腐った2人も」


 周囲はうんうん、と同意の意味をこめた頷きを見せた。


 「鑑定士って一応区分上では探索者扱いですけど、基本的にバックオフィス側ですもんね」


 「正直言うと、ダンジョンに潜ってる探索者連中は鑑定士のことを事務の人、っていう感覚の方が強いんだと思います。だけど今回でだいぶ認識変わったんじゃないですか? もちろん俺らは真壁さんの凄さに一番最初に気付いた探索者ですけどね!」


 榊はふんぞり返るようなポーズを見せる。


 『榊が急に古参アピールで草』

 『でも実際かなり初期から絡んでるんだよな』

 『ダイブチャンネルは真壁さん発掘勢だからな』

 『そもそも配信事故がきっかけだし』

 『鑑定士への認識変わったのはガチ』

 『事務の人扱いから一気に英雄枠へ』

 『榊さん、ちょっと誇らしげで草』


 「それにですけど、皆さんシオの里帰りなら一番乗りでいいだろう、と」


 榊の言葉にシオは殻をぷるぷるさせる。


 「…ありがとうございます。シオ、今度探索者の方に会ったら愛想よくするんだぞ」


 「シオちゃんのそのぷるぷるを間近で見れたら、めっちゃ羨ましがられるでしょうね!」



 そんなことを会話しつつ進んで行くと、前回とは違った個所に俺は気付く。


 足元を見ると、まだ傷の少ない誘導ラインが埋め込まれており、壁面には、横浜市と管理局の共同管理を示すプレートがあった。

 方角と誘導、そして管理局が新たに設置した休憩地の地図も設置されてある。


 一般的なダンジョンと違って、地理の特性がもろに出ているここ、横浜みなとみらいダンジョンは常に濃い潮の匂いが立ち込めている。

 岩壁の奥を細い水脈が絶えず走り、青白い鉱物が筋のように光っていた。


 上層は一般探索者向けに整備されているため、通路はかなり歩きやすい。

 床には滑り止めの加工がされ、分岐には案内板がある。

 採取禁止区域には透明な保護柵があり、魔力濃度が上がった時に点灯する誘導灯も設置されていた。


 「前に来た時より、ずいぶん整ってますね」


 俺がそう言うと、帯同している横浜側の担当者が頷いた。


 「正式オープンに向けて、上層はかなり整備しました。一般探索者の導線、退避場所、配信可能エリアも区切っています」


 「配信可能エリア、ですか?」


 「はい。ここは探索者に対して、全面的に開放はしていない種類のダンジョンとなっています。理由は複数あるんですが、九州にある有名な火山ダンジョンに似ていまして、政府が指定する重要な鉱物資源が多く採掘されるエリアがあるんです。そういう意味で立ち入り制限もそうですが、映していい場所と、そうでない場所を明確にしています」


 「そうなんですね。じゃあ今日、俺たちが向かう場所は?」


 「B5F手前の政府管理区画です。一般開放区画ではありませんが、今回のみ、管理局立ち会いのもとで入場許可が出ています」


 「誰でも入れる場所ではないんですね」


 「はい。潮魔石母岩周辺は現在も入場制限区域です」


 『やっぱ制限区域なのか』

 『そりゃそうだよな』

 『シオの生まれた場所、普通に重要地点』

 『見せてもらえるのありがたい』

 『横浜の管理局ありがとう』



 ◇



 しばらく進み一般開放区から管理区画までやって来た。


 「ここから先は、入場制限区域になります」


 このエリアに入る前に警告の看板が立っており、特定の操作をおこなって侵入しないとすぐに管理局に通報されるということだった。

 

 帯同している横浜管理局の職員が所定の操作を行い、エリア内への入域許可をもらった俺らはそのまま進むと、壁面に意味ありげな突起物を発見する。


 「これは潮魔石ですね。前に来た時、最初に見つけたいかにも横浜らしい素材です」


 榊さんが横からカメラに向けて言った。


 「回収屋さんが最初に横浜で見つけたやつですね?」


 「そうです。海水成分と魔力が長い時間反応してできる素材で、品川ではあまり見ないタイプです」


 俺は鑑定を通す。


 ――――――――――――――――――――

 潮魔石(生成中)

 希少度:B

 状態:安定生成中

 用途:魔法具の耐水・耐湿コーティング材

 備考:海水成分と魔力が長期間反応して生成される沿岸ダンジョン特有の素材。

 内部に水属性魔力が凝縮されており、横浜みなとみらいダンジョンではB4F以降の壁面に点在する。

 生成中だが、すでに十分な密度がある。

 ――――――――――――――――――――


 「前に見た時と同じですね。生成中ですけど、状態は安定しています。今はここは管理区画なので、もちろん採取は禁止です」


 『これこれ!この鑑定が見たかった!』

 『潮魔石ってBなんだな。結構レア度高め』

 『前との差がありすぎて脳内バグる』

 『横浜っぽい素材いいな』

 『これぞ回収屋チャンネルだよね』


 俺たちはさらに奥へ進むと一般探索者向けの導線から外れて、管理局職員が指示した脇の通路へ入った。


 「あれ、なんか清浄な感じするな」


 相良が言うと、榊も頷いた。


 「たしかに…いつものダンジョンとは違ってるな…」


 シオが急に殻から顔をだしてきょろきょろし始める。


 「ん? どうした?? シオ」


 シオから向かってくる感情が色々と混ざり合って上手く読み取ることが出来ない。

 すると横浜管理局職員がまもなくシオが発見された母岩に着くと告げた。

 

 「この辺りを説明すると、潮魔石母岩周辺はシオの保護地点に近い区画となっており、現在は研究・保護・安全管理のため、一般探索者の立ち入りはできません」


 そして、俺たちはシオを発見したあの空洞、潮魔石母岩周辺に到着した。

読んでいただきありがとうございます。

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