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優しい場所



リフレシアとアリアは相思相愛です。



「よし、難しい事は終いだ。リフレシア、遊ぼう」

「はい?」


素で答えてしまいました。

でも、許して下さい。だって今の今まで、壮大なスケールの話をしていたのに『遊ぼう』なのですから。


「約束の日を休日前の今日にしたのは、存分に遊ぶためだからな。もちろん、今日は泊まりだ。アルヴィスにも許可は得ている。晩餐にはまだ早いな、近くの湖まで散歩でもするか?夕焼けに染まる湖は、なかなかのものだ。一見の価値はあるぞ」

「へ?泊まり?父様の許可?全く聞いていないのですが」

「だろうな。王宮に出仕していたあやつを掴まえて、そなたを我が屋敷に滞在させると言ったのは今朝だ。大人になって冷静沈着な宰相の仮面を被る様になったあやつの、あそこまで慌てふためく様は初めてかもしれないな。くくっ、なかなか愉快だった」


それって、許可を取るというより断れない類いの通達なのでは。

流石の父様も先王陛下には、歯向かえなかいでしょうから。

でも……


「わかりました。ですが着替えなど用意しておりません。一度取りに帰っても宜しいでしょうか?」


泊まるのなら、着替えが必要ですよね。

あまり屋敷と学園以外は知らない私は、とても魅力的お誘いです。

父様の許可もあるのなら、先王陛下の思惑通りに目一杯楽しんでしまいましょう。


「リフレシア様、全て揃っております。ご心配には及びません」


今まで一言も話さなかったアリアが、口を開きます。

でも、いつの間に?


「学園でポアロ先生にお聞きして、準備致しました。屋敷や学園、此処にも転移陣がございますので、リフレシア様が授業を受けている間に運んでおきました」

「流石がアリアだわ!ありがとう、大好き!」

アリアに抱き着きながら、お礼を言います。

アリアは優しく抱き返して、頭を撫でてくれます。

いつも思うけれど、私には勿体無い位の完璧な仕事ぶりです。


「……仲が良いな?容姿は似ていないが、姉妹の様だ。そなたはアリアを余程好きと見える」


……しまった。素のまま振る舞ってしまいました。


目を閉じて幸せな気持ちでアリアにすり寄っていた私は姿勢を正し、恐る恐るおじさまを見ます。


「楽にして良い。リフレシア、そなたも儂の子だ。命ある全てのものは、儂の可愛い子供だ。それに此処にいる間は、本当のそなたでいれば良い。此処にいる者は、全てを知っている者ばかりだ。ほれ、肩の力を抜きなさい。……そなたは頑張りすぎだ。たまには息抜きもしなければな。わかったのなら、楽にして儂と遊ぼう。これに関して否は聞かないからな」


敵わない、そう思いました。

創造神様は何もかもご存知です。


抱えた過去の記憶や、いずれ起こるであろう未来に、私は常に囚われています。

だから、何時もどこか気を張ってしまう。

リフレシアの身体は、身体能力も高いので何とかなっていますが、精神的な疲れは身体と連結していて、時々身体が鉛の様に重たくなるのです。


「……ありがとうございます、おじさま。おじさまの言葉に甘えて、この滞在を楽しみたいと思います」

「それで良い。……ところで儂がそなたを撫でても大丈夫か?怖くはないか?」

「もちろんです!撫でられるのは大好きなので。それにおじさまが怖いなんて……。不敬になるかもと心配はしましたが、それだけです。私は極度の人見知りなのですが、ポアロ先生やクロード様と似ているせいか、全然大丈夫です」


先王陛下というだけでも畏れ多いのに、創造神様という理解の範疇を超えた天上人のおじさまですが、包み込むような温かさを持っていて、とても慕わしく思うのです。


晴れた日のお日様。

優しく木々を揺らす風。

永遠に寄せては返す海。


そんな私が大好きなものみたいで、傍に居ると安心出来ます。


「おじさまが良ければ、お好きなだけ撫でて下さい」

にっこり笑ってそう答えると、おじさまは眉を下げてしまいました。

はて?

答えを間違えました?


「……そなたは。ポアロよ、人とは皆こうなのか?儂は心配になってきたぞ」

「いいえ。リフレシア嬢は人の中でもかなり、いえ私が知る限りでは見た事は無い位だと思います」

「同感です。僕も初めてこの娘に会った時は驚きましたからね?天界でもいませんよ」


三人の会話には主語がなく、私の何についてなのかはわかりません。

でも珍しくアリアも頷いて、同感の意を表しています。

私だけわからないのは、仲間外れみたいで嫌です。

なので私は背伸びして、アリアの耳に手を当て囁きました。


「仲間外れは嫌よ。後で良いから教えてね?」

「っ、もちろんです、リフレシア様。ですが仲間外れではありませんよ?要約すれば、リフレシア様が可愛いすぎると、仰っておいでなだけです。仲間外れになど、する訳がございません」

きゅっと抱きしめて教えてくれたアリアに、満足した私。

可愛いかどうかはともかく、嫌がられていないのなら問題ありません。


「アリアには美味しいところを全部取られるね。まあ、リフレシアが幸せそうだから良いんだけど」

「思うところはありますが、アリアが誰よりもリフレシア嬢を大切にしてるのは間違いないですから」

「仲良きことは美しきかな、だな。さてリフレシア、そろそろ湖に行こう。夕焼け時に間に合わなくなるぞ」


扉へと歩きながら私の側を通る時、くしゃりと頭を撫でていったおじさま。

その後を微笑みながら歩くポアロ先生とクロード様。

優しく私を扉へと促すアリア。



此処にいる人達は、誰もが優しい。

神様や天使様だからかもしれませんが、出来るなら私もこの優しさを持つ人になりたい。


そう強く思いました。



次回の投稿は9/1(火)です。

暫くの間、隔日投稿になります。



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