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『闇』のペンダント



……とうとう、100話となりました。

完結はもう少し先になりそうです。


最後までお付き合い頂けたら幸いです。



ポアロ先生は次の日、約束通りにペンダントに加工した封印の珠を持って来てくれました。


トップの珠には繊細かつ優美な細工が施され、鎖も職人泣かせの極細のものが三連になった美しいものでした。


細工をされたペンダントは、封印の珠だという事を除けば、私の好みをこれでもかとおさえたもので、つい顔が緩んでしまいます。


「どうやら、気に入ってもらえたみたいだね」

「はい!とっても素敵です!ポアロ先生ありがとうございます」


満足げに微笑んだポアロ先生でしたが、すぐに顔をしかめます。


「ですが非公式とは言え、リフレシア嬢に初めて贈る装飾品が封印の珠とは……何とも言い難いものがあります」


この世界では基本、未婚の女性への贈り物は花や菓子、本などです。

装飾品やドレスなど、身に付ける物を贈る事が出来るのは家族や婚約者だけなのです。


求婚の際に花束と装飾品を贈り、承諾すれば受け取るという風習もありますが……。

まあ、私にはまだ縁のない話です。


「この珠、遠目だとオニキスみたいですね」


深淵の黒、夜の闇より深く濃いこの黒は、ポアロ先生の結界の艶やかさと相まって宝石の様にも見えます。


「ああ、言い忘れていました。それはオニキスという事にしておいて下さい。父上が領地で採れたものをリフレシア嬢に贈った、という事になっていますので。流石に私から、という訳にはいきませんからね」


はい。ポアロ先生から装飾品を貰ったとなると、とてもややこしい事になります。

……主に我が家の皆が。


「成る程。確かにトルティナ修道院の近くに、王家所有の鉱山が幾つかありましたが、その一つに瑪瑙などが採れると聞いた事があります」

「ええ、リフレシア嬢が常に身に付けるとなると、それらしい理由が必要です。学園で見られても、先王陛下より下賜されたものとなれば誰も文句を言えません。だから安心して身に付けて下さって大丈夫ですよ」


流石です。

先走っていた私は色々な事を見落としていました。

家族にも見られるでしょうし、そういった理由が必要です。


「ありがとうございます。……色々と突っ走って、後始末を全部お任せしてしまいました。ポアロ先生だってお忙しいのに」

「いいえ。リフレシア嬢の役に立てたのなら私はそれで良いのです。……頼ってもらえない事に比べたら、こんなことは些事ですから」


ほんの少し寂しそうな顔をしたポアロ先生。

こんなにも甘やかされて、頼りすぎなのを自重しようとしているのに、何を言っているのでしょうか。


「ポアロ先生とアリアに頼りすぎて、自分で何も出来なくなってしまいそうで困っている位なのですが?」

「……ですが私に一言の相談もなく、父上に封印の珠の事を聞きに行きました」

「それは私が暴走していたからですよね。ポアロ先生の方がわかっているはずなのに、どうしてそんな事を言うのですか?」

「………………」


もしかして、拗ねてる?


「リフレシア嬢何ですか、その顔は。拗ねてなどいません。そんな子供じみた事、私がすると?」


いや、確実に拗ねてますよね。

「ふふっ、はい、わかりました。ポアロ先生は拗ねてません」

「っ、リフレシア嬢!本当に拗ねてなどいません!」


ポアロ先生は神様だというだけでなく、この世界でも私よりも大人で、感情を揺らさないと思っていました。

他者の為に何らかの感情を抱く事はあっても、自身の事ではほとんど感情を出さなかったので。

拗ねてるポアロ先生は、いつもより近くに感じます。


「ポアロ先生でも拗ねたりするんですね。私と同じみたいで何だか嬉しいです」

「……同じみたいだとリフレシア嬢は嬉しいのですか?」

「はい。だってポアロ先生は私よりも大人で、何でも出来きる別世界の人だと思っていましたから。そうじゃない拗ねたりするポアロ先生は、凄く身近に感じます」

「身近に……ふっ。なら、前言撤回して認めます。拗ねていました」


へっ?

あんなにむきになって、否定してたのに。

しかも満面の笑顔です。

何故?


「リフレシア嬢、こちらに来て下さい。初めてだと自分でつけるのは難しいでしょう?」

「あ、お願いします。装飾品はほとんどつけないので助かります」


ポアロ先生が私の後ろに立ったので、つけやすいようにと髪を片方に寄せました。


「っっ、……」


あれ?

待てどもポアロ先生が動く気配がありません。

ペンダントをつけるのでは、と後ろを振り向くと口から下を片手で覆い、顔を背けているポアロ先生がいました。


「ポアロ先生?」

「……アリア、ペンダントをリフレシア嬢につけてあげて下さい」


すっと近付いたアリアがポアロ先生からペンダントを受け取ります。

その間もポアロ先生は手で口元を覆ったままで顔を背けています。


「……これしきの事で情けないですね。クロード殿下ならこれ幸いと嬉々としてしますよ。先が思いやられます」

「っ、簡単に想像できるくらい有り得ます。……面目ない限りです」


ぼそぼそと小さな声のアリアの言葉にしおしおと項垂れたポアロ先生。


二人の会話は小さすぎて聞こえませんが、何やらまたアリアにやり込められたようです。


「本当にアリアとポアロ先生は仲良しですね。妬けてしまいます。私を忘れないで下さいよ?」


私の言葉に二人揃って私を見ます。

そしてすぐ呆れた顔になる二人。


ほら、全く同じ反応。

むぅ。

二人の方が付き合いが長いので仕方ないのはわかっていますが、それでも何だか面白くない私。


「リフレシア様ももう少し大人にならなければいけませんね。サマーセット家にいると、そちらの方面の情緒は育ちにくいのは承知していますが」

「まあ、仕方ないとも思うけれどね。リフレシア嬢はサマーセット家全員の掌中の珠だから」


ん?二人は何の事を言っているのでしょうか?

またしても、二人だけでわかり合って……


「リフレシア様、お門違いの事でやきもちを焼くのは止めて下さいませ、不本意極まりないです」

「だって……」

「それより、つけ終わりました。ポアロ先生、まだお話に続きがあるのではないのですか?」


終わりとばかりに背中をぽんと叩かれ、ポアロ先生の方へと促されます。

今の会話で元に戻ったポアロ先生は、表情を引き締めました。


「これから封印の一部を解きます。解けばそれの声が、リフレシア嬢にだけ聞こえるようになります。厳密に言えば私とルチアにも聞こえますが、他の人には聞こえません。前にも言いましたが、それは聞くに耐えない言葉を吐きます。君が聞いた事のない非道な事も言うでしょう。……それを聞く覚悟は出来ているのですね?」


真剣な表情の中に、心配する様子を見せるポアロ先生に、私はしっかりと頷きます。


「はい。聞かなければ知る事は出来ません。それがどんな事でも、私は知りたいのです。……でも、心が折れそうな時には二人を頼っても良いですか?」

「「もちろん(です)」」

「ふふっ、なら大丈夫です。ポアロ先生、お願いします」



ふぅ。


前世から現世まで、永い付き合いの『闇』との初めての会話です。














次回の投稿は9/18(金)です。

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