閑話 夏だ!海だ!
「砂浜だ〜〜いっ!!」
「開幕早々タイトルを認識するのやめません???」
メタ発言が飛び出すが気にしない気にしない。
私達は、夏休みのとある日、こんなふうに海に遊びに来ていたのだ。
黎矻先生は浜辺にレジャーシートを敷いており、鬼円と金之助君は準備体操をしていた。かく言う私達も、準備をしてきた。
この日のために、わざわざ……近所を走ったり、運動をするために女子だけで集まったりしたのだ。
香蔵さんは、胸が大きい。ダイナミックなスタイルに、大きいメロンを支えるためにはち切れそうな紐がある。腰つきが柔らかく、かなりスタイルがいいと言えるだろう。
長い髪の毛だ。金髪の、ツヤツヤしている髪の毛。これ以上ないほどの、言いようが出来ない美しさがそこにあった。
狸吉さんは、茶髪の髪の毛を少し短めのポニーテールにしてまとめていて、胸こそ小さいが、目を見張るのはその太ももだろう。
大きいとかじゃない。むしろ、『むっちり』というべきだろうか。圧倒的な威圧感を放っている。
恥ずかしいとかじゃなく、普通にパーカーに手を突っ込んでいるのもポイントが高いんじゃなかろうか。
快弦ちゃんはと言うと、可愛らしい水着を着ていた。黒色のクロスホルタービキニを見に来ており、片目隠れはそのままに、小ぶりな双丘、小さめのおしり、と小柄だからこその可愛さがある。
何よりも恥ずかしそうにしている顔や態度が興味をそそられる。
「みんなかわいいなぁ……」
「なぁにいってんの。そっちだってかわいいくせに」
私はそう言われて自分をもう一度見直す。
ピンク色と、桜が描かれているフレア・ビキニと、小っ恥ずかしそうに隠そうとしている、腰に巻いたタオル。サンダルを着ているし、ウルフカットはきれいに整えられている。
とはいえ、だろう。
「かわいいくせに〜このこの〜」
「ちょっ、タオル脱がせようとしないでください!?」
「ははは、良いではないか〜」
「悪代官みたいなことしてんじゃないよ」
狸吉さんが止めに入ってくれる。
私はゼイゼイ、と息を吐いて、地面に手をつく。ま、回されるところだった……。
ふと、鬼円達を見ると、海に飛び込んでいた。
「先輩! 今年こそは勝つっすよ!!」
「いいぜかかってこいよ」
何してんのあれ……。
二人はオーラを宿し、海に潜る。ふと、バシャンと大きな水しぶきが上がる。
なんてことだ、これは……
「う、海の中で暴れてるーーーっ!!?」
「ありゃりゃ、これじゃあ海にもぐれないね」
「あ、あんのばかども…」
狸吉さんが拳を震わせる。
いたるところで水しぶきが上がり、あり得ないレベルの轟音が鳴る。
これ、大丈夫なのかな……。
「私達は私達で遊ぼっか」
「そう、ですね……」
スタスタと歩いて、そおれ! とビーチバレーが始まる。
私達、春乃&狸吉さんチームと、香蔵さん&快弦ちゃんチームに分けて対決する。
「はい!」
私が思いっきり放つと……なんか、火花走りませんでした???
思っていると、ビュン! と狸吉さんが走り、明らかおかしい速度でボールを弾く。
私は口を結び、ボールを眼で追いかける。
「……か、香蔵さぁーーーん!!!?」
そこには、倒れる香蔵さんの姿が。お、思いっきり、が、顔面に……!
「香蔵、ご、ごめん!!」
「い、いいよ、全然……」
その次。
今度は、相手側チームからのサーブだった。快弦ちゃんがボールを飛ばし、私と香蔵さんが跳ね返す。
そのボールを、快弦ちゃんが殴った、殴った!!??
「か、快弦ちゃん!!? 殴っちゃだめだよ!!?」
「あっ、ご、ごめんなさい」
「全く……ねぇ、香蔵さ」
香蔵さんは、顔面にボールを当てられて取れていた。
「香蔵さぁーーーん!!!?」
またか!またなのか!!
ほんっとに不運ですね今日!?
「だ、大丈夫大丈夫……」
香蔵さんがボールを持つ。
こ、今度こそは大丈夫だよね。流石に自分の球で怪我しないよね……。
「はーいっ!!」
香蔵さんがボールを放つ。
狙いがそれて、木にぶつかって……ギャルギャルと回ったそれは回転力を落とさずに跳ね返り……。
「おぶ!!?」
「香蔵さぁぁーーーーーーんンン!!!???」
今日一の悲鳴が出てきた。
◇◆◇
香蔵さんを看病に走っていって二人に手を降ってからスタスタと歩く。
ふと前を見ると、遊び終わったか、髪の毛から水を滴らせている鬼円が歩いてきた。
「おお、いたいた。おい、飯買いに行こうぜ」
「焼きそばだよね」
あたり前だろ、と言いたげな鬼円の後ろを歩いていく。
私達が遊んでいる場所から離れたところについた。ここには人が少ないものの、屋台がやっている。
わざわざここまで買いに行くのはめんどくさいから、バッグをもってきていた。
「お、君君」
私が呼ばれて振り返り……げっ、ナンパか。
サングラスを掛けたチャラ男がこちらに話しかけてきた。
めんどくさそうにしていると、鬼円が気づいてくれた。
「わりぃ、連れなんで」
以前あったときのような、そんな会話がもう一度される。
この前とは違い二回目なのが功を奏して、ドキドキは少ししかしなかった。うん、少しだからセーフ。
二人で焼きそばを買い、食べる。
私は、焼きそばを食べ始めて……鬼円がそれを見て、食べようとした瞬間だった。
「あっ」
「あっ」
ベチャ、と焼きそばが落ちた。
手から滑ったのだろう。な、なんて残酷な……。
「仕方ねぇ、また買ってくるわ」
「あっ、ちょっ」
私は引き止める。
不思議そうな顔をしている鬼円に焼きそばを差し出す。
俗に言う、「あーん」の形で。
「ほ、ほら……」
鬼円はそれを見て、少しフリーズしてから、あーん、と口を開いた。
私の心臓はバクバクと高鳴っており、ゴクリと息を呑む。
パクっと食べた鬼円は、一言。
「美味ぇ」
「そ、それは! よ、よかった!」
えへへ、笑いながら私も食べて、鬼円に言われた。
「箸……持ってから、別に、よかったんじゃねぇか?」
…………。
「……あっ」




