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ようこそ!超能力部です!  作者: YY-10-0-1-2
3章 夏休み編
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第100話 たった一輪の華 その⑦


 香蔵さんは、静かに地面に降り立った。

 アクゼリュスの肉体がうねって再生しようとする。私たちはつばを飲み、それを見つめる。

 言葉すらも飲み込むほど、うねりを見せた……アクゼリュスですらない『それ』は大きくなっていき、鎌を体中から生やす。


 香蔵さんは、ふぅと息を吐いてから手を前にした。

 

「『月魂(ルナアルマ)日食の剣エクリプセ・エスパーダ』」


 月の光から現れた剣がくるくると回り、アクゼリュスの鎌を切り落としていく。『七夕戦争』のときとはまるで違う。

 あのときは、手加減してたんじゃないかってぐらい……


「さぁ、これは……鶴愛ちゃんの分」


 剣が一閃を薙ぎ払う。恐ろしい速度で薙ぎ払われたそれは、アクゼリュスをいとも容易く切り裂いた。

 明らかに、これは……


「傷つけられた人の分、被害者の家族の分も、警察の方々の分も!!」


 ザシュザシュと塵が飛び散り、コンテナまで巻き込む。

 それなのに、私達のところには来ない。塵も、コンテナの破片も……何も来ない。まるで、守られてるかのように。


 逆に言えばそれは……


「……それだけ、()()()()()()()ということ」

「あそこまでは、さすがの俺でも出来ねぇ」


 そこまで、して香蔵さんは……倒したいんだ。こいつを。

 しかし、この世にまだしがみつこうとしているのか、アクゼリュスはどれほど切られても、切られても、その体を保とうと、再生しようとしている。


 鎌が思いっきり振られるが、それすら香蔵さんには届かない。

 鎌が一瞬で消えると、アクゼリュスは後ずさる。それを逃さないように、香蔵さんは、アクゼリュスの足を切り落とした。

 その後、手を切り落として、完全に逃げられないようにする。


「あ…………あぁ、あ……………ああぁ、あ、あ!」


 もはや言葉にすらなっていなかった。

 逃げようとしても逃げれない。再生した瞬間、切り落とされる。転がされる。それだけでも、笑ってしまうほど滑稽なのに。


 ただ、私はそれを見て……


「……おかしいよね。鶴愛さんも、快弦ちゃんも殺したやつなのに。なんでか……」


 可哀想にも、見えてしまう。

 

 恨むべき相手のはず。殺したいほどに組んでいる相手のはず。それなのに、それなのに。

 どうしても、そんな言葉が頭によぎる。


「香蔵さん」


 私が香蔵さんの名前を呼ぶと、『月魂(ルナアルマ)日食の剣エクリプセ・エスパーダ』の動きが止まる。

 その剣は震えながら空中で止まって、消えた。


「もう、いいや……」

「いいのかよ」


 香蔵さんはそうつぶやき、こちらに振り返った。

 その眼には、涙がたまっていた。この人は確かに、涙を流していた。

 そして、鬼円の言葉に答えるように、口を開いた。


「こんなことしても、二人は、喜ばないよ」

「そう、ですね」


 アクゼリュスは、うねり、声を上げていく。

 いつの間にかこちらに歩いてきていた金之助くんはそれを見て、大きく息を吐いた。


「じゃあ、俺がやるっす」


 金之助君は(まさかり)を持っていた。けれども、腕はだらんと落とされており、ガガガッと地面についていた。

 私達はそれを見守ることしか、出来なかった。その眼は、どこか、もの悲しそうで。それでも、確かな敵意を持って。


「……じゃあな」


 そう呟いてから、アクゼリュスを叩き切った。

 ザラザラ、と塵があふれる。アクゼリュスの体が、塵になっていく。


 最後の断末魔すら、人の形を保てていなかった。


「……」


 そして、塵が消えた頃、私達の顔が上を向く。きれいな満月が、顔を出していた。

 そしてそれは……私達を照らし、香蔵さんと、金之助君を静かに見つめていた。なにもない、静かな風が、吹いた。


「……快弦さん。終わったっすよ」


 ただ、金之助君はそういって、それに手を伸ばした。


 こうして、この日。

 私達は、この戦いを終えたのであった。


 確かに、アイツのせいでいろんなものを失った。

 これから、鶴愛さんとも、快弦ちゃんとも、楽しい記憶を作ることが出来ない。

 それでも、私達は歩いていかなきゃいけない。

 どうしても、人に足という概念がある限り、歩き続けなければならないのだから。

 私達は、こんなところじゃ止まれないのだ。


 ここから先、どんなに辛いことがあっても。


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