第101話 これからの話
私達がアクゼリュスを倒した後、みんなで帰り道を歩いていた。
各々が黙ったまま歩いて……それぞれの帰路につく。
「それじゃみんな、また、明日」
「うん。また、明日ね」
「お疲れ様っした」
「…………」
私はふらっと歩き出す。
今日は、とても疲れた。このまま家に帰って、と思っていると、ふと電話がかかってきていることに気づく。
私は、それを見て小さく、あっ、と声を出す。
母さんからだった。
「もし、もし」
『もしもし! 元気……そうじゃないね。どうしたの?』
脳天気な声が聞こえる。
私をこの街に送りだした人の声だ。全く変わってない。
「ううん、なんでもないよ。ただ、つかれてるだけ」
『そう……まぁ、深くは聞かないわ』
母さんはそう言ってから、ただ、と続けた。
『なにか、無理そうだとか。ダメそうだなってときは連絡しなさいね。お母さん、いつでも相談乗るからさ』
「急にどうしたの。こんなときにさ……」
私は、家に帰り、玄関のまえで、ポロッと涙をこぼす。止まらない。あんなに、ひとしきり泣いたのに。
泣かないって、決めていたはずなのに……
「ううっ、かあ、かあさん……」
『急に!? どうしたのよ!!』
私は泣き出してしまった。
小さい頃のように、母親の前で。こんなふうに、泣きすがるように。
私は、えんえんと、泣き続けた。
疲れるまで、私が落ち着くまで、母さんは、大丈夫と、言ってくれたのだった。
◇◆◇
「おかえり、香蔵」
「……えーっと、なんでいるのかな? 私鍵かけたよね?」
「合鍵を渡してきたのはどっちよ」
狸吉はそう言うと、抱きしめてきた。何をして聞いたのかは、把握済みのようだった。
香蔵は少し困惑したような声を出してから……抱きしめた。
ぎゅうっと掴み、唇を噛み締めた。
「なんか、ごめんねぇ、言えなくて」
「吐き出していいんだよ? 全部さ」
狸吉がそう言うと、香蔵はぽろぽろと、涙をこぼした。
全部ぶちまけるように叫んだ。
「どうしようって、このまま斬ったら、もう戻れないんじゃないかって! わたし、自分が自分じゃないみたいで!! 怖くて、辛くて! どうしようもなくって」
ぽんぽんと撫でる狸吉は、香蔵を持って、歩く。
ソファに座った二人は、グスグスと泣いている香蔵をひたすら慰めていた。
「私、わたし……どうすればよかったのかな?」
ひたすらに悩んでいたのだ。
高校3年生、しかし、まだ子供である彼女らにとってそれは、大きな、悩みでもあった。
「大丈夫だよ、香蔵。こっち見て?」
「……?」
泣いたまま顔を上げた香蔵は……唇に柔らかいものが当たった衝撃で目を見開いた。
二人の呼吸が重なり、唇が離れた。
「た、たぬ……」
「私はね、香蔵がどんなふうになっても、大丈夫だよ」
狸吉はまた、唇を押し付けた。
二人の距離がほぼ、ゼロになって密着する。
「香蔵が壊れちゃっても、地獄に行こうが、奈落に行こうが、どこまでも一緒について行ってあげるから」
狸吉の言葉に、またボロボロと涙をこぼす香蔵。今日は、人一倍に泣いていた。
そんな香蔵をまた、人一倍慰める狸吉でもあった。
◇◆◇
「また、やられたか」
「あいつ、ふざけんなよ……クソクソクソ……バチカル様の邪魔ばかりしてたし、逆に消えてよかったかしら……」
バチカルの隣に立っている女が指を噛みながらいう。
その後、槍を持ってる細身の男が立ち上がる。
「じゃあ、殺すかい? 僕はどっちでもいいけど」
「いや、殺す。俺達の邪魔になるだろうからな」
四人が睨み合う。
各々が歩き始め、そこには誰もいなくなる。
各々の殺意が目覚めて、春乃達、超能力部に襲いかかろうとしていた。
季節は流れる。
それぞれの想いが風となり、大きな竜巻となる。
それは、全てを巻き込むような大きな、竜巻だった。
「はっくしゅん!」
「何お兄ちゃん、風邪?」
それは大きく弧を描いて、それぞれの仲間に届く。
「悪噛! あんだけ勉強しろって行ったじゃない!」
「うるせえよ……」
「うるさい…………ってなんだと!!」
そんな大きく動き出す、秋となる。
やっとこさ、ここまで来れた……。
次からちょっとした閑話です。




