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ユリウス・サマーセット side



久々のサマーセット兄弟。



【お知らせ】


今までの分の改稿をする事にしました。

改稿と言っても話や内容を変えるのでは無く、行間を空けたり改行したりする程度です。

気付いた間違いや、可笑しな所は少し手を入れるかもしれませんが。

一気には出来ないので少しずつしようと思っています。


何時も読んで下りありがとうございます!


十六夜





ちりちりと肌を刺す様な日射しは夏を告げている。だが屋敷の屋内外で働く使用人達は、汗をかく事無くいつも通りだ。


『いついかなる時も、サマーセット家は最高のもてなしをするらしい』


巷で囁かれるサマーセット家の噂は数多くあるが、屋敷の訪問客から広がったこの噂は有名だ。しかし訪問客は誰一人詳細を語らないので、何がどんな風にとは明確にされないままなのだ。


何がどうなって『最高のもてなし』と称されたのかは不明だが、ただ我が家は真夏の暑さや、真冬の寒さを感じる事が無いだけである。



5年前に到来した冬将軍の最中、我が家だけが暖かい事を最初に気が付いたのは父上だった。


庭に積もる雪があるのに、敷地内では外で感じる様な寒さを感じない。勿論多くのの部屋の暖炉に惜しむ事無く薪がくべられていたが、吹きさらしの廊下や庭のガゼボにも雪が無い。しかも敷地内の屋外に出てもひんやりとはするが、身体の芯まで凍える様な寒さを感じない。だが一歩敷地を出れば痛い程の寒さが襲ってくる。ほぼ毎日王宮に出仕する父上が、その違いに気付くのは当然の事だった。


確かに言われてみればその通りで、屋敷の使用人に問うとこんな答えが返ってきた。


「リフレシアお嬢様が何かしておられるのだと思います」

「何故そう思うんだい?」

「お嬢様の魔力を感じますので」

「……成る程」


確かに注意して観察すると屋敷内の至るところにリフレシアの魔力を感じる。常日頃一緒に居るので見落としていた。話を聞いた使用人はもう一つ教えてくれた。


「夏もですよ。夏は適度に涼しいのです」


…………。

リフレシアに聞いてみるしかない。



「リフレシア一つ聞きたいんだが?」

「一つと言わず幾つでも、お兄様」

にっこり答える妹は今日も可愛い。

「今年は冬将軍が来て例年に無い寒さなんだが、我が家はとても暖かいと思うんだ。リフレシア、何かしてるの?」

「えっ?何もしてませんよ。うちの暖炉が素晴らしい出来だからじゃないのですか?」

「いや、暖炉の出来でどうこうなる寒さじゃ無いんだ」

「そうなのですか?でも、何時もと変わらないですよね?」

きょとんと首を傾げ不思議そうにするリフレシア。


うん、やっぱりうちの妹は最高に可愛い。

世界一可愛い。


「……兄上。姉様が可愛いのはわかりますが戻って来て下さい。そして溶けかけた氷みたいな顔をどうにかして下さい」

呆れを含んだシリスの声に本題を思い出す。


「リフレシア、寒いのは苦手?」

「う〜ん、どちらかというと暑い方が苦手です。でも、うちの皆が寒くなると辛そうだなぁとは思いますね」

「うむ……」

「兄上、先程から何なのですか?」

訝しげにシリスが聞いてくるけれど、生憎まだ考察中で答えられそうにない。何となくは見えているが検証に時間がいる。


「シリス、後で部屋に来てくれ」

「……わかりました」

我が弟も巻き込もう。こいつはリフレシアの前で可愛い子ぶっているが、かなり頭が切れる。それに魔法行使はまだまだだけど、魔力感知などは僕より優秀だ。


うん、リフレシアの為だ。

しっかり働いてもらおう。


……リフレシア関係の隠し事は後が怖いし。


シリスに説明し手伝わせ、二人分の検証の結果、リフレシアの魔力は感情のぶれや本人の意志とは関係無く、魔力自体が何らかの現象を起こしている事がわかった。


この結論があり得ない事というのは十二分にわかっている。


だけどリフレシアだから。


それだけで納得出来てしまう。

僕とシリスが検証したんだ。言い方は悪いけれど下手な研究者に負けないだけの事をしたと言い切れる。


この結論は間違っていないだろう。


ならば、対策を練らねばならない。


……うん、父上と母上にも協力して頂こう。

まだ成人前の僕達では出来る事が限られてしまうだろうから。


それに……

父上や母上も気付いているから。

僕以上にリフレシアを、彼女を失う事を恐れているから。


最愛の娘を二度も失うなんて許さないだろう。



……正確に言えば一度目は『失う』とは違うかもしれない。

だけど、あの人はきっと死ぬまで口にしない。

ならば家族として抱き締める事は叶わない。

だったら『娘を失った』が一番近い表現だ。

あの人が口にしないなら父上も母上も言葉にする事はないだろう。


それに……


それを言葉にすれば彼女は僕達の前から居なくなるだろう。

あの人と一緒に居なくなる。


確信に近いそれを両親も感じている。


彼女とあの人を失うなどあってはならない。

なら、墓まで持って行くだけだ。


だけど、人の世界の理を越えた力が介入しているのは疑いようがない。


それに気付いた時から僕の中の固定観念は綺麗さっぱり無くなった。


彼女を、リフレシアを愛し慈しみ護る事が僕達皆の幸せに繋がる。


僕の最愛である二人を護る為には、通用しない常識など必要無い。あらゆる方法を考えられる柔軟さが必要なのだから。



だから今回のリフレシアの魔力に関しても、周囲にわからないようにしなくてはいけない。


同じ現象を起こす魔導具を作ってしまえば誤魔化せるだろう。


リフレシアを護る為に僕はもっと強く賢くならなければ。

やる事は山積みだけど、何だかワクワクしてきた。



僕の可愛い妹。


彼女の、リフレシアの周りはいつだって光に溢れていて、僕や皆を明るく照らすんだ。




その後作られた魔導具は、敷地内の人間に適温な膜が覆うと言うものでした。

ただ毎日かなりの量の魔力が必要でサマーセット領以外の需要が少なかった為、量産はされませんでした。


……王宮と魔導庁からは依頼があったみたいですが。




次回はリフレシア視点に戻ります。

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