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ポアロ・ベルフォード side



いつもの投稿時間より大分遅くなってしまい、申し訳ありません!



「この忙しい中呼び出したのですから、相応の事ですよね?」

「会っていきなりそれか。相変わらず儂には冷たいの、愚息よ」

「……用件は何なのですか?」


この御方は天界でもこの世界でも全く変わることなく自由気ままに私を呼び出す。

最近器の持つ役割に忙殺され、リフレシアの所にも行くこともままならない私は少々苛立っていた。


「わかった、わかった。睨むでない。お主を呼び出したのは、他でもないリフレシアの事だ」

「リフレシア?彼女がどうかしましたか?」

「やはりか。つい先程まで此処に来ておった」

「は?父上が呼び出したのですか?」

「いや、リフレシアから此処に来たいと連絡を貰った」


何故リフレシアが父上の所に?

それに最近会っていないとはいえ、連絡ならすぐ取れるようにしてあるはずだ。

「……何も聞いていません」

「ふむ。そうではないかと思ったから、お主に確認するべく呼んだのだ」

「彼女は此処に何をしに来たのですか?」

「闇を知りたい、封印の珠を自分が持つのは可能かと聞きに来た」


リフレシアの宿命に『闇』との交流は避ける事の出来ないものだが、魔力が独立したルチアを認識してまだ日が浅い、早すぎる。


「早すぎます。まだ時間はあるのに」

「……ルチアの成長も予定よりも早い。すでにはっきりと具現化しておった。まだ会話はリフレシアとしか出来ないようだがな」

「…………」


彼女が望んだのだろう。

ルチアはそういう存在だから。

リフレシアの願い、リフレシアでさえ理解していない心の奥の望みを知り、それを叶えようとするもの。


「あの娘は悲劇的な最期を繰り返した事で、自身を犠牲にするのが当然と思っているふしがある。故に休む間もなく自らに課題を与える。焦りもあるだろうがな」


その点については、転生してから今まで幾度となくこの身を持って知った。かなり肝を冷やした事もあり、憂慮している。

だけどリフレシアが焦っていると?

……最後に会ったのはルチアの事を聞いた時だ。

その時にはそんな様子に見えなかったけれど。


「焦り、ですか?」

「うむ。闇に対して何をどうすれば良いかわからない事が不安を駆り立てるのだろう。宿命について話せるものなら話してやりたいが、それは理に反する。まあ少しばかり早くなったが、あれの声を聞き、心を知ることですべき事が見えてくる。そうすればリフレシアの心にも変化がおこるはずだ」

「…………」


父上が言っていることは正しい。

『闇』を知る事がリフレシアの不安や焦りを拭うだろう。

この転生に伴う予定調和であり、その結論にたどり着かなければ先に進めない。

けれど……

リフレシアが抱える心の傷や、私の知らない彼女の悩みを自分以外の誰かが知っているという事が腹立たしい。


「なんだ、嫉妬したのか?リフレシアの心を知るものが自分以外にいるのが悔しいのか?」

「嫉妬?この気持ちが?」


これが?

私は今まで誰かに嫉妬した事がない。

何かに執着した事も。


「……では何なのだ?リフレシアに関してはクロードの方が大人だな。自分の事も周りもしっかり把握しておるぞ。お主もいい加減に自分の気持ちと向き合え」


父上が言っているのは男女においての嫉妬。

リフレシアを好ましく思っているのは事実だが、私が他者に嫉妬する程リフレシアに執着している?


だが今、私ではなく父上を頼った事が胸を焼くように腹立たしい。

彼女を知るのも、助けるのも自分以外であって欲しくない。

彼女の苦しみも悲しみも、受け止めるのは自分でありたい。


……降参だ。

まだ女性というにはいとけない彼女を慕い、焦がれている。


人の成長は早い。

ほころび始めた蕾は、あっという間に花開く。

その様を自分だけが独占し愛でたい。

他者にその役目を与えるなど許容出来ないだろう。


……何が彼女の望むままにか。

私はこれ程に彼女に恋い焦がれ、父上に嫉妬するくらい執着しているというのに。


「正論だとわかっていますが、父上に言われるのは嫌です」

「はっ、認めるか。まあ、遅すぎるがな。あれだけの娘だ、後何年もしない内に、引く手あまたになるだろう。うかうかしていると、すぐに奪われてしまうぞ。いやまだお主のものではないがな。さてもう一つ、愚息に教えておいてやろう」

「……何をですか?」


父上のこの満面の笑みは危険だ。

厄介事の予感しかしない。


「リフレシアはな、かの『神の愛し子』の系譜だ」

「っっ!」

「はははっ、流石のお主もそれは知らなかったか?そこまで驚いた顔を見たのはいつぶりかの?はははっ!」


『神の愛し子』

遥か昔、父上が愛した人間。

だが手を出す事なく、その人間の一生を見守った。

ただひたすらに全てを愛おしんだ。

とびきりの輝きを持っていたのでも、優れた容姿だったのでも、清く正しい性格だったのでもない。

清濁を併せ持ち、時には他者を攻撃することすらあった。

自分の大切なものを護る為には夜叉となる。

だが本人はさして秀でた能力など持たなかった故に、己の限界まで努力し護る力を得た。

その様を父上は娶ったり助けたりせず静かに見守った。

父上の愛を受けた人間に興味を抱いた他の神々も、彼女を見守った。

ーーそして堕ちた。

彼女を知った神は、もれなく彼女に堕ちたのだ。

健気さ、愛らしさ、弱さ強さも、彼女の何もかもが神々を魅了した。

人の世でも、神の世にもいない稀有な存在。


それが『神の愛し子』。


リフレシアがその系譜。

父上の肩入れがいつになく大きいとは思っていたが、それなら納得だ。


……いや、待て。

此処まで肩入れするならリフレシアは彼女にかなり近いのでは?


「察しが良くてなによりだ。お主の思った通り、リフレシアは彼女によく似ている。というより彼女の魂を持っておる。生まれ変わりだな」

「っ、有難くない情報をありがとうございます」

「はははっ!」


私やクロード、闇の中にいる神、父上。

リフレシアに関わった全ての神が彼女に肩入れし、愛するのも道理だったわけだ。


まさか?


「リフレシアが望むのであれば、儂も以前と同じではないな」

「…………」

「まあ、そんな事より今はリフレシアの元に行ってやるが良い。全く自覚しておらん。危ういことこの上ない」

「そうですね。ではお暇させて頂きます。先程の件に関しては日を改めてゆっくりと」


冗談混じりに言っているが、父上の『神の愛し子』への執着もまた激しいものだった。

とても嫌だが、私が父上の子だと実感する。


リフレシアが彼女の生まれ変わりなら、私も心してかからないといけない。

色々と策を講じたいところだが、まずはリフレシアの元に行くのが先決だ。


永く生きてきて、初めて恋情を抱いた相手がこうも難易度が高いとは……


にやにや笑う父上に冷気混じりの微笑みを向け、リフレシアの元へと向かった私だった。






次回で100話となりますが完結までもう少しかかりそうです。


物語が佳境に入り、一話を書くのにかなりの時間がかかる為、不定期投稿にさせて頂こうと思います。


次の投稿日は後書きにてお知らせ致します。


次回は9/16(水)に投稿予定です。


宜しくお願い致します。

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