不思議な魔力
ユリウス君が成長しました。
見た目爽やか青年の腹黒さん。
おじさまが一見の価値があると仰った通り、夕焼けに染まった湖は、まるで別世界のように美しかったです。
どうやらあのお屋敷は、トルティナ修道院に近いらしく、晩餐は北の特産品を惜しげもなく使っており、初めて口にするものばかりで、とても美味しいものでした。
ポアロ先生とクロード様から私のスイーツ好きも伝わっていて、特産品のチーズがたっぷりの濃厚なケーキが出され、私はいつになく食べ過ぎてしまいました。
お屋敷の料理人の皆様、ご馳走でした。
翌日はおじさまの貴重な蔵書を見せて頂いたり、庭園の王都では珍しい素晴らしく良い香りのハーブなどを堪能し、充実した休日を堪能したのです。
お土産にと、ハーブを使ったお茶や香り袋も持たされました。私がハーブをかなり気に入った事におじさまが気づき、用意してくれたのです。
帰る際には耳元で『いつでもおいで。一人になりたい時もあるだろう?』と囁き、転移の魔法陣の許可までくれました。
イケてるおじさまは、やることなすことがいちいち格好良い……
後十年早く産まれていたら、恋に堕ちていたか もしれません。
こうして、先王陛下なおじさまとの休日は幕を閉じたのです。
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魔力を育てる。
おじさまはそう言っていましたが、それはなかなか大変な事でした。
おじさまのくれたヒントですが、どんな条件で魔力が自ら動くのかすらわかりません。
魔力に『感情』を与える、というのも。
ですが、おじさまがあれ以上口にしなかったなら、私自身で考えろという事なのでしょう。
ですが如何せん魔力が発動しているのを、私が認識しないと始まりません。
う〜ん、お兄様ならどんな時に、魔力が発動しているのかを把握しているかも?
多分ですがお兄様は私よりも早く、私の魔力の事に気付いていたと思うのです。
因みにお兄様は私と入れ代わりで学園を卒業していて、今は爵位を継ぐべく領地の事を勉強しながら、学園の高等専門科に通っています。
もちろん三年間、SSSクラスで学年トップを維持したまま卒業しました。
学園を卒業すると学園内にある、仕官を目指す人達が行く高等専門科、騎士団で入団試験の為の訓練が出来る準騎士科、魔導庁で適性な分野の勉強をさせて貰える魔導師見習科に進む事が出来ます。
お兄様はいずれ公爵位と宰相を継ぐ為、とても忙しくしています。なので余り邪魔はしたくないのですが、今回はお手上げなのでお願いする事にしたのです。
「お兄様、リフレシアです。少しお聞きしたい事があるのですが」
扉をノックし、声をかけてすぐにお兄様が現れました。
「私の可愛いリフレシア、ご機嫌は如何かな?聞きたい事に、満足いく答えをあげられると良いのだけれど。とにかくお入り」
先月16歳の誕生日を迎え成人したお兄様。
身長は今父様と同じ位ですが、まだ伸びているらしく近い内に追い抜きそうです。
身体も騎士科と同じ訓練が必要なSSSクラスでしたので、細身ですがしっかりと筋肉があります。
顔は幼さが抜け、中性的だった面影が少し残っているのを除けば、安定の美青年へと進化しました。
薄い金色の髪は光が当たると銀にも見える美しい色合いで、少し癖のあるそれは全て後ろに撫で上げています。
サファイアの輝きを持つ優しげな瞳は垂れていて、見る者を蕩けさせてしまいます。
滑らかな白い肌に、少し薄めの唇。
すでに大人の色気を醸し出す美しさに、貴族女性から凄い数のアプローチを受けているそうです。
学園入学当初は私に、沢山のお兄様への取り次ぎをお願いされましたが、2、3日後にはピタリと止まりました。
……多分、いえ確実にお兄様が何かしたのだと思いますが。
たまに学園でもすれ違うのですが、遠巻きにお兄様を見ている女性は両手では足りません。
幼少の頃から美しかったその容姿は、成人してさらに磨きがかかり、見慣れている私でさえ時々呆けてしまいます。
私の周りは本当に美形だらけですが、私の知る限り神様家族を除けば一番美しい男性だと思います。
うちのシリスもかなり美しく育っていますが、シリスはまだ、男性というより少年に近いので。
お兄様に促されソファーに並んで座ります。
「早速ですが、お兄様。私の魔力は普通とは違うみたいなのですが、ご存知でしたか?」
「ああ、その事か。確かにリフレシアの魔力はまるで魔法のような現象を起こす。しかも、本人の意志とは関係無くね。だが、リフレシアの意に染まぬ事はしない。私からすれば、リフレシアの無意識の願望を叶えているように見えるよ」
……驚きました。
そこまで把握済みだったとは。
お兄様が此処まで断言するという事は、かなりの時間観察した結果なのでしょう。
一体何時気が付いたのでしょうか?
「ははっ。ほら、5年程前にかなり厳しい冬将軍が来ただろう?その時だよ。まあ、気付く切欠は父上だったけれどね」
「ああ、何となくですが覚えています。でも、そんなに厳しい寒さでしたか?」
「それだよ。あの冬将軍はここ2、30年で最も厳しかったのに、我が家は違った。リフレシアの言う通り、暖かかったんだ」
「?」
「くすっ、わからない?リフレシアの魔力が我が家を暖めていたんだよ」
「私の魔力がですか?」
「そう。しかも使用人の皆は随分前から気付いていて、夏は涼しい事も教えてくれた。リフレシア、知っているかい?我がサマーセット家に纏わる噂の一つに『最高のもてなしをする』というのがあるのを」
「ええ、聞いた事があります。でもそれは、庭園や料理、歓待の事だと思っていたのですが」
「まあ、普通ならそう考えるね。でも噂の出所は我が家を訪れた客だ。我が家に招かれる人間はかなり限られている。その招かれた客は『最高のもてなし』が何を指すのかは皆一様に口をつぐんでいるらしい。だから、スノーフロート伯爵夫妻に聞いてみたんだ。我が家の『最高のもてなし』とは何かって」
カテリナ様の養父母であるスノーフロート伯爵夫妻は、昔から我が家と懇意にしていて、家の往き来も頻繁でした。
それに伯爵夫人は、母様の取り巻きを纏める役なので、我が家の来訪者とも仲が良いのです。
「そうしたら伯爵夫人が教えてくれたよ。夏の暑さも、冬の寒さも無いなんて、これ以上無いもてなしだと。貴族は常に色々な仕来たりによって、着る服が決められている。暑さ、寒さを考慮しない装いをしなければならない事も多い。どんな時期に、どんな装いでもつらくなく快適に過ごせる我が家は、彼等客人達にとって最高なんだそうだ。そして、その『最高のもてなし』をしているのが、リフレシアの魔力なんだ」
私の魔力ちゃん(?)、随分頑張ってきたみたいです。
……?
えっ、待って下さい。
5年前にお兄様が聞いて、答えが返ってきたという事は……
「伯爵夫人がそう認識したのは……7年前からだそうだ」
私がリフレシアの身体に入ってからだと確定されました。
私がこの不思議な魔力を持つのは必然でした。
この魔力を育てる事で何かが変わる。
はっきりと歯車の回る音がしました。
次回投稿は9/3(木)になります。
暫く隔日投稿になります。




