悪の皇子様VS朱の領地
アルティミス皇国は、『アルティミス・オーブ』で、世界一でもっと広い国土面積を有している。
50の領地に分かれ、アルティミス皇国の皇族に任命された、皇族や貴族達が統治している。
ヴァイオレット侯爵家も、ヴァイオレット領地を代々世襲し、辺境貴族として好き放題やっているという黒い噂は、皇都では有名な話だった。
そして、今回のヴァイオレット領地との《《戦争》》では、その悪い噂を存分に活用させてもらうことにする。
現在は、新領主となる予定のシエナ・ヴァイオレットと共に、ヴァイオレット領地の西部の街シザーズに来ている。
「シエナ様。これは……本当なのですか?私の息子がヴァイオレット家の当主代理様に殺されたと?」
「そうよ! お母様……ううん。《《お義母様》》は、楽しんで殺しってワタシに言っていたわっ!」
「つっ!…………あの中央の回し者は…………シエナ様ご姉妹が幼いことを理由に……好き放題していたか……それだけではなく、我が子を楽しんで殺したと?」
憎悪に満ちた顔をしているな。転移で、シエナと共にヴァイオレット領地にある街の支配者達にコンタクトを取っている。
「シザーズの街、イシュラルよ。真実を知ってどちらに付く?英雄ゲルディナと、南部の民は我の暫定支配を認めたぞ。それと、これはゲルティナが集めた。ヴァイオレット家の現当主が殺害した者達のリストだ」
こちら側に寝返ったゲルディナから渡された、ヴァイオレット家の裏の所業が書かれた紙を、怒り狂ったイシュラルへと渡す。
「拝見致します…………数年前に行方不明になったミシア姉様を……串刺し……の後に皮を剥いだ?……妻の父を焼き殺しただと?……おのれ、“余所者のグリムガン“が復讐してやる」
「それで?どちらを選ぶ。このまま我に殺されるか?このシエナをヴァイオレット家の新当主として、生き残るのか?」
「新当主様に忠誠を誓い、すぐに挙兵致し、グリムガンが住むレッドバロウへと向かいます。第二皇子ヨル様」
「あぁ、良い返事だ。それではな……行くぞ。シエナ」
「ま、待ちなさいよ!バカヨル!」
そうして、俺は次の目的地、ヴァイオレット領地東部へと向かった。
「…………シエナ様のお父上、ヴァイオレット家先代の名前も書かれている。あの余所者のグリムガンは、どれ程の人を殺しているのだ?」
◇◇◇
次にやって来たのは、ヴァイオレット領地 東部リスカァト。
ここもさっきと同じ、とにかく権力者達の感情を揺さぶって、ヴァイオレット家への反乱を仰いでいく。
「娘の四肢を馬車で引きずり回した?……おのれ!!あの、現当主ヴァイオレット!!殺す!……必ず復讐してやる!!」
「今回の騒動。アルティミスに……中央に介入されると隣接する領主達もうるさいのでな。二日で終わらせる予定だ」
「よ、予定よ。オスカルト」
……コイツ。この状況が分かっていないくせに、なんで偉そうに振る舞っているんだろう?
「……その後の統治はどうなりますか?まさか、貴方様が?領民達は?」
「生活は何も変えん。ただ、大掃除はする予定だ。そのリストに関与した者達に罪を償わせる」
「英雄ゲルティナが中心となってな」
「ゲルディナ様が?……畏まりました。すぐに兵を集め、現体制のヴァイオレット家を討ちます」
「良い返事だ。ではな、」
「良い返事よ!バイバイ!」
……コイツ(シエナ)の奴。なんで俺の真似をしているんだろうか?
まぁ、いい……次は、ヴァイオレット家の本邸がある都市に飛ぼう。
「〈テレポート〉」「〈テレポート〉よ!」
「…………消えてしまわれた。あれが、壺割り悪皇のヨル様か。まるで四才児には見えないお方だったな」
◇◇◇
今頃は………
北は、シルヴィアが暴れに暴れ、ヴァイオレット家現当主グリムガン・ヴァイオレットに加担している者達を、見つけて皆殺しにしているだろう。当分は皇都との連絡は難しくなるだろうな。
南は、仮死状態から復活させた人質達が挙兵し、グリムガンのこれまで犯した残忍な行為を公称して回っている。
西と東は、大切な家族を、グリムガンに無惨に殺され、怒り狂った権力者達が挙兵した。
この騒ぎは、明日の昼には、ヴァイオレット領地全域に波及することになるな。
そして、俺は、人質のシエナと共に、ヴァイオレット領地 都市グリムガン……ヴァイオレット家の本邸へとやって来た。
「……………うるさいぞ。シエナ・ヴァイオレット!」
「うるさくないわよ!それよりも、ワタシの質問に応えなさいよ!なんで、好きな場所に一瞬で飛べるのよ。それと、なんで、そんな下手なお芝居してるのよ?馬鹿なのアンタ!それとそれと……うぅぅ!!なんでもないわ!」
…………コイツ。さっきから、ずっと俺と行動しているせいか。緩んだな。
俺が、シエナに全然危害を加えないと確信した途端にうるさくなり始めた。
シエナの執事で、英雄ゲルディナと、殺したはずの兵団を甦らせたせいだろうか?
「ワタシにも、あの飛べる奴を使わせないよ!びゅーってやつ」
「アホの子には無理だ」
「誰がバカの子よ!張り倒すわよ!」
「…………言ってない!」
「なんですって!!ていうか、そっちの方がアホの子じゃない。我とか、従えとか。偉そうにっ!ぷーくすっ!」
コイツは!……うるさい。さっきから一緒に行動しているが、ずっとうるさい。
「…………君。お仕置きするぞ」
「ヨルはしないわよ。威嚇しかしない子ができるわけないわ。あんた、優しい子でしょ?」
「……何?」
「あ~!ヨルって本当に分かりやすいのね」
………シエナ・ヴァイオレット。喋っていると調子が狂わされるな。
その原因はあれか……この娘がグリムガンから受けたいた洗脳が、だんだん解け始めて本来の性格に戻ってきてるのか?
「シエナ様」
「何だ?コイツは……いきなり現れた?」
「セバスチャン!?」
気配が全くなかった……いや、そもそもコイツは人の気配をしていない。
「グリムガン様のお屋敷で、何をなされているのですか?レーヴァトス・ホール領地の侵攻はされないので?」
「しないわ。ワタシは、ヨルの人質になったんですもの」
「ヨル?……あぁ、隣に居る悪皇子……は?」
セバスチャンとか言う奴の首を容赦なく切り落とした。
なにせ、セバスチャンは、シエナを殺そうとしていたからだ。
「おい、悪皇子。俺様の首になにをする?殺すぞ」
「は?……セバスチャンが喋ってる?」
「…………〈フレイム・ヘル〉」
ヴァイオレット家の敷地内に、静かに火を放った。
「まったく、今のヴァイオレット家はどうなっているんだ。シエナ……なんで、貴族領主の屋敷中に化物達が住み着いている?」
俺が放った火魔法で屋敷中にある草木が赤く燃えている。そして、辺り一面には赤色の獣達が、俺達を凝視していた。
「チチチ…………あら?失敗したのね。セバス……若い子供の肉。早く食べたいわ」
「…………これじゃあ、紅食獣の巣窟しゃないか」




