閑話 女子会
「ねぇ、私春乃に会いに来たつもりだったんだけど」
「まぁまぁ、ほら、ね? ポテチあるし!」
「う、ううん……」
クーラーがほんの少し音を立てて揺れている部室にて、私と香蔵さんはいた。
香蔵さんはポテチで人が釣れると思ってるのかな……。
とはいえ、今現在女子会中なのでちょうどいいか。私は、冷世ちゃんからノートをもらい、共にソファに座る。
冷世ちゃんはポリポリとポテチに手を伸ばし、食べている。
「ほんじゃ、話題ね…………好きな人、いる?」
「図ったな、春乃!!?」
「死なば諸共!!」
香蔵さんと会話すると高確率でこうなるから私はせめて誰かを犠牲にして動くのだった。悲しいけどこれ、戦争なのよね。
「春乃ちゃんはまぁ、鬼円でしょ?」
「なんで決まってるんですか!!」
「いや、他にいるの?」
そう言われると……うごごご。何も言えない自分を恨む。
共倒れを図ろうとした冷世ちゃんは、獲物を見つけたと言わんばかりの眼をしている。
なお、その眼は私に向けられている。
「ふぅん、そういえば、水族館、どうだったの?」
「スイゾクカン? 水族館!!? 春ちゃん、もうそこまで……!?」
「違います!! そういうことじゃなくて!!」
あー、もう!
私は汗を垂らしつつ、キッ! と、冷世ちゃんを睨みつける。
「たまたま、ほんとにたまたま、当たったから、それで……」
「ふぅん、たまたま? 当たって、それで……鬼円と?」
「くぅぅぅ……!!」
私は顔を真っ赤にして唸る。嫌いだこの人!!
とはいえ、私自身も……あ、あるかもしれない。最近になって、意識し始めるようになってきてしまったのだ。
けれども、こんなに言われる筋合いはないはずだ。
私はぐぬぬ、といいながら、二人を見る。
「そういう二人は、な、なにかないの!?」
「私には狸ちゃんいるし」
「私は恋愛事なんてめんどくさくって」
こんの……!!
そうしていると、狸吉さんと、快弦ちゃんが部屋にやってくる。
「あれ、何の話?」
「噂をすれば」
「快弦ちゃんも巻き添えにぃ……」
「私帰ってもいいですか」
あぁ! 待って! 嘘だから!! 嘘だから、見捨てないで!!
二人は椅子に座ると私達の話を聞いて、香蔵さんは苦笑いを、快弦ちゃんは、はぁ、とため息を付いた。
二人は恋愛事とかあるのだろうか。
「私は香蔵がいるから」
「フフン!」
「まぁ、たまにかわいがってあげてるから」
「あれ、急に話のレーティングが上がったな」
私のツッコミをなんとも思ってないのか、冷世ちゃんはポリポリとポテチを食べている。ゴクンと飲み込んだ後、狸吉さんを見た。
「具体的には?」
「冷世ちゃぁぁん??」
「そりゃ、こうよ」
狸吉さんは空中をスパンと叩いた。
空気が凍りついて、私達は黙り込む。急に温度が上がってきたな。
しかし、冷世ちゃんも冷世ちゃんで何聞いてんだほんと。
「っていうか、快弦ちゃんはなにかないの?」
「ない、ですよ」
「嘘つけ」
明らかにタイムラグがあったぞ。
私達は顎に手を当てて……あっ、と声を上げた。
「金之助くんとはどう?」
「あんなの知らない!!!!!」
「圧が強いな……」
私は快弦ちゃんの圧に驚きつつ、何があったのか聞いてみる。
要約すると、金之助くんが、快弦ちゃんのシャーペンを壊してしまったらしい。
みんなであちゃー、といい、苦笑いする。
「あんなやつ、もう知らない」
「まぁまぁ、何か買ってきてくれるかもしれないよ」
香蔵さんが言うと、ムッ、としていた快弦ちゃんの顔がほんの少し緩んだ気がする。
とはいえ、そういうことは、鬼円とはないなぁ。
私が考えに老けていると、冷世ちゃんが顔を覗き込んでくる。
「いま、鬼円のことを思い浮かべたでしょ?」
「…………!!!?? はぁ!!? してないし!!!!」
私は大きな声を出して立ち上がる
拳を震わせる。だめだ、絶対今、私の顔赤いもん! くすくす笑ってるのバレてますからね狸吉さん!!!
「なんか、似てきたよね」
「うん、鬼円に似てきてるよ、春乃」
「似てませんから!! もう帰ります!」
私は言って、スパンと扉を開けて……鬼円とぶつかる。
後ろで、おお、と声が上がるのが聞こえる。かぁぁ、と体温が上昇するのがわかる。
「おい、春乃。もう帰んのか」
「うっさい!!!」
鬼円はビクッと震えて汗を垂らす。
明日、謝らないとなと思いつつ、私は足早に帰るのだった。
後日。
快弦ちゃんは、私達の前で新しいシャーペンを出していて、そのせいで香蔵さんと狸吉さんにいじられるのは、また別のお話。




