勇気をくれる魔法の言葉
今回かなり長くなってしまいました。
読みづらいかもしれません。
ごめんなさい!
「父上のところに、一人で行ったそうですね」
おじさまの所から帰り自室で一息ついた時、清廉な気が部屋をつつみポアロ先生が現れました。
「……一人ではないです。アリアと一緒でした」
「何故?私に相談も無く行動したのですか?」
私の屁理屈を完全に無視し、矢継ぎ早に質問を重ねるポアロ先生。
綺麗なお顔は無表情で、常にある微笑みもありません。
……いつもと様子が違う?
「ポアロ先生?」
「リフレシア、君をこの世界に転生させたのは幸せになって欲しいと思ったからなんです。成長し、学び、喜び、笑い、そしていつかは恋をして、悩み、分かち合い、誰かと共に寄り添いながら生きる。そんな人として当たり前の幸せを掴んで欲しいと願ったんです。なのに君は、この世界に転生してから今まで『闇』に全ての時間を費やしています。そんな日々を送らせる為に転生させた訳じゃないのに」
ポアロ先生が誰よりも、私の幸せを願ってくれているのは知っています。
私の願いや望みに添う様に尽力してくれていることも。
きっとポアロ先生はルチアと同じで、私の心の奥に隠した怯えさえも見抜いています。
優しい優しいポアロ先生。
ポアロ先生に近付いた私は抱きつきます。
ポアロ先生は一瞬びくりと身体を震わせましたが、私を包みこむように抱き締め返してくれました。
「ポアロ先生、ありがとうございます。でもポアロ先生は勘違いしています。私は幸せになるために頑張っているんです。『闇』への恐怖が無いとは言いません。でも、怖くなったらポアロ先生やアリアがこうして抱き締めてくれるでしょう?だから、大丈夫なんです」
「ええ、もちろんです。どんな時でもリフレシアが望むなら必ずします。それでリフレシアの憂いが少しでも晴れるのなら。これは未来永劫破れる事の無い、神の名においての誓約です」
「えっ?そこまでしなくても……」
「いえ、この誓約は私が望んだものです。リフレシアはただ受け入れてくれれば良いのです。それに誓約はすでに成立しました」
神の御名においての誓約って。
本当にポアロ先生はどうしたのでしょうか。
「ポアロ先生、今日はどうかしたのですか?何かありました?」
「……自覚がないのですね。おかしいのはリフレシアです。何が君をそこまで駆り立てるのですか?私の封印はまだ解かれる事はありません。なのに、ルチアの事も闇の事も急激に進めすぎています」
「………………」
私がおかしい?
「よく考えてみて下さい。今までのリフレシアなら、一度しか会った事のない、しかも創造神たる父上に、私に一言の相談もなく会いに行きますか?」
いえ、有り得ません。
本当におかしいのは私みたいです。
「君は本当に聡明な子です。ですが聡明であるが故に、自身の感情を抑えてしまいがちです。正しいと思う事に不必要と判断したら切り捨てようとする。でも、それは見ない振りをしているだけで、気持ちは無くなったりしないのです。その気持ちを抱えてともにあらねば……君はいずれ壊れてしまいます」
自分が『闇』を怖がっているのは自覚しています。
それとは別のもの?
……わからないです。
でも『闇』の封印が解けてしまう前に、何とかしなければいけないでしょう?
私はまだ何もわからないんです。
『闇』をどうしたらいいのかも、私が何を頑張れば良いのかも。
「父上はリフレシアに約束しましたよね?『案ずることは起こらない、どうにかする』と。あの約束も神の誓約です。絶対にリフレシアの大切な人達が傷付けられることはありません。だからリフレシア、強くあり続けなくて良いのです。弱さを抱えていても、大丈夫なんです。自分を否定してはいけません」
何をポアロ先生は言ってるの?
何でそんなこと言うの?
弱かったら、立ち向かえないのに。
強くなくちゃ、失ってしまうのに。
……私は一人で頑張らなくちゃいけないのに。
どうして?
「リフレシア、嫌だと、つらいと思うことはいけない事ではないのです。その気持ちも君なんです」
「止めて下さい!違う、違います!強い人は弱さなんて持っていません。私は強くなりたいんです」
そうです、私は強くなりたい。
……ママみたいな強い人にならなくちゃ。
「……双葉さんは、自分が弱い人間だと自覚していました。そして、それを支えていたのが一さんでした。双葉さんは誰かを守ろうとする事で、強くなれると理解していたのです」
ママが?
一葉やパパには優しかったけれど、私達に敵意を向ける人には容赦がなくて、いつも私とパパを守ってくれたママが?
「一さんは、双葉さんの全てを理解した上で、双葉さんの願いを叶える為に自分の役割を果たしていたのです。一葉や一さんを守ると言う役割を担うことが、双葉さんを強くする。だから敢えて守る側でなく、守られる側にいたのです。それが双葉さんの望みだったから。一さんが敢えてそうしている事を双葉さんもわかっていました」
「パパが敢えて守られていた?それをママは知っていた?」
「ええ、そうです。ねえ、リフレシア。弱さはそんなにいけないものですか?君は弱さを持つ人は強くないと言いますか?自分以外の人にする評価を、何故自分にはしないのです?人は、いえ神でさえ、完璧なものなどいないというのに」
「……」
何度繰り返すのでしょう。
私はいつも追い込まれると、他者から離れ自分の殻に籠ってしまいます。
そうすることで周囲の人達に心配をかけるのをわかっているのに。
自分の思考や行動を冷静に見れなくなっている事に気付けませんでした。
「リフレシア、時間はまだあります。足りなければ、私が作ります。お願いだから、自分を削る様に生きないで下さい。私もアリアも、どんな時でも君の側にいます。リフレシア、私達は絶対に君を一人にしない、私達がしたくないのです」
一人になろうと思っていた訳ではないけれど、どこかで自分はこの世界で、サマーセット家で異質だと線引きしてはいました。
ポアロ先生やアリアも絶対的な庇護者で守護者だと思いながらも、また違う存在だと認識していました。
ならば私は、何者なのでしょう。
この世界の大切な人達とも、違う次元の甘えられる存在とも違う私。
『闇』をどうにかする以外に意味を持たないのではないか。
その疑問を誰に問うことも出来ず、次第に大きくなる不安と不満を胸の奥に押し込めて、見ない振りをした。
考えてはいけない。
考えたら、立ち止まってしまう。
泣いて抱えたものを口にしてしまう。
そうしたら、私が此処に存在する意味が無くなってしまう。
嫌、嫌です。
だから私は自分が存在する意味を持つ為に、『闇』のことに没頭する。
強く強くそれだけを考えていなければ、胸の中の弱さに負けてしまう。
……弱さに負けてしまったら、ひとりぼっちになってしまう。
そう思っていました。
でも。
「リフレシア、私やアリアの何を見てきたのですか?私達が君を一人きりにするなど、天と地が逆さになろうとも有り得ませんよ」
「……神様」
「はい」
「ずっと側にいてくれますか?」
「リフレシアが望むかぎり。いえ、違いますね。先に謝っておきます。嫌がったとしても、私は君の側から離れません」
「ふふ、私が神様を嫌がるなんてあり得ないです」
「そうであって欲しいものです。アリアもいます。リフレシア、君は一人じゃない。自分自身を認めてあげて下さい。泣いてもいい。喚いてもいい。……例え投げ出したとしても私達は君の側にいます。弱いところも含めて、そのままのリフレシアを私達は愛しています」
「っく、ふっ、うぅ〜」
優しく背中を撫でてくれるポアロ先生。
抱き締められていて見えないけれど、側にアリアの気配もします。
流す涙の分だけ、胸の奥の重い何かが減っていきます。
『愛してる』は、弱さをなくすものでなく、強さをくれる魔法の言葉。
一人ではないと、私に勇気をくれる言葉でした。
次回投稿は9/11(金)です。




