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クロード・ヴェル・グラナード side 1



クロード殿下幼少の頃のお話です。


長いので分けました。



物心ついた時には、僕は自身の異質さを理解していた。


周囲の大人達が交わす会話の内容も把握できてしまう頭脳。子供とは思えない魔力量や魔法操作。調べなくてもわかる属性の多さ。王家の血筋だけで納得出来るスペックではなかった。


極めつけは大部分が抜けているけれど前世の記憶の数々。


僕の前世は古ければ古いほど抜け落ちた部分が多い。だが多分、人間から神と呼ばれる存在だった。それが何かの切欠で生身の身体を持ち、転生を繰り返してきたみたいだ。転生する器は人間だけでなく動物だったりもするのだけど原因まではわからない。

ただ、器の命の最期の方の記憶は抜け落ちていないのに不明瞭だった。


何故今回は今までと異なるこの世界に転生したのか?


疑問を問い掛ける相手もおらず、この不可思議な人生をどう生きれば良いのかわからなかった。ただ、自分しか信じられない故に、身を守る術を磨く事だけは怠らなかった。両親の二人は聡明で愛情深い人柄だったのに、彼等さえ信じる事が出来なかったから。


その理由は心の奥深くで絶え間なく囁く声。


『人間など信じるに値せず。人は容易く裏切り欲に溺れる生き物。慈悲を与えても感謝もせず、その上に胡座をかいて更にと求めるだけ』


聞こえる声は自分の心の声なのか、他の声なのか……


そのせいで僕は他者と交わる事に嫌悪を覚え、極力交流を避けて過ごしてきた。


ある日、父たる国王に呼ばれ命じられた。


『魔力量と属性を秘匿せよ』


国王が言っている事は正論だ。記録が残る限りの過去を調べても最大で4属性、全属性持ちなど有り得ない。しかも魔力量はこの国、いや大陸で5本の指に入るだろう。知られれば大陸全土から狙われる。……僕は生きた最強の兵器なのだから。だからこそ、正妃の第一男子=次期国王の僕は秘匿する必要がある。

それは理解出来る。


だけど理解は出来ても納得は出来なかった。


僕は自身の力を隠して生きる事が苦痛だった。

バレない様に常に力をセーブし、出来る事を出来ない振りをする。嘘にまみれて、自分が汚れていく気がして我慢出来なかった。張り裂けそうになった不満を何処かにぶつけなければ、誰かを傷付けてしまいそうだった。


そんな時に叔父上は僕に会いに来た。


叔父上は父である国王の弟だが、僕が産まれて間もなく王位継承権を放棄した。継承権に纏わる争いを避ける為なのは明白で、更には臣籍降下し王族である事もやめてしまった。元々秀でていた魔法を磨き、あっという間に魔導庁の長にまで登り詰めた。この王国最高峰の学園にも携わり、後に続く若者達の育成に助力する。臣籍降下で賜った広大な公爵領もそつなく治め、領地は富み領民は皆、美貌の若き公爵を崇拝しているらしいと王宮に訪れる貴族達が噂していた。

父とは歳が離れていて大層叔父上を可愛がっており、理由を付けては王宮に呼ぶ程だった。だけど僕はそんな叔父上を毛嫌いし、公の場でしか会おうとしなかった。叔父上も僕の気持ちを察してか、無理に近付こうとはしなかった。


そんな完璧な人間なんて胡散臭くてしょうがなかった。



そうした特に付き合いも無い僕に、何故叔父上は会いに来たのだろう?

考えても答えが出るはずも無く、疑問だらけのままに叔父上と対面した。


従僕に開けられた扉から現れたすらりとした金髪碧眼の美丈夫は、一瞬にして部屋の淀みを霧散させ、清廉な空気で満たしてゆく。その麗しい顔に浮かぶ微笑みは慈愛に満ちていて、僕の猜疑心を簡単に粉砕する。


……それに加えて感じた懐かしさは、彼と僕が血縁である事を証明していた。


間違いない、彼と僕は確固とした繋がりがある。


驚きのまま、彼から目を離せないでいると頭の中に直接声が聞こえてくる。

『殿下、人払いをお願いします』


彼の言葉通り人払いし、二人っきりになると様々な付与がなされた結界が一瞬で部屋を覆う。


「これで、ゆっくりと話せますよ。誰にも何も見えませんし、聞こえません。……もっと早くに訪れるべきでした。既に色々と思い出していたのですね。さぞかし苦労されたでしょう」


そっと近付いた彼は僕の目の前で膝をつき、僕の頬を優しく撫でる。その行為で僕は自分が泣いていたんだと理解する。だけどそんな事は些末な事で、僕にとって大事な事は他にあった。


「……っっ、兄さんっ!」


心のままに彼に抱き付く。僕の身体は小さくて兄の胸にすっぽりと収まってしまう。柔らかく抱き返しながらも彼は言葉を続けていく。


「ごめんよ、遅くなって。でも今はまず君の心の奥に巣食う魔を剥がさなければね?魔が本来の君を歪めているんだ。これから時間は沢山あるから、詳しい事は少しずつ教えてあげるよ」


懐かしい彼の神気が僕を包む。彼の優しさと慈愛が僕を満たし、心の中を照らしてゆく。つい先程まで必死に制していた黒い思考は跡形もなく消え去って、代わりに見えた景色は希望に溢れた光輝く世界だった。








ポアロ様は言動は冷たいですが、身内に甘いタイプです。

周りもそれをわかっているので、構いたくなるのでしょう。


……ポアロ様も愛されキャラ?

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