闇と対をなすもの
暑いです、暑すぎます。
残暑お見舞い申し上げます。
「ここまで笑ったのはいつぶりか。リフレシア、そなたは本当に希有な娘だな」
何がおじさまをここまで笑わせたのか、全くわからないのですが、喜んで頂けて良かったです。
……私の顔で笑ったのでなければ。
「………………」
「叔父上?……知りませんよ、お爺様。叔父上はかなりご立腹のようです。先に言っておきますが、僕は手伝いませんからね」
「……少しもか?」
「僕だって、怒ってないわけではないので」
「薄情な息子達だな。まあ、良い。さてリフレシア。聞きたい事があって儂に会いに来たのだろう?話してみなさい」
はっ!
衝撃的な事が多過ぎて、肝心の本題をすっかり忘れていました。
「魔力について教えて頂ければと思い、伺ったのです。その……おじさまは魔力を研究なさっているのですか?」
この世界を創ったのは間違いなくこの御方でしょう。そんな御方が、何かを研究などするのでしょうか?
……全てはこの御方が創ったものなのに?
「そうだな、儂が創ったものを研究などしないな。ただ知っているだけだ。そなたを儂に導く為に、その形を取ったにすぎない。愚息達もこの間まで気付いていなかったが。そこまでわかった上で質問はあるか?時間は気にせずとも良い。ゆっくりと考えるといい」
私がおじさま、いえ創造神様に聞くべき事?
私の魔力が闇と同じ様に、独自の意志を持った事が此処に来た原因です。
でもそれは、おじさまに会う為の道標でした。
私の魔力。
少なくとも私の魔力は負の感情で出来ていませんが、闇と同じ様に進化しています。
でも、他の誰にもこんな事は起こっていません。
魔力量が近い、ポアロ先生やクロード様にも。
私だけ?
私に起こるべき事だった?
何の為に?
っっ!
私だけに起こる事なんて、過去にも現在にも一つしかありません。
私の魔力は……闇と対をなすもの。
最終的には、闇と同等の力になるのでしょう。
闇と相対する為に。
でも何故私なのでしょうか?
神様すら呑み込む程の力に、ただの人間である私を選んだのでしょうか。
……違う。
人間だから選ばれたのです。
闇と対するのが人間でなければいけない理由……
「ポアロが言っていた。そなたは悲しい程に聡いとな。その意味がよくわかる。しかしだからこそ、そなたを選んだ。いや、儂も選ばされたのかもしれん。儂の永い時の中でも、人の器で過ごした事は無かった。人として生きた今だからこそわかる。人は儂が産み出したが、儂の思惑など関係なく形を変えていく、善くも悪くもな。だが人は闇を造り出してしまった。神すら呑み込む程の力を持つ闇を。それは赦される域を超えている。だが儂は人を愛している。故にそなたを選んだのだ」
私は人の代表として選ばれた?
私の行動が、今後の世界を左右する?
あまりの事の重大さに、身体が震えだした。
いつの間にかポアロ先生に抱え込まれていたおかげで、何とか立っていられますが、先生を掴んだ手にも力が入りません。
怖い……
私の肩にかかっているものの重さが怖い。
出来る事なら逃げ出したい。
けれど逃げれば、どうなるのかわかりません。
かたかたと震えながら、恐怖に耐える私におじさまが言いました。
「待て待て。流石に幼気な娘一人に全てを負わせるつもりなど無い。そなたの行動如何で、はかるつもりもな。だが、人が造り出した闇は人がどうにかせねばならない。それが儂が人に与えた罰だ。それを担うのは儂が選んだそなただが、元来はそう難しい事ではなかったのだ。しかし、闇が思っていたより力と知識を持ってしまった。それに加え神が二神も呑み込まれた事によって、事態が複雑になってしまったのだ。それ故に儂はこの世界を創った。そなたに出来うる限りの加護を授け、守護する者も付けた。……まあ、若干やり過ぎたかもしれないが。後はそなた次第だ、リフレシア。思うがままにやってみなさい。……それと愚息ども、儂に冷気を飛ばすな。儂は年寄りなんだ、寒いのはかなわん!」
おじさまはどこまでも人を愛し慈しんでいるからこそ、私を選んだ。
……ポアロ先生やクロード様が私に味方する事もわかっていたのかもしれません。
だから人が犯した罪を赦す為の試練を私に託した。
闇。
そもそも闇って何なのでしょう。
人が持つありとあらゆる負の感情が、凝縮したものですが、私の魔力と同じなら人格の様なものがある?
もしそうなら、どんな人格なのでしょうか?
何を考え、思い、求めているのでしょう?
そして何故、私を狙うのでしょう?
……私は間違っていたのではないでしょうか?
今まで遭遇した時は、幼すぎてわからなかったけれど、違う方法があったのでは?
「なかなか良い所までたどり着いた様だが、そなたにはまだ難しいだろう。これに関しての答えはやれんが、一つだけヒントをやろう」
思考に集中していた私は、おじさまの声で我に返ります。
おじさまは微笑んでいました。
何もかも、全てを包み込む様な慈愛の微笑み。
「そなたの魔力を育ててみるが良い。そなたの魔力は赤子と同じ。育てる為に与えるのは『感情』だ。どんな種類でも構わない。魔力がどう育つのかは、そなた次第だ。そしてそなたの育てた魔力が答えに導くだろう。ポアロの封印はその時まで解かれる事は無い。……そなたの案じる事態は来ない、それは儂が約束しよう。例え不慮の事態が訪れたとしても、必ず儂が何とかするから、安心して魔力を育てれば良い」
創造神様は言葉にはしませんでしたが、きっと私の前世を憂いているのでしょう。
それに関しては、私自身が今でも気持ちの整理が出来ないので何とも言えないのですが、決して創造神様が望んだ事ではないのはわかりました。
それに最大の懸念は、創造神様によって解消されました。
神様の約束なら間違いないでしょう。
なら、後は答えを探すだけです。
魔力を育てる。
育った魔力が私を答えに導いてくれる。
私は不謹慎にもわくわくする心を止められませんでした。
次回の投稿は8/30(日)になります。




