ダンディーなおじさまは……
新しい登場人物です!
暑い時や寒い時、周りが適温になる。
周りの誰かが怪我をしたり、病気なのを知ると回復が早くなる。
萎れた草木が目に入ると元気になる。
嫌悪を感じる人達が近付けない等々……
ポアロ先生が気付いただけでもまだあるそうです。
因みにアリアは『それだけですか?』とポアロ先生に勝ち誇っていました。
……そこ、競い合う所なのでしょうか?
クロード様も思い当たる事はあったみたいですが、あり得ない、気のせいだと流していたそうです。
とにかく闇と私の魔力はほぼ同じ様な進化をしています。
なので魔力に詳しい研究者をポアロ先生に聞いたのです。
「知っています。知っているのですが……」
「そうだね、僕も知っているよ。叔父上と僕が一番知っていると思う」
「えっ?お二人のお知り合いなのですか?」
何故か二人とも苦虫を潰したように嫌そうな顔になります。
「是非、ご紹介頂きたいのですが……」
余りにも嫌そうな顔におののきつつもお願いすると、二人は顔を見合せ渋々頷いてくれました。
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面会の約束を取り付けたとの連絡をもらい、休日前の放課後に特別棟にやって来ました。
ポアロ先生とクロード様も同行するそうでここで待ち合わせする事になったのです。
「直接その人の居る部屋に転移するからね」
「えっ?部屋に魔法陣があるのですか?」
「あるんだよ。あの人は色々と規格外と言うか、出鱈目と言うか……。とにかく焦ったり驚いたりしなくていいからね」
「は、はい」
ポアロ先生の魔力が私達を包んだ途端、目の前の景色が変わりました。
そこは何処かの貴族のお屋敷らしく、派手さは無いけれど落ち着いた色で纏められている大きな客間でした。
置かれている家具はどっしりと重厚ですが、間違いなく一級品で、王宮の歴史ある美術品の様な物ばかりです。
ゆっくりと室内を見渡していくと私の視線が座り心地の良さそうなソファーにたどり着きます。
そのソファーに座るダンディーなおじさまが、お二人が言っていた魔力に詳しい方だと気付いた私は、はたと固まりました。
二人から、このおじさまの事を何も聞いていません。
相手の身分が上なら、此方から口を開く事は出来ないのです。
固まった私を見たポアロ先生が、くすりと笑い紹介してくれました。
「固くならないで良いよ。この人は私とクロード殿下の知り合いだから。普通に挨拶しても大丈夫」
「そうだよ。何なら名乗らなくても良いくらいだ」
やけに気安い二人の態度。
美術館ばりの家具の数々。
極めつけは二人と似通ったそのお顔。
「大変失礼を致しました、先王陛下。お初にお目にかかります。サマーセット公爵家が長女リフレシアと申します。以後お見知りおきを」
深くカーテシーをしながら、心の中で二人に文句を言います。
なんで前もって教えておいてくれなかったんですかっ!
ヘンリー・ヴェル・グラナード先王陛下。
現国王陛下とポアロ先生のお父様であり、クロード様のお爺様。
先代の国王陛下です。
先王陛下の時代は表立った戦争こそ無かったものの、水面下では利権などの奪い合いがあり、きな臭い時代だったと聞いています。
三大王国の一つであるアルカタイト王国がウェルガン王国やグラナード王国を狙っていたのです。
戦争を起こす気は無かったのでしょうが、執拗に難癖をつけては賠償を求める、といった事を繰り返していました。
勿論ウェルガン王国も我が国も相手にしなかったのですが、ある時、間者を潜ませ境界の領地を混乱に陥れたのです。
その混乱で死傷者が出た事に激怒した先王陛下は、それまでの穏和さを捨て、自ら先頭に立ち混乱をおさめると、たった一人でアルカタイト王国に乗り込んだのです。
肥沃な土地、豊富な資源、優秀な多くの魔導師を持つ我が国を狙っていたアルカタイト国王は、先王陛下を殺そうとしました。
確実に仕留める為に、先王陛下一人に対しておよそ300人もの騎士を送り込みました。
1対300……
勝てるはずの無い闘い。
早々に決着は着きました。
先王陛下の圧倒的勝利で。
先王陛下はグラナード王家歴代最強の魔導師だったのです。
結界は何も通さず、攻撃は広範囲に一気に放たれ、一瞬で300人もの騎士が膝をついたそうです。
手加減までしていて、一人の死者も出なかったのだとか。
事後処理も本来ならば多くの過失を犯したアルカタイト王国に無条件で色々要求出来たのに、求めたのは一つだけ。
グラナード王国に手を出さない事。
この要求をアルカタイト王家の血において、魔法契約をさせたのです。
この契約により、アルカタイト王家の血を引く全ての人間が未来永劫縛られました。
何処の国の貴族にも、遡れば王族の血が入っています。
薄くてもその血を引けば、契約に縛られる。
この契約により、アルカタイト王国はグラナード王国に一切の手出しが出来なくなったのでした。
そんな偉業を成し遂げた先王陛下は、現国王が婚姻すると同時に譲位し、それからの事はわからないままだったのです。
その先王陛下が目の前に居るのです。
とんだ失態をおかしてしまった私は、どう繕えば良いのかわからず困り果て、顔を上げる事すら出来ません。
その時聞こえた朗らかな笑い声。
「はははっ。流石はサマーセット家の娘だな。良い、顔を上げ楽にしなさい。さて、何処で気が付いた?」
顔を上げて見えた先王陛下は、艶のある黒い髪と、宝石の様な碧い瞳で、ポアロ先生とクロード様にとてもよく似た、渋いダンディーなおじさまでした。
イケメンは年をとってもイケメンだと証明されました。
100話で完結出来るのでしょうか……
出来なかったらごめんなさい!




